[【企業変革】価値創造経営の原則と実践(マッキンゼー・アンド・カンパニー)]

(2021/04/22)

【第4回】価値創造のための経営企画機能

野崎 大輔(マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 パートナー)
柳沢 和正(マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 パートナー)
呉 文翔(マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 アソシエイト・パートナー)
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 本社の中に存在する経営企画機能の役割は経営者の代理人として中長期的な企業価値向上に貢献することである。経営者は価値創造に責任を負っているが、経営者の時間的リソースは限られているため経営企画機能が経営者に代わって企業価値向上の実務を支援する必要があり、また経営者も経営企画機能を適切に活用することが求められる。

 一般に経営企画機能は大企業においては経営企画部としてCEO (Chief Executive Officer)ないしはCSO (Chief Strategy Officer)の管掌部門として存在することが多い。経営企画部は本来的には経営陣の代理人であると位置付けられるべきではあるが、現実的には事業責任を持つ事業部に対してレポーティングライン、人事権などの権限を有していないことが多く、ややもすれば事業部から収集した各種のレポートをまとめるだけの機能となりがちである。経営企画以外の代表的な本社機能である人事部や財務部なども同様の問題に直面することはある。しかし、このような部門は人事や予算などで一定の権限を事業部に対して有していることが多いが、経営企画機能に関してはそのようなものが存在しないことが多いため、難易度は一段と高い。

 一方で経営陣が適切に経営企画機能を活用すると価値創造の強力なエンジンともなり得る。そこで本稿では経営企画機能の役割を定義し、いかにして価値創造に貢献するべきかを述べていきたい。

【経営企画機能は経営者の代理人であるべきである】

 冒頭でも述べた通り経営企画機能は経営者の代理人であると定義するべきである [図1]。そして経営企画機能は、経営目線で全社の課題を早期に特定し、その解決の道筋を経営者に替わってつけることが主たる役割であると位置付けることが望ましい。経営企画機能は、経営者の目線を持つべきであり、経営者は企業価値向上に責任を負っている以上、経営企画機能もまた価値創造の観点で事業を俯瞰する必要がある。

 企業はその組織上、経営が介入しなければ「昨日やったことを今日もやり明日もやり続ける」構造になっていることが多いため、何らかの変化を起こすためには経営者が意思を持って行動を起こさなければならない。そしてその素案を策定することが経営企画機能の役割の一つであり、これには高度なインテリジェンスが要求される。事業環境が変化すればそれに応じて企業活動もまた変わることが求められ、ディスラプティブなテクノロジーなどにより事業環境の変化が早くなれば、より一層、企業はそれに対応する必要がある。このような変化の責任を負うのは経営者ではあるが、経営企画機能はその中核として変化をリードすることが求められ、そのためにも経営者目線での高度なインテリジェンスを持つ必要がある。
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マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社

■筆者略歴

野崎 大輔(のざき・だいすけ)
マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 パートナー

日本における戦略・コーポレートファイナンス研究グループのリーダー。
M&A、合弁事業立ち上げやその他のパートナーシップ締結、事業統合マネジメント、戦略立案、次世代リーダー育成など、幅広い分野に従事。日系企業のM&Aプロジェクトのプロセス全般における支援のほか、製造業、資源・エネルギー、消費財、ヘルスケア、戦略的投資家、機関投資家など、幅広いクライアントに関わる数多くのプロジェクトに従事。Kohlberg Kravis Roberts (KKR) およびゴールドマン・サックスでの勤務経験を持つ。

東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。


柳沢 和正(やなぎさわ・かずまさ)
マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 パートナー

日本におけるプライベートエクイティ・プリンシパルインベストメント研究グループのリーダーとして、プライベートエクイティおよび商社の成長戦略、M&A戦略、ビジネス・デューデリジェンス、買収後のバリューアップ、売却などのコンサルティングサービスを提供。加えて製造業企業から消費財企業まで幅広いクライアント企業に対して戦略立案やコーポレートファイナンスに関するコンサルティングサービスを提供。
東京大学工学系研究科修士課程修了。

呉 文翔(くれ・ぶんしょう)
マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 アソシエイト・パートナー

ポートフォリオ戦略、企業買収や事業売却などのコーポレートトランザクション、統合マネジメント、投資先企業の事業価値向上施策立案など豊富な専門的知見を活かして主にプライベートエクイティファンドや総合商社のクライアントにコンサルティングを提供。資源・エネルギー、電力、消費財、ヘルスケアなど、幅広い分野において数多くのプロジェクトに従事。
2015年からマッキンゼーの東京オフィスに参画。マッキンゼー入社以前は三井物産にてエネルギーセクターでの事業投資案件に従事し、数多くのクロスボーダーM&A案件を担当してきた経験を持つ。
慶應義塾大学法学部法律学科(学士)卒業/ハーバード大学経営学修士(MBA)修了。





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