[M&Aスクランブル]

(2014/05/28)

東証の開示規制の見直し ~スクープ記事等への注意喚起制度がスタートへ

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 東証は、4月4日付で「不明確な情報への機動的な注意喚起を行うための開示注意銘柄制度の改善に係る上場制度等の見直しについて」を公表し、パブリックコメントを受け付けていたが、その手続きも完了し、間もなく新制度がスタートするようだ(パブコメでは5月を目途に実施予定とされている)。M&Aや新株発行、あるいは上場廃止の原因になり得るような事情に関する情報等が不明確、すなわちスクープ報道や市場の噂の形で発生した場合に、その事実関係について「より踏み込んだ情報開示」を上場会社に求めるものだ。取引所は、上場会社に事実関係の照会を行い、必要な場合に情報開示を求めるが、なお情報の不明確さが存在すると認める場合は、売買を停止したり、投資者に対して注意喚起してその旨を公表するという。

 平成24年度の金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキンググループ」における「より踏み込んだ情報開示が行われるよう検討すべき」との提言を踏まえた見直しだが、2013年4月の川崎重工業と三井造船の経営統合に関するスクープ報道に端を発して盛り上がった議論もその契機の1つとなったようだ。スクープ報道に対して、川崎重工業は「当社が発表したものではなく、またそのような事実もありません」としていたが、2か月後に交渉が破談した際、「交渉の事実はありますが、何も決まっていません」と当初の開示を遡って訂正したため、誤った情報の開示ではないかと議論を呼んだ。

 さて、新制度下の実務として、進行中のM&A案件に関してスクープ報道があったような場合、当事会社はどのような情報開示をするのが適当なのか。

「当社として決定している事実はない」とか「当社が発表したものではない」といった紋切り型の開示に批判があるところ、新制度における実務を先取りするような、いくつかの事例がすでに出ているようだ。

 例えば、5月14日のKADOKAWAとドワンゴの経営統合に関するスクープ報道に対しては、「一部報道がなされておりますが、当社として発表したものではございません」、「本件については、本日開催の取締役会に付議する予定であり、決定しましたら速やかに開示いたします」と開示し、その当日に統合契約書締結を正式発表している。


 

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