[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2019年12月号 302号

(2019/11/15)

インテグラルの山本礼二郎代表が語る「サンデン・リテールシステムの成長戦略」

  • A,B,EXコース
山本 礼二郎(やまもと・れいじろう)

山本 礼二郎(やまもと・れいじろう)

一橋大学経済学部卒 MBA(ウォートン)及び、MA(ローダー・インスティテュート)取得。
1984年三井銀行(現三井住友銀行)に入行。90年A.T.カーニー(シカゴ)勤務。91年ロンドンにてストラクチャード・ファイナンスに従事。98年帰国、さくら銀行企業情報部(現 SMBCグループ)において、グループヘッドとしてクロスボーダーのM&Aを担当。2000年ユニゾン・キャピタルに参加。04年4月GCA株式会社取締役パートナー就任。05年10月株式会社メザニン代表取締役就任。07年9月インテグラル代表取締役パートナーに就任。
<著書>「バイアウト」(共著、日本経済新聞出版社)

選択と集中:自動車機器事業の強化のため子会社譲渡代金を活用

 サンデンホールディングス(以下サンデンHD)は、インテグラルが運用するPEファンドが受け皿として設立したSDRSホールディングスに10月1日付で、店舗用冷蔵・冷凍ショーケース、自動販売機などを手がける流通システム事業を手掛ける子会社のサンデン・リテールシステム(以下サンデンRS)の全株・債権債務を約500億円で譲渡した。

 サンデンHDは、1943年通信機用部品やマイカコンデンサーの製造を行う三共電器として創業。53年には自転車用発電ランプの輸出を開始した。その後、家電や業務用冷凍機市場に参入。69年米国ミッチェル社と技術提携してコンプレッサーの生産を開始し、カーエアコン市場に参入して業績を伸ばし、73年に東証1部に上場している。これを機に商標も“サンデン”と改め、米国、シンガポール、ヨーロッパへと次々に海外拠点を設立して、コンプレッサーの生産・販売を世界へ拡大していった。81年には世界で初めてスクロール型コンプレッサーを開発、生産、販売し、82年に社名も三共電器から商標と同じ「サンデン」に変更。さらに88年、米国第2位の自動販売機メーカーであるベンドー社を買収。世界各地に生産・販売拠点をもつ国際企業となった。

 19年3月期の売上高は2739億円。このうち自動車機器事業は1935億円で7割を占め、流通システム事業694億円、床暖房や浴室換気乾燥機、石油ストーブなど住環境システム事業が110億円となっている。

 サンデンHDにとって、自動車機器事業と並んで経営の両輪ともいえる流通システム事業を売却するに至った背景には電気自動車(EV)に対応した自動車部品の開発に経営資源を集中させるという戦略転換があった。

 足元、自動車業界は100年に1度の大変革期に突入しており、業界構造も大きく変化しつつある。こうした中でサンデングループの自動車機器事業については、成長が期待されるEVの領域拡大に向けた取り組みを加速させることが不可避となっている。しかし、18年度の夏以降、米国や中国を中心とした通商問題、米国の主要顧客の工場閉鎖、欧州における燃費規制および排ガス規制の強化、イランに対する米国の経済制裁およびその後の金融制裁など、同社の自動車機器事業をめぐる環境は厳しく、新規車両の立ち上げの延期や、ディーゼル車両の販売減、イランの経済制裁に伴う当該地域での収益減少など、収益面で多大な影響を受けることになった。

 こうしたグローバルな経営環境の変化に対応して、同社では19年4月に、23年度を最終年度とする新中期経営計画「SCOPE2023」を策定し、①生産体制の抜本的見直し、②基盤収益力の向上、③積極的な「協創」による成長、④資産改革によるキャッシュフロー創出、⑤ 仕組み改革に取り組んで、売上高3200億円、営業利益率5%、自己資本比率25%を目指す方針を打ち出し、このため、流通システム事業を切り離して自動車機器事業に経営資源を集中する決断を行うに至ったのである。

 なお、サンデンHDはSDRSホールディングスにサンデンRSを売却後、議決権の20%を取得して、今後も友好関係を維持する方針をとっている。

 サンデンRSを買収したインテグラルは、07年9月に創業した独立系のPEファンド運営会社。ユニゾン・キャピタルやGCA(現GCAサヴィアン)を立ち上げた佐山展生氏(現インテグラル代表取締役)とユニゾン・キャピタル、GCAの共同創業でも佐山氏のパートナーであった山本礼二郎氏(同)が中心となって立ち上げられた。最近ではスカイマークイトキンアデランス東洋エンジニアリングなどの経営再建または更なる成長に取り組んでいる。

 そこで、サンデンRSを買収したインテグラルの山本代表取締役パートナーに、サンデンRSの今後の成長戦略を聞いた。

<インタビュー>
日本初の高機能自動販売機技術MMV等を武器にIPOを目指す

 山本 礼二郎(インテグラル 代表取締役パートナー)

ファイナンシャルバイヤーによる入札を選択

―― まず、サンデンRSの買収経緯を聞かせてください。

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