[【PMI】 攻めのPMI -企業価値最大化の契機としてのM&A(マッキンゼー・アンド・カンパニー)]

(2019/05/16)

【第3回】 クリーンチームの積極活用 ~シナジー刈り取りを加速する

野崎 大輔(マッキンゼー・アンド・カンパニー パートナー)
加藤 千尋(マッキンゼー・アンド・カンパニー アソシエイト・パートナー)
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  本連載では、「攻めのPMI~企業価値最大化の契機としてのM&A~」と題して、ディールから実現する価値創造の目標を高く設定し、PMIによって確実に果実を刈り取るための知見を紹介している。前回は、価値創造の源泉であるシナジーの効果の広がりに注目し、シナジーの9つのタイプについて述べた。今回は、シナジー刈り取りのスピードに着目し、そのために活用できるクリーンチームという仕組みについて紹介する。

  クリーンチームは、M&Aのディールが完了する前に結成され、両社からの競争上センシティブな情報を受領し、代理で分析を行う。アウトプットは、ディール完了前に元となる競争上センシティブな情報を双方の会社に共有できる状態に加工され、分析の報告という形で両社に提示されるケースと、ディール完了後に情報を互いに開示して活用しやすくするために、事前に整理・分析されるだけというケースもある。競争上センシティブな情報を扱う場合は、社内あるいは社外の法務の専門家を通じてクリーンルームを設立し、その運営や情報の開示についても、法務の専門家のガイダンスに従うことになる。クリーンチームの中に入るメンバーは、両社から特別に任命される場合や、第三者の中立なチームによって構成される場合がある。M&Aの当事者である企業間の競争に影響を与え得る立場にある役員や従業員はクリーンチームのメンバーからは除かれることになる。両社からクリーンチームに入るメンバーは、通常はそのディールが完了されなかった場合、一定期間はそこで知り得た情報を活用しうる職務に就くことが禁じられるので、どの部署の、どういった立場の人を任命するのかには注意が必要である。マッキンゼーは法律上のアドバイスを提供する立場にはないので、ガン・ジャンピング等の規制を踏まえ、ここでは、クリーンチームの設営と活用には法務の専門家のガイダンスが必要不可欠であることのみ強調する。



マッキンゼー・アンド・カンパニー

■筆者経歴

野崎大輔(のざき・だいすけ)
マッキンゼー・アンド・カンパニー パートナー
M&Aや合弁事業立ち上げを含むコーポレートトランザクション、事業統合マネジメント、戦略立案、次世代リーダー育成など、豊富な専門的知見を活かし幅広い分野のクライアントにコンサルティングを提供。日系企業のM&Aプロジェクトのプロセス全般における支援のほか、製造業、資源・エネルギー、消費財、ヘルスケア、戦略的投資家、機関投資家など、幅広いクライアントに関わる数多くのプロジェクトに従事。また、合弁事業立ち上げやその他のパートナーシップ締結も積極的に支援。
経営統合マネジメントにおいては、完全買収、マイノリティ投資、合弁事業立ち上げ、事業パートナーシップ締結など、様々な投資形態におけるプロジェクトに携わり、シナジー創出による投資対効果の最大化、オペレーション改善策の策定、クライアント企業の経営陣とチームメンバー双方を巻き込んだインプリメンテーションプログラムの開発に注力している。
2003年9月から2006年8月までマッキンゼーに在籍し、その後2012年6月に復職。Kohlberg Kravis Roberts (KKR)およびゴールドマン・サックスでの勤務経験を持つ。
東京大学大学院人文科学研究科英語英文学専攻修士課程修了。

加藤千尋(かとう・ちひろ)
マッキンゼー・アンド・カンパニー アソシエイト・パートナー
M&Aやアライアンス、PMIや成長戦略を専門に、電子機器、半導体など製造業のクライアントを中心にサポート。シリコンバレー・オフィスでは、現地企業の成長戦略やM&A戦略および大型PMIに従事。日本でもクロスボーダーのM&Aやアライアンス、PMI、テクノロジー戦略といったテーマを専門に担当。また、製造業企業の全社変革プロジェクトにも従事。2007年にマッキンゼー入社。2013年にアメリカのシリコンバレー・オフィスに転籍、2017年に日本オフィスに復帰。
京都大学理学研究科修士/スタンフォード大学にてMBA取得。





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