[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2019年1月号 291号

(2018/12/17)

【Aguグループ】国内最大手の美容室チェーンがCLSAキャピタルパートナーズと組んで業界変革に挑む

  • A,B,EXコース
「Agu Hair Salon」のブランド名で全国展開

左から市瀬 一浩(Aguグループ 代表取締役社長)、侍留 啓介(CLSA キャピタルパートナーズジャパン シニアバイスプレジデント)

左から市瀬 一浩(Aguグループ 代表取締役社長)、侍留 啓介(CLSA キャピタルパートナーズジャパン シニアバイスプレジデント)

 2018年3月、CLSAキャピタルパートナーズ(以下CLSA)が運営するファンドSunrise Capital(以下、サンライズ・キャピタル)が、美容室チェーン「Agu(アグ)グループ」を運営する「ロイネス」および「B-first」を約100億円で買収した。

 サンライズ・キャピタルは特別目的会社を通じて、2社の株式を取得した。Aguグループの創業者である市瀬一浩氏も、引き続き株式の一部を保有して、Aguグループの代表取締役として経営にあたる。CLSAは、3人の取締役をAguグループに派遣して、経営支援する。

 CLSAキャピタルパートナーズは、アジア有数の総合金融機関のCLSA傘下の資産運用部門。95年の設立以来、投資テーマ別に特化型ファンドを組成し、プライベートエクイティ、投資銀行、経営コンサルティングなど各種分野・業界での専門知識を有するプロフェッショナルが、地域に根ざした豊富な経験とともに、多くのアジア企業の支援に従事している。

 サンライズ・キャピタルは、CLSAキャピタルパートナーズにおける日本の中堅・中小企業への投資に特化したプライベートエクイティ(PE)ファンド。06年に設立され、CLSAのグローバルネットワーク(15カ国、22支店)を活用した海外展開支援に加え、株式上場支援も強みとしている。設立以来、累計約1000億円を調達し、LCode、若年層向け店舗ビジネスであるビーシー・イングスの学習会など、競争力に優れ成長潜在性を秘めた日本の中堅・中小企業16社への投資を実施した実績を持っている。

 Aguグループは、「Agu Hair Salon」のブランド名で全国展開しており、直営店のほかフランチャイズ事業を積極的に進めており、18年11月現在で約330店舗を展開している。美容師は、一部の社員を除き業務委託の形態となっており、Aguグループ全体で1500名程度の美容師をかかえている。一般的に美容師の働き方は大きく分けて2通りある。一つは、社員として所属して、美容サロン運営企業の経営している美容室に配属される働き方であり、もう一つは個人事業主として業務委託契約を美容室と結んで仕事を引き受けるという2種類ある。一般的に人材不足といわれる美容業界であるが、スタイリストは通常の雇用と業務委託を選択できる時代になり、働き方の自由度と収入の高さから業務委託を選ぶスタイリストが増えているといわれる。

 こうしたなかで、独自のフランチャイズ(FC)の仕組みづくりによって、11年の設立という、後発のチェーン店でありながら、急速に店舗を拡大しているのがAguグループだ。実際、17年、18年は年間でそれぞれ100店舗程度を開店しており、北海道から沖縄まで全国で展開している。Aguグループがなぜ驚異的な出店スピードを達成できているのか、なぜ今回PEファンドと組む道を選んだのか。今後の成長戦略を含めて、Aguグループの市瀬一浩代表取締役社長とCLSA キャピタルパートナーズジャパンの侍留(しとみ)啓介シニアバイスプレジデントに聞いた。

<インタビュー>
IPOで信用力と人材確保を進め、10年後には3000店舗も視野に

 市瀬 一浩(Aguグループ 代表取締役社長)
 侍留 啓介(CLSA キャピタルパートナーズジャパン シニアバイスプレジデント)

第4世代に入った美容室業界

―― 美容チェーンのマーケットは縮小傾向になるといわれます。

侍留 「おっしゃるように、理容と美容を合わせた市場の規模は、人口減と消費者の支出減少傾向もあって、横ばいないしは微減という状況です。しかしながら、美容室は個人店舗が多く、多店舗展開する上位40社を合わせても、全体の10%ぐらいのシェアしかないといわれている。しかし最近はこうした美容室の中でも勝ち組と負け組がはっきりとしつつあり、業界再編の余地があるものと認識しております。

 また美容業界は、古い業界だと思われているかもしれませんが、サービスや雇用の観点で絶えずイノベーションが起こっています。あくまで私の見立てですが、これまでの業界の流れを見ますと、現在は「美容室4.0」とでもいうべき第4世代に差し掛かろうとしているタイミングだと捉えております(下図)。

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