[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2021年10月号 324号

(2021/09/15)

CVCキャピタル・パートナーズが描く新生「ファイントゥデイ資生堂」の成長戦略

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赤池 敦史(あかいけ・あつし)

赤池 敦史(あかいけ・あつし)(シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン 代表取締役 パートナー 兼 日本共同代表)

東京大学工学部資源開発工業学科卒業後、東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻修士課程、およびコロラドスクールオブマインズMining and Earth Systems Engineering博士課程を修了。1999年7月プライスウォーターハウスクーパース(米国ニュージャージー州)入社。2000年4月マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン入社。半導体や化学、エレクトロニクス業界を対象に、経営戦略の再構築および新規事業開拓等のコンサルティングを担当。2002年4月アドバンテッジパートナーズに参画し、テレコムおよび製造業等複数の案件を担い、シニアパートナーに就任。2015年4月シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン代表取締役就任。

資生堂のパーソナルケア事業を承継

 資生堂のパーソナルケア事業が2021年7月1日、新会社「ファイントゥデイ資生堂」としてスタートを切った。

 資生堂のパーソナルケア事業のうち、国内事業については会社分割(吸収分割)によってファイントゥデイ資生堂に承継。同時に、ファイントゥデイ資生堂の全ての株式をCVCキャピタル・パートナーズ(以下、「CVC」)が投資助言を行うファンドが出資をしているOriental Beauty Holding(以下、「OBH社」)に譲渡。パーソナルケア事業のさらなる成長を資生堂とCVCが協力して支援・運営するため、OBH社の完全親会社となるAsian Personal Care Holdingの株式の35%を資生堂が取得して合弁化するというスキームである。(下図参照)

図

 資生堂は、2020年12月期(20年1~12月)通期の連結業績で売上高が前期比18.6%減の9208億円、営業利益が86.9%減の149億円、最終損益は116億円の赤字(前期は735億円の黒字)に転落した。こうした状況を打破するため、資生堂グループは中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」をスタートさせ、デジタライゼーションを推進し、「高付加価値スキンビューティー領域」をコア事業とする等の事業構造を転換しながら、抜本的な経営改革を実行して2030年までにこの領域における世界No.1企業を目指すという方針を打ち出した。

 3カ年の中期経営計画では、売上拡大による成長重視から収益性とキャッシュフロー重視の経営へと転換し、原価・販売管理費の改革によって2023年に営業利益率15%の達成を目標としている。パーソナルケア事業の切り出しは、そうした資生堂の事業ポートフォリオ再構築の一環として決断された。さらに2021年8月には、米国地域本社であるShiseido Americas Corporationを通じて「ベアミネラル(bareMinerals)」、「ローラ メルシエ(Laura Mercier)」、「バクサム(BUXOM)」の3ブランドについても7億ドル(約770億円)でPEファンドのアドベント・インターナショナルに売却することを発表している。

 資生堂のパーソナルケア事業は、1959年の「資生堂商事株式会社」から続く歴史の長い事業で、ヘアケアブランド「TSUBAKI」やスキンケアブランド「SENKA」、男性用の「uno」等をグローバルに展開しており、2019年12月期のパーソナルケア事業の売上高は1055億9700万円となっている。

 ファイントゥデイ資生堂への投資を決めたCVCは、1981年に設立された欧州のプライベートエクイティ(PE)ファンド。シティグループのベンチャーキャピタル部門が出発点で、長期投資を基本戦略としており、全世界24拠点で13兆円の資産を運用している。2003年に日本拠点が開設された後、2005年12月に日本支社である「CVCアジア・パシフィック・コンサルタンツ・ジャパン」が設立され、2006年4月に現在の「CVCアジア・パシフィック・ジャパン」に名称変更された。2020年4月にはアジア・太平洋地域を投資対象とする5号ファンドで45億ドル(約4900億円)の資金調達を完了しており、日本では昭和薬品加工、信和、ミニット・アジア・パシフィック、アルテリア・ネットワークス、テクノプロ・ホールディングス(旧グッドウィル・グループ)、HITOWAホールディングス(旧長谷川ホールディングス)、りらく等への投資実績を持っている。

 CVCは、新会社「ファイントゥデイ資生堂」の成長戦略をどう描いているのか。CVCアジア・パシフィック・ジャパンの赤池敦史・代表取締役パートナー兼日本共同代表に聞いた。

<インタビュー>
アジア市場開拓を成長軸にIPOを目指す

 赤池 敦史(シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン 代表取締役 パートナー 兼 日本共同代表)

5年越しの投資案件

-- 資生堂のパーソナルケア事業を承継した「ファイントゥデイ資生堂」が2021年7月1日新たなスタートを切りました。まず、CVCが資生堂のパーソナルケア事業への投資を決めた経緯についてお聞かせください。

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