[【企業価値評価】企業価値評価とコーポレートファイナンス(早稲田大学大学院 西山茂教授)]

(2016/04/20)

【第7回】企業価値や株主価値を向上させるための経営管理の仕組み

 西山 茂(早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授 公認会計士)
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 第6回では、企業価値や株主価値とは何か、またそれはどう計算するのか、さらにそれを向上させていくためにはどうしたらよいのか、といった点について学んできました。今回は、その企業価値や株主価値を向上させるための経営管理の仕組みについて学んでいきます。具体的には、EVA®、BSCといった業績評価指標や経営管理の指標やシステムです。

 それでは確認していきましょう。

1.EVA®(Economic Value Added:経済的付加価値)

 第6回でみてきたように、フリーキャッシュフローモデルをもとに考えると、企業価値や株主価値を向上させるための具体的な方法は、①フリーキャッシュフローをできるだけ多くまた早めに生み出せるように、ビジネスの仕組みをよく検討すること、②適度に有利子負債を活用したりIRをしっかりと行なうことによって、WACCを低下させること、③事業と関係のない資産を有効に活用すること、という3つにまとめることができます。しかし、企業が日々の活動をそのような方向に向けていくためには、このような方針を経営管理のシステムの中に組み込んでいくことが必要です。そのための代表的な業績評価指標がEVA®です。

 EVA®はEconomic Value Addedの頭文字をとったものであり、株主や債権者といった企業に対する資金提供者の立場から考えて、企業が事業から獲得している儲けが資金提供者の期待している水準をどの程度上回っているかをあらわす業績評価指標です。これは、1982年に設立された米国のコンサルタント会社であるスターン・スチュワート社が提唱したものであり、同社の登録商標となっています。

 具体的には下記のような計算式で計算します。

  EVA®(経済的付加価値)
   =NOPAT(税引後営業利益)
  -(有利子負債+株主資本)×WACC

 WACC : 加重平均資本コスト

図7-1 EVA®のイメージ図



 この計算式のうち、NOPATは、Net Operating Profit After Taxの頭文字をとったものです。これは・・・


■西山 茂(にしやま しげる)
早稲田大学政治経済学部卒業。米ペンシルバニア大学ウォートン校よりMBA取得。早稲田大学より博士号取得。監査法人ト-マツ等にて会計監査、株式公開コンサルティング、M&A支援、人材育成などの業務に従事。
2002 年から早稲田大学で教鞭をとり、2006年から現職。会計や財務といった数字をベースに理論と実務の両面から経営を考える授業やゼミを担当している。国内主要企業の監査役を歴任。会計・財務に関する著書多数。公認会計士。

※詳しい経歴はこちら

 

 

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