[寄稿]

2022年10月号 336号

(2022/08/24)

事業再生の最新実務~簡易再生手続の利用事例及び中小版ガイドラインの適用開始を踏まえ~

石田 渉(森・濱田松本法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士)
  • A,B,EXコース
※本記事は、M&A専門誌マール 2022年10月号 通巻336号(2022/9/15発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。
【サマリー】

1. はじめに(本稿の目的)
日本において事業再生ADRから簡易再生手続に移行した初めての事例や負債総額数億~数十億の再生案件(私的整理案件)をより一層柔軟かつ迅速に処理することが可能となった中小版ガイドライン手続の適用開始等、事業再生に関わる動きが活発化している。
本稿では、再生案件におけるM&Aポイントも交えながら、近時の上記事例・動向を踏まえ事業再生の最新実務を解説する。

2. 事業再建手法としての私的整理手続と法的整理手続
(1) 近時の傾向
今日の実務では、事業再建策の一次手法として私的整理手続が定着。
(2) 私的整理の概要
全ての対象債権者(金融機関)の合意の下で債務(金融機関からの借入)の削減を行う。
原則非公開(上場企業は開示が必要)ゆえ、事業価値や信用力の毀損を最小化できる点、債務整理の対象債権者の選択が可能である点、商取引債権者が対象外である点などがメリット。
2022年4月15日適用開始の中小企業版ガイドライン手続の活用により、中小企業に係る私的整理手続をより柔軟かつ迅速に進めることが可能となった。
(3) 法的整理の概要
多数決原理による債務の削減が可能となる。対象債権者は、私的整理(原則、金融債権者に限定)とは異なり、債権放棄等に反対した債権者や一般商取引債権者を含む全債権者となる。
申立の事実が必ず公になってしまうため事業価値毀損のリスクが大きく、事前のスポンサー探索・確保等による信用補完がポイント。

3. 簡易再生手続を利用した再生事例
簡易再生手続とは、届出再生債権者の総債権額の5分の3以上の額を有する届出債権者が再生計画案に同意し、かつ、再生債権の調査・ 確定手続を経ないことに同意していることを申立要件とする民事再生手続の特則であり、手続の一部簡略化(再生債権の調査・確定手続の省略)が可能。

4. さいごに


1. はじめに

 新型コロナウイルス流行拡大から2年以上が経つ中、ウクライナ情勢や円安など新たな外的要因により、多くの企業が業績・資金繰りの悪化に苦しんでいる。

 このような状況下において、財務の抜本的改善を目指す私的整理手続を検討する企業が増加する事態も想定される。事業再生の実務においては、2022年に入ってから、事業再生ADR手続から簡易再生手続に移行した日本初の事例(2022年8月9日に再生計画認可決定が確定したマレリホールディングス(以下「マレリ社」)の事例)や中小企業にかかる私的整理手続の迅速・柔軟化を目的とする中小企業版ガイドライン手続の開始(2022年4月15日適用開始)など、コロナ禍等で企業が直面する現状を踏まえた新たな施策・動向が出てきている。

 本稿では、上記事例・動向を踏まえ、M&Aに係るポイントも絡めながら最新の事業再生実務を解説する。

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