[【クロスボーダーM&A】「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」を読む(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)]

(2018/07/18)

【第4回】行動3 入念な準備に「時間をかける」

汐谷 俊彦(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー)
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  M&Aを考える際に、まず陥りがちな思考は、「M&Aに失敗するのは、そもそも相手との交渉に負けて高値掴みさせられているからだ」⇒「だったら、どうすれば交渉に勝つことができるのか?」といった発想である。

  しかし、M&Aは交渉術に長けたインベストメントバンカーと、名うての弁護士にお願いすれば大丈夫、といった、そんな単純で甘いものではない。交渉に勝つ・負けるといったパワーゲームをしたところでM&Aの成功が保証されるわけではないからだ。もちろんうまく交渉することによってM&Aの成功確率を高めることができるといったことは否定しないが、「そもそもM&Aのうち交渉は一部である」ということを認識することが重要である。

さて、みなさんはM&Aの準備にどれだけの時間をかけているだろうか?

シンプルクエスチョンとして、2つのことを振り返ってみるとよいだろう。

  1. いつから対象会社のことを知っていたか
  2. 対象会社の一次情報を相当程度、入手できているか
    (競合企業で元従業員が自社にいる、業界内で社長同士が知り合い、昔からの取引先である等)

  スピード感を持って意思決定をし、経営を進めていかなければこのグローバル競争の時代に生き残れないという中で、「M&Aの検討にそんなに長い時間をかけられるのか」といった意見もあるが、意思決定はスピーディに行うにしても、その質の良し悪しは事前準備にかかっていると言っても過言ではない。平静からの事前準備・検討がないままにM&Aの意思決定を行うことは拙速になりがちで、規模の大小もさることながら、その意思決定が与える影響とリスクを十分に踏まえた検討が前提になる。“この案件は30年に一度のゲームチェンジのチャンスであり、これを逃すとわが社は永遠にグローバル競争から取り残される"といったある種の恐怖感、追い詰められた状態で乾坤一擲とばかりに行ったM&Aで失敗した事例は枚挙に遑がない。このような精神状態のときに目先に良さそうな案件が転がってくると、ついつい飛びついてしまい、買収は実行するものの(多少、価格が跳ね上がることに目をつぶれば買収することはできる)、本当の試練は買収後にやってきて、あとで減損の痛い目を見るというのが典型的な失敗パターンである(しかもその時に買収当時の責任者はすでにいないケースが多い)。

  そういった意味においても…



デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

■筆者略歴
汐谷 俊彦(しおたに・としひこ)
コンサルティング会社、事業会社企画部門を経て現職。
日本企業による海外企業買収にかかわるM&A/PMI、日本企業の海外投資/進出に関する経験多数。
M&Aを基点にした企業変革、グローバル戦略、事業再編に強み。その他事業戦略立案などを主に経験。



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