[視点]

2019年11月号 301号

(2019/10/15)

M&Aは本当に難しい投資なのか

―M&Aが一般事業投資と比較して難しい投資にみえてしまう3つの理由―

西山 茂(早稲田大学大学院<ビジネススクール> 教授)
  • A,B,EXコース
 日本企業が関係するM&Aが増加している。レコフデータの調査によると、2013年から2018年にかけて、6年連続で日本企業が関係するM&Aは年間2000件を超えており、2018年は3850件に達している。中でも2018年は日本企業が買い手となるケースが93.3%となっており、これは、多くの日本企業が投資の1つの手段として、M&Aを位置づけるようになってきていることを意味している。一方で、日本企業のM&Aの株主価値の創造に関する研究も過去から行われてきている。例えば、井上・加藤(2006)は、1990年から2002年に日本の上場企業が行ったM&Aである137件をサンプルとして短期株価効果に関する研究を行い、上場企業間のM&Aは、買収企業及びターゲット企業の双方の株主価値の創造につながっているが、創造される価値の大半はターゲット企業の株主が得ている、と述べている。また、松尾・山本(2006)は、1999年から2004年までの日本企業のM&Aを対象とした短期株価効果に関する研究を行い、買収企業、ターゲット企業の双方にプラスの価値が生みだされているが、ターゲット企業に対する価値がより大きいという結論を導いている。このような研究結果をみると、日本企業が買収企業になった場合のM&Aは、株主価値の創造にはつながっているものの、その水準はあまり高くなく、買収企業がM&Aを成功させることのハードルは比較的高いと考えられそうである。

 ただ、自ら事業を立ち上げていく一般事業投資と比較した場合、M&Aは成功のハードルが高い難しい投資なのだろうか。私は、下記の3つの点によってM&Aが必要以上に難しい投資に見えている可能性があるのではないか、と考えている。

 まず、1つ目は投資金額の大きさに関するポイントである。M&Aの場合は、

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