[視点]

2023年4月号 342号

(2023/03/09)

戦略は買収に従う

松本 茂(京都大学経営管理大学院 特命教授 城西国際大学大学院 教授)
  • A,B,EXコース
 企業経営者が長期的な戦略を描いて買収を実行し、買収後には組織の統合を円滑に行う―このような従来の買収と経営のアプローチに変化が生じている。本稿では、買収モデルを比較しつつ、買収と戦略の関係について新たな視点を提示したい。(図1. M&Aの戦略マトリックス参照)

成熟市場占有と新市場形成の買収モデル

 これまで日本企業のM&Aは、成熟市場の占有を目的とする買収が主流であった。銀行や保険、百貨店、石油、鉄鋼、そして製薬などの業界で繰り返されてきた合従連衡の営みで、最近では、この動きが大学にまで及んでいる。同業者の買収による水平結合は、市場占有率を拡大し業界での影響力を高めると同時に、組織の統合によって重複を解消して、利益率の改善を図ることが目的である。また、


■筆者プロフィール■

松本氏松本 茂(まつもと・しげる) 
京都大学経営管理大学院特命教授 城西国際大学大学院教授 博士(経営学)
神戸大学経営学研究科博士課程修了。PwCディレクター、HSBC投資銀行本部長、同志社大学大学院准教授を経て現職。これまで20年間、M&Aアドバイザーとして米国、フランス、中国など20カ国50の企業の買収案件に助言。著書『海外M&A新結合の経営戦略』東洋経済新報社(2021)で第16回M&AフォーラムRECOF奨励賞、『海外企業買収 失敗の本質 戦略的アプローチ』東洋経済新報社(2014)で第9回M&AフォーラムRECOF正賞を受賞。2020年、京都大学経営管理大学院より優秀教育賞を受賞。

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