[【コーポレートガバナンス】よくわかるコーポレートガバナンス改革~日本企業の中長期的な成長に向けて~(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)]

(2019/12/04)

【第8回(最終回)】 日本企業が目指すべき方向性

汐谷 俊彦(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員)
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グローバル競争の中で日本企業だけ異なるルールで戦うということはありえない

 今日に連なる日本国内のコーポレートガバナンス改革は、米国型のコーポレートガバナンスに合わせていこうという流れに見えますが、これは何も米国を真似ればよいといった単純な発想ではありません。世界の時価総額ランキング上位50社のうち30社は米国企業です(2019年11月末時点)。経営資源であるヒト、モノ、カネ、そして情報は米国企業に集まっているといえます。これら経営資源はいまやボーダレスに動きますから、日本企業だけ国内に閉じこもって鎖国のようなことをしていても生き残れないですし、一方でワールドカップを戦おうとすれば日本代表だけ違うルールが認められることはありえません。投資家はよりリターンの高い企業であれば国籍に関係なく投資しますし、多少の制約があるとはいえ、ヒトもよりよいキャリアと報酬を求めてボーダレスに動ける世の中です。その中で日本企業だけ特別なルールで競争することはもはや不可能なのです。米国型のコーポレートガバナンスが事実上の世界標準である現在において、これを実現することは、さまざまな経営資源獲得において競争優位を実現するための必要条件なのです。

外部からの視線にさらされているという緊張感によって最高のパフォーマンスが生まれる

 猛烈な勢いで市場が変化しイノベーションが求められる、まさに戦国時代の今日の企業経営においては、リーダーである社長(CEO)の果たす役割が死活的に重要です。その時点での経営環境において、最も適したリーダーを選び、さらにエンカレッジし、結果が出ない場合には解任すら辞さない、それがコーポレートガバナンスの究極の肝です。コーポレートガバナンスとは結局のところ社長を規律づける仕組みです。

 昨今、アクティビストと呼ばれる株主を中心に、外部からプレッシャーをかけられ、社長が交代に追い込まれたり、事業売却に至ったりとダイナミックな動きが様々、出てきていますが、そもそも、外圧によって追い込まれる前に、常に先手を打って隙を与えないことが最大の防御で危…

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

■筆者略歴

汐谷 俊彦(しおたに・としひこ)
外資系コンサルティング会社等を経て現職。製造業/テクノロジー/エネルギー/化学/ヘルスケア/商社など幅広い業界に対して成長戦略策定、事業ポートフォリオ見直しといった戦略面での支援や、M&A戦略策定に始まり、デューデリジェンス、PMI計画策定および実行支援・買収後のオペレーション改善といったM&Aライフサイクル全領域において幅広い経験を持つ。特にクロスボーダーM&Aやカーブアウト買収といった複雑で難易度の高い案件を数多く手掛けている。また、日系企業による海外企業の買収を契機に、その後のグローバル化に向けたトランスフォーメーション支援や、買収後の海外企業のターンアラウンド、ガバナンス改革などの案件も支援している。東京大学工学部卒。

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