[【企業価値評価】企業価値評価とコーポレートファイナンス(早稲田大学大学院 西山茂教授)]

(2016/03/30)

【第6回】DCF法

 西山 茂(早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授 公認会計士)
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 第5回では、投資プロジェクトの評価方法について学んできました。企業をいろいろな投資プロジェクトの集合体と考えると、投資プロジェクトの評価方法を応用することによって、企業価値の評価もできることになります。実際に第5回で学んできたNPVによく似た方法が、第1回で企業価値の評価方法の1つとして簡単に説明したインカムアプローチ、つまりDCF法として使われています。今回はこのDCF法について詳しく学んでいきます。

1.DCF法による企業価値・株主価値の算定

 第1回でみてきたように、DCF法は、企業が事業を中心に今後生み出すであろうフリーキャッシュフローを予測し、それを現在時点の価値に割り引いて合計し、それを企業価値の評価額のベースとしていく方法です。

 具体的には、企業が行なっている事業の価値を意味する事業価値と事業に関係しない資産の価値である非事業用資産の価値をそれぞれ区分して評価し、その2つを合計して企業価値を計算していきます。次に、その企業価値に権利を持っている2人の関係者、つまり銀行などの企業に資金を貸している債権者とその企業の株主のそれぞれの権利の強さに注目します。具体的には、企業が破たんをした場合には、株主より前に債権者に対して優先的に分配が行われることからわかるように、企業価値に対して優先権を持っているのは債権者です。したがって上記のように計算した企業価値から、優先権を持っている債権者の権利の価値である現時点で借りている借入金や社債の合計金額を差し引き、そのうえで残った金額を株主の権利の価値の理論値(理論的な時価総額)、つまり株主価値と考えていくのです。

図6-1 DCF法による企業価値・株主価値の計算のイメージ図

  

 それでは、まず事業価値から考えていきましょう。第5回でみてきたNPV法は・・・



■西山 茂(にしやま しげる)
早稲田大学政治経済学部卒業。米ペンシルバニア大学ウォートン校よりMBA取得。早稲田大学より博士号取得。監査法人ト-マツ等にて会計監査、株式公開コンサルティング、M&A支援、人材育成などの業務に従事。
2002 年から早稲田大学で教鞭をとり、2006年から現職。会計や財務といった数字をベースに理論と実務の両面から経営を考える授業やゼミを担当している。国内主要企業の監査役を歴任。会計・財務に関する著書多数。公認会計士。

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