[Webインタビュー]

(2018/06/26)

【第93回】BCGコーポレート・ディベロップメント・グループのグローバルリーダーが語る、「M&A巧者」のアプローチ手法

Dinesh Khanna(ボストン コンサルティング グループ(BCG) シニア・パートナー&マネージング ディレクター)
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――  日本企業のM&Aは過去最多を更新した2017年を3割上回り、ますます活況です。ドライバーの1つが海外M&Aです。グローバル競争が激化するなかで、その有効性は誰もが認知するところで、日本でも、JTなど、『M&A巧者』と言われる企業が増えてきています。しかし、高値掴みをしている企業や、依然としてPMIに苦労している企業など、さまざまな課題を抱えている企業が多いのが現状です。カンナさんは、長年にわたり、中国、インド、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム、日本などアジア主要マーケットにおいて、事業会社やプライベートエクイティ(PE)プレーヤー向けにM&Aのサポートを行ってこられました。グローバルに戦略的M&Aを手がけ、企業価値を向上させている『M&A巧者』のM&Aに対するアプローチとはどのようなものでしょうか?

1.世界のM&A増加の要因

「世界のM&A市場は総額ベースで過去最高レベルに達しています。日本においても、世界と同様の傾向にあるといえます。その要因はいくつかありますが、マクロの要素としては、3つの『C』が挙げられます。1つ目は、バランスシート上に潤沢な『Cash』(キャッシュ)があること。2つ目は、『Cheap』、条件の良い資金調達が可能であること。3つ目は、今米国で実行されている法人税減税で、『Corporate』のCです。これら3つのマクロ要因に加えて、最近では特にファイナンシャルインベスター、いわゆるプライベートエクイティ(PE)のような投資家サイドに潤沢な手元資金があることも影響しています。企業の事業戦略上、M&Aの重要性が高まっていることに加えて、PEサイドからもかなりのキャッシュが投資されているという状況です。

  企業のM&Aの目的にはいくつか共通項が見られます。よく言われることですが、1つは効率性を高めるための『スケール』の獲得。もう1つは『成長』の獲得です。国内市場における成長はすでに頭打ちであるため、それ以上の成長を求めようとするならば国外市場で新たな成長源を獲得するしかない。つまり、グローバルにスケールを拡大していかなければ競争に取り残されてしまう、ということです。特に製薬業界ではM&Aが活発化しています。企業は、スケールを手に入れることによって、必要な投資を実行できるようになる。新薬を開発してローンチをするために必要な投資金額が非常に大規模になっているため、成長するためにさらなるスケールを獲得する必要があるのです。

  もう1つ、過去にはなかった新たな現象としては、『テクノロジー』がM&Aのドライバーとなっていることがあげられます。2017年に事業会社が行ったM&A案件をグローバル全体で見ると、案件の5分の1には何らかのテクノロジーが関連していました。その中には、MicrosoftがLinkedInを買収したように、テクノロジー企業が他のテクノロジー企業を買収するケースがある一方で、伝統的な企業によるテクノロジー企業を対象としたM&Aのケースもあります。後者は、新しい技術を手に入れたい、あるいは、シェアードサービスやビッグデータへのアクセスを得たい、アナリティクスの組織能力を手に入れたいという、伝統的企業の意図のもと、実行されているといえます」

2.グローバルのM&A巧者のアプローチ手法

習うより慣れろ

「私たちは買収において成功、つまり適切な資産を手に入れ事業価値を向上できた企業にはどのような共通項があるのかを探る研究(詳細はこちら)を行いました。その結果、成功を実現しているのは…


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