[【DD】グローバルM&Aにおける非財務リスクへの対応(クロール・インターナショナル)]

(2019/04/18)

【第5回】 リスク発見時の対応

村崎 直子(クロール・インターナショナル・インク シニアアドバイザー)
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  さて、前回は、自力でやってみるリスク・デュー・ディリジェンスについてお話ししましたが、今回は、これまでご紹介したようなリスク・デュー・ディリジェンスの結果、何らかのリスクが確認された場合に、企業はどう対応しているのかということについてお話しできればと思います。

  時々、リスク・デュー・ディリジェンスを行ったときに、ディールをやるかやらないかの2つの選択肢のためにしかデュー・ディリジェンスレポートを活用しない企業がみられます。そういった企業は、例えばクロールにデュー・ディリジェンスを依頼されても、「結局シロなんですか、クロなんですか。」とか「5段階評価だとどのレベルでしょうか。」といったご質問をされることがあります。しかし、それでは、せっかくのM&Aのチャンスをみすみす見逃すことにも、また、せっかくのリスクを避けられるチャンスを見逃してしまうことにもなりかねません。デュー・ディリジェンスにより「何がリスクなのか」というのを理解した後は、ディールの内容や自社の現状と照らし合わせて、「リスクへの対応」を考えることが必要になります。

1.M&Aにおける一般的なリスクマネジメントの方法

  一般的にリスク対応の方法としては、「リスクの保有」・「リスクの低減」・「リスクの移転又は共有」・「リスクの回避」と4種類あるといわれています。リスクが小さくまた発生確率が小さい場合には、何も対策を行わないで「リスクを保有」するという判断をし、リスクは小さいが発生確率が高い場合には「リスク低減」ということで何らかの対策を取り、リスクの発生確率は小さいがリスクが大きい場合には保険をかけるなどで「リスクの移転又は共有」という形をとり、リスクも大きく発生確率も大きいという場合には「リスク回避」という選択肢をとります。リスク・デュー・ディリジェンスの結果ディールを中止するというのは、このリスク回避にあたりますが、リスクがあればどんな場合でもすべてディールを中止してしまってよいのでしょうか。

  例えば、東南アジアの買収対象企業が、贈賄行為といった違法行為を長年にわたり行っており、この行為なしには事業が成立しえないというような場合や、反社会的勢力との密接な関係がどうしても断ち切れない、というように、深刻なリスクがどうしても排除できない場合には、さすがに買収を中止せざるを得ないような気がします。しかしながら、そういった深刻なリスクがある場合にでも…



■ クロール・インターナショナル・インク

■筆者経歴
村崎直子(むらさき・なおこ)
クロール・インターナショナル・インク シニアアドバイザー。
大学卒業後、警察庁に入り、静岡県警捜査第二課長、兵庫県警外事課長を歴任。2008年ベイン・アンド・カンパニー・ジャパンを経て、10年クロール日本支社に入社。15年日本支社代表を経て、18年9月より現職。M&Aの際のデュー・ディリジェンスのほか、不正調査などを多く手掛ける。京都大学法学部卒業、ハーバード大学ジョン・F・ケネディ行政大学院修士課程修了。

 

 

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