[Webインタビュー]

(2018/11/07)

【第98回】オアシスのトップが語る「アルプス電気によるアルパイン完全子会社化に反対する理由」

フィリップ・マイヤー(オアシス・マネジメント・カンパニー ジェネラル・カウンセル、CCO〔チーフ・コンプライアンス・オフィサー〕、COO〔チーフ・オペレーティング・オフィサー〕)
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■オアシスとアルパインの交渉の経緯

[2015年5月20日]
オアシス・マネジメント・カンパニー(以下オアシス)は、アルパイン経営陣とミーティングを設け、アルパインの事業、15.6%保有するNeusoftを含めた様々な事柄について議論を行った。

[2015年6月5日]
オアシスよりアルパインに、当時1300億円の価値があったNeusoftの株式保有分15.6%の売却を促す書簡を送付。

[2015年7月29日]
アルパインは、Neusoftの保有分の1/3にあたる5.01%の株式を売却する取締役会決議を経て、その売却分をNeusoftとの合弁の未上場会社への投資に充当した。
http://www.alpine.com/j/investor/library/pdf/kessai/ja/2015a_jp.pdf

[2017年6月12日]
アルプス電気、アルパインに向け、アルパインの株価が1株当たり3300円を超える価値があると評価し、株式市場で過小評価されている点、アルプス電気の影響力の増加に伴うコーポレートガバナンス上の懸念点、並びに1株当たり1800円でアルパインの50.1%を買収したい旨の主張を記載した書簡を送付。

[2017年7月27日]
アルプス電気、アルパインが株式交換契約の締結を発表。アルパインの株価を発表時の株価で2108円と評価し、これは2017年6月12日の書簡に記載した評価額を大きく下回るものであった。

[2017年10月18日]
アルプス電気、アルパインに対し、アルプス電気がアルパインを公正価格から大きく割安な水準で買収されようとしているように導出されている企業価値評価、そのプロセスにおけるいくつもの問題点を示した書簡を送付。

株式交換のバリュエーションに瑕疵あり


――  アルパインの40.43%の株式を保有しているアルプス電気は、アルパイン1株に対してアルプス電気株0.68株を割り当てる株式交換によって、2019年1月にアルパインの完全子会社化を目指しています。実現にはアルパインが12月に開催する臨時株主総会で出席株主の3分の2以上(約67%)の賛成を得なければなりません。これに対してオアシスは、アルパインの企業価値評価等に関する問題点を指摘して反対していますね。

「私たちは、統合そのものに反対しているわけではありません。アルプス電気が提案するアルパインの株価は異常に低く、株式交換比率の見直しなどによって少数株主に報いる必要があると主張しているのです。

  私たちの考えの一般的な原則を申しますと、適切な価格であれば企業統合は良いことだと考えております。既にアルプスとアルパインの実質的な統合が進んでおり、しかも加速しているという現状を考えると、それが効率的なのだろうとは思います。

  我々は、アルパインは健全な事業を持つ会社であると考えておりますし、バランスシートも非常に健全で、かなり余剰の現金が残っているような状態になっています。また、財務的に健全な状態であるだけではなく、経営陣も非常にバランスのとれた経営をされていて、事業計画をしっかり達成できている会社と評価しています。

  そのアルパインを10月30日現在の株価でいうと、アルプス電気はアルパインの株式1株当たり1700円を下回る価格で買収しようとしています。しかし、この交換比率はアルパインがこれまでに業績上方修正を3度も発表する以前の株価で計算されたもので、かつ経営統合が発表される以前の水準です。つまり、アルパインが業績予想を超過し続ける中で、依然としてアルプス電気が提示した従来の低いままの株価を少数株主に受け入れるよう強いており、アルプス電気とアルパインの経営陣は共同でアルパインの少数株主の利益を害する行動をしているのです。

  この株式交換による統合については、バリュエーション、それから、公正意見書についても瑕疵があると考えており、それらに対する批判内容については私たちの意見を公開させていただいております*。
*https://www.protectalpine.com/jp-oasis-history-of-engagement-with-alpine/

  アルパインがこのような低い買収価格を受け入れたことは、手続き及び企業価値の評価手法の公正さに問題があり、これが最終的に少数株主の権利保護を軽視する結果となったと考えています。今も申しましたように、アルパインの株価が上昇する前の安い株価で買収価格を決めているのです。アルプス電気による買収は19年になってようやく完了する予定ですが、買収が完了するはるか前に買収価格が決定されることで、少数株主にとって、今後18年度、19年度に予想される営業増益による株価上昇から利益を得る機会が減少してしまっているのです。これは、アルプス電気が公表資料に記載している19年および20年の営業増益によって株価が上昇する前に、割安な価格でアルパインの買収価格を固定することを狙って、このようなことを行ったと考えています。アルプス電気は、アルパインの事業及び将来の収益機会を誰よりも熟知しており、この優位な立場を利用して、公正価値を大きく下回る最低価格でアルパインを買収することを模索しているのではないかと、弊社は強く疑っています」

クラリオンの買収案件で大きな転機に

――  オアシスでは、どのくらいの株価が適切と見ていますか。

「当初の我々のファイナンシャルアドバイザーの計算では、低く見ても一株3700円で、それもあくまで一番低く見ての数字だと考えていました。ただこの数字は、クラリオン買収のニュースが入ってくる前に考えていた数字です。

  アルパインの企業価値評価は市場株価法、類似会社比較法およびDCF法によって算出された価値に基づいていました。類似企業としてパイオニア、JVCケンウッド、クラリオンの3社を使用しました。3社のうち2社、つまりJVCケンウッドは、損失を計上しているだけでなく、アルパインと比べて事業内容が大きく異なり、自動車関連事業の営業利益構成比は38%未満であることに加え、OEM事業からの割合はさらに小さくなっています。それに対して、アルパインは、BMWやアウディなどヨーロッパのトップ自動車メーカーと強い関係を築いています。また、もう1つの類似会社であるパイオニアについては、過去3年間のうち2年間赤字を計上しています。そのような企業を類似企業として用いることが、アルパインを過小評価する要因になっています。

  アルパインは30%超で成長するとの業績見通しを出しており、18年度及び19年度に予想されている大幅な営業増益予測を考慮すると、算定にあたって0%永久成長率の使用には違和感があり、類似会社としてはふさわしくありません。

  こうした中で…


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