[M&A戦略と会計・税務・財務]

2014年8月号 238号

(2014/07/15)

第86回 デュー・ディリジェンスについて

 山岡 久之(プライスウォーターハウスクーパース パートナー)
  • A,B,EXコース

はじめに

  先月号では「カーブアウトM&Aの難しさ:バリューチェーンの視点から」と題して、ハーバード・ビジネススクール教授のマイケル・E・ポーターがその著「競争優位の戦略」で取り上げた競争優位の源泉分析のツール(いわゆる、「バリュー・チェーン・モデル」)を利用して買収後の事業経営の難しさについて述べさせていただいた。

  本稿では、M&Aのプロセスにおいて必ず実施されるデュー・ディリジェンス、すなわち、買収の是非に関する意思決定、買収価格の算定、および買収後の経営において参考となる情報の収集、等を目的として実施される作業に関する難しさと限界について確認をしておきたい。なお、本稿においては財務デュー・ディリジェンスについて述べさせていただく。また、本文中の意見に関する部分は、筆者の私見であることをあらかじめお断りする。

デュー・ディリジェンス(Due Diligence(DD))とは

  デュー・ディリジェンスという言葉は、M&Aを進めるにあたって必ず出てくる言葉であり、今では、一般的な用語として通用しているが、まず、デュー・ディリジェンスの意味について確認しておきたい。

  デュー・ディリジェンス(Due Diligence) とは、オックスフォードビジネス英語辞典によると以下のように定義されている。

1. the process of taking great care in doing something or deciding something, especially in buying or selling something
2. a process in which somebody examines the financial records, documents etc. of a business  in order to decide whether they want to buy it and how much money to offer

  すなわち、デュー・ディリジェンスとは、ビジネスにおいて合併や株式取得に際して行われる対象となる会社、或いは、事業の調査・分析であり、買収するかどうかの意思決定、提示価格の算定、潜在的な損害を回避するために適切な担当者によって実施される細心の注意、ということになるであろう。

  このように定義されているデュー・ディリジェンスであるが、その作業内容とクライアントへの報告事項は過去20年間において大きく変遷している。以下、簡単にその変遷を確認してみたい。
 

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

アクセスランキング