[視点]

2020年1月号 303号

(2019/12/16)

ベンチャー企業・スタートアップ企業とのM&Aにおける留意点

淵邊 善彦(ベンチャーラボ法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース
はじめに

 ベンチャー企業やスタートアップ企業(以下「スタートアップ」という)が成長するためには、自社の資源だけにとらわれるのではなく、他社の資源を有効に活用することが大切である。M&Aは、既にある事業を取得することによって起ち上げにかかる時間を買うことができ、ある程度利益やリスクを想定することができるため、急成長を企図するスタートアップによって活用されることが増えている(買い手としてのM&A)。
 他方で、スタートアップにとっては、M&Aは、株式公開とともに、エグジット(出口戦略)の重要な選択肢となる。株式公開をあきらめた場合や、売却資金で新たな事業を行う場合(シリアルアントレプレナー)などは、創業株主が大企業やファンドに売却することによって創業者利益を得るとともに、その事業は新たな経営者の下で継続することになる。また、大企業から一部出資を受け資本業務提携することにより、信用力や事業の拡大につながる(売り手としてのM&A)。
 以下では、主に大企業やファンドが、スタートアップを対象とするM&Aを行う際の法的留意点を検討することとする。

デューディリジェンスの留意点

 スタートアップを対象とするM&Aの場合のプロセスは、スタートアップの意思決定が速く、案件規模もそれほど大きくないため、大企業同士のM&Aよりスピーディに進むのが一般的である。
 デューディリジェンス(DD)についても、案件規模との関係で買い手の予算が限られることが多いため、M&Aの実行の障害になるような問題がないか、企業価値やレピュテーションに影響する問題がないか、実行後の事業計画に影響する問題がないかなどを、ポイントを絞って行うことになる。スタートアップの場合、株式公開のための審査が進んでいるような例外的ケースを除き、想定していなかったさまざまな問題が見つかり、それがディールに大きく影響することが多い。
 特にベンチャーキャピタルが投資する前(アーリーステージ)の企業においては、

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