[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2021/05/06)

「日本ロス」で盛り上がるドンキの海外事業 ~ ローカライゼーションではなく「日本丸出し」がウケる理由

藤原 裕之((同)センスクリエイト総合研究所 代表)
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「日本ロス」に陥るアジアの人々

 新型コロナウイルスの影響で日本のインバウンド客はストップしたままだ。2019年に3,188万人だったインバウンド客数は2020年に411万人に急減。インバウンド客の9割近くが消滅した。

 順調に伸びてきた日本のインバウンド市場が蒸発したことで海外で起きている現象。それが「日本ロス」だ。特に爆買いブームなどでインバウンド需要を支えてきたアジアの人々は日本に行けなくなったことで禁断症状に陥っている。SNSで日本の観光地の様子などを投稿するといち早く反応するのは日本人より中国人である。「そこに行ったことがある!」「もう一度あそこで写真を撮りたい!」といった具合だ。

盛り上がる「ドンキ」の海外事業

 その日本ロスが日本企業の海外戦略に大きな影響を与えている。日本ロスを自社の強みに惹きつけ、海外展開に弾みをつけているのがディスカウント店「ドン・キホーテ」(以下、ドンキ)を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスだ。

 ドンキの海外事業の業績をみると、2021年6月期第2四半期(2020/7-12月)の売上高は717億円と前年同期比で36%増加した。ドンキの海外進出は2006年にダイエーのハワイ法人を買収したのが始まり。海外事業では北米の売り上げが7割を占めるが、ここにきて順調に売り上げを伸ばしているのがアジアだ。2020/7-12月の北米の売上高は前年比12%増なのに対し、アジアでは前年比176%増と急増している。(図表1)

図表1 ドンキ海外店の売上高  
 

 アジアでの売り上げ急増の理由は急速な店舗拡大にある。なかでも急拡大しているのが香港店「ドン ドン ドンキ(Don Don Donki)」だ。香港店は2019年7月に1号店がオープンし、同年12月に2号店、2020年は続けざまに4店が出店、2021年3月時点で計7店舗となっている(図表2)。積極的な出店攻勢により、香港店の2020/7-12月の売上高は前年比で7.4倍に急増した(図表1)。

 ドンキはアジア展開をさらに加速させており、今年1月に台湾(台北市)、3月にマレーシア(クアラルンプール)にそれぞれ1号店をオープンさせている。



■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)

略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。
ブログサイト「藤原裕之のブログ アートとサイエンスの「あいだ」」を運営。

※詳しい経歴・実績はこちら
※お問い合わせ先:hiroyuki.fujiwara@sense-create.co.jp

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