[特集インタビュー]

2020年6月号 308号

(2020/05/19)

【PEファンドのトップが直言】公的年金資金の一部を民間・独立系PEファンドに分配して、企業再生支援の体制構築を

安東 泰志(ニューホライズン キャピタル 代表取締役会長)
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安東 泰志(あんどう・やすし)

安東 泰志(あんどう・やすし)

1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がける。1994年、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ(私的整理ガイドライン、INSOLの前身)ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。その後、東京三菱銀行企画部で企画部門の次長を歴任後、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。国内機関投資家の出資による8本(総額約2600億円)の投資ファンドを組成、市田・近商ストア・東急建設・不動建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・たち吉など、流通・建設・製造業に亘る数多くの企業の再生と成長を手掛ける。東京大学経済学部卒業・シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。 事業再生実務家協会常議員、日本取締役協会監事。

「ポスト・新型コロナ」の企業再生のための金融はどうあるべきか。企業に資本性の資金を迅速に入れることができるのは、他の事業会社によるM&Aでなければ、プライベートエクイティ(PE)ファンドしかない。銀行と民間・独立系のファンドが力を合わせて社会に必要な企業を再生させ発展させることが期待されている。新型コロナウイルスによって引き起こされる驚くべきショックを吸収するのに適したポジションにあるPEファンドのトップに、「ポスト・新型コロナ」の企業再生に果たす役割と課題について緊急インタビューした。


リーマン・ショックとは異なる大恐慌

―― 国際通貨基金(IMF)が4月14日に発表した世界経済見通しによると、2020年の世界全体の成長率は前年比3.0%減としています。IMFの統計でさかのぼれる80年以降、世界経済のマイナス成長はリーマン・ショック直後の09年の前年比0.1%減だけです。新型コロナウイルスの感染拡大による影響は、2008年のリーマン・ショックの水準をはるかに上回るもので、世界経済は1920~30年代の大恐慌以来最悪の同時不況に直面していると見られています。安東会長は、足元の新型コロナウイルスによる世界的な経済危機についてどのように見ておられますか。

 「リーマン・ショックの発端は、サブプライム・ローンの野放図な拡大で膨れ上がった米国の住宅バブルの崩壊でした。結果として、リーマン・ブラザーズ・ホールディングスなどの金融機関の破綻や危機が続き、連鎖的に世界規模の金融危機へと広がりました。しかし、今回は新型のウイルスのパンデミックによって物理的に人と物が動かないという点で大きな違いがあります。リーマン・ショック後の空前の量的金融緩和によって、金利がもともと低い状態なので、金融政策(利下げ)は、前回と比較して景気刺激効果が薄い状況にもあります。その意味では、リーマン・ショックとは異なる不況、大恐慌と呼んでいいのではないでしょうか。

 1929年の世界大恐慌に匹敵するぐらいの負のインパクトがある状況だとすると、財政再建の遅れを覚悟のうえで、1年分の発行額の国債を発行することも必要になると思います。問題はそれをどう使うかということです。日本の雇用慣行に照らして言えば、個人にばらまくというのではなくて、企業の資金繰り支援による雇用の確保に全力を投入すべきです。民間の金融機関による緊急融資の実施はもちろん、雇用確保のために使われた資金分は債務免除をする仕組みが欲しい。

 それと、政治家は何かというと『中小企業』支援と言いますが、


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