[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2025年3月号 365号

(2025/02/12)

【ユニゾン・キャピタル】エグジットした「資さん」への投資の全体像を語る

  • A,B,C,EXコース
後藤玲央 ユニゾン・キャピタル パートナー

後藤玲央 ユニゾン・キャピタル パートナー

すかいらーくHDにとって再上場後初のM&A

 ファミリーレストラン「ガスト」などを展開するすかいらーくホールディングス(HD)は2024年10月、“資さんうどん”を運営する資さんの全株式をユニゾン・キャピタルらから240億円で取得し、完全子会社化した。

 資さんうどんは、1976年に大西章資(しょうじ)氏が現在の北九州市戸畑区で1号店を開いたのが始まり。地域に根差した形で事業は大きくなったが、後継者となれる人物がいなかったことから、福岡銀行系の投資ファンドによる株式譲受を経て、2018年3月にユニゾン・キャピタルが株式の大半を取得した。

 資さんの2024年8月期の売上高は153億円、エグジット時点で九州、中国地方、関西に計72店舗を展開し、関東進出も公表していた。

 すかいらーくHDは、2024年春に公表した中期事業計画の中で、2027年までに自己資本利益率(ROE)を9~10%とする目標を掲げており、これに向けて3年間で国内約300店舗の新規出店のほか、M&Aを3~5件程度実施する方針を打ち出している。2014年の再上場後は「ガスト」や「バーミヤン」などの自社ブランドを育てる方針で来たが、資さんの買収は再上場後初のM&Aになる。

 新たなスタートを切った資さんは、2024年12月に関東初となる店舗を千葉・八千代市に開店、2025年2月には東京・両国にも出店する。さらに25年中には埼玉にも出店を計画するなど、早くも関東圏で出店攻勢をかけている。

 資さんへの投資実行からエグジットまでを一貫して担当し、投資期間の6年半に亘り取締役も務めたユニゾン・キャピタルの後藤玲央パートナーに、本件の全体像を聞いた。

<インタビュー>
 類まれな企業価値向上と8倍もの投資リターン倍率を実現した施策

 後藤 玲央(ユニゾン・キャピタル パートナー)

<目次>
  • 大きな企業価値創出による高い投資リターン
  • 投資実行の経緯
  • デュー・ディリジェンスのポイントと投資テーマ
  • 企業基盤作りからのスタート
  • 外食経営管理モデルの導入とオペレーションの磨き込み
  • 花開いた出店拡大と成功要因
  • ESGの観点でも大きな価値創造を実現
  • すかいらーくHDを次の株主に選んだ理由

大きな企業価値創出による高い投資リターン

―― ユニゾン・キャピタル(以下ユニゾン)の投資先である「資さん」をすかいらーくHDが2024年10月、240億円で取得し、完全子会社化しました。大きな投資リターンとなっただろうと注目されていますね。

プライベート・エクイティ(PE)ファンドの投資リターンがオープンに語られることは少ないですが、今回は譲渡先の開示の関係で金額が公表されているうえ、憶測記事なども出ているようなので敢えて言ってしまうと、およそ8倍の投資リターン倍率となりました。投資時の売上高は73億円でしたが、エグジット時は直近2024年8月期で153億円、また進行期の予算数値などは非開示ですが、成長が横ばいとなっていた投資時とは異なり、高い成長軌道にあります。表面的な売上・利益の額も大きく増えましたが、それ以上に会社の状態や成長性が投資時とはまるで異なる姿になっていますので、いわゆる利益マルチプルの拡大によっても企業価値が増大しました。投資リターン(キャピタルゲイン)は株式価値の差分ですが、実は本件ではそのほとんどが企業価値の向上によってもたらされています。つまりどういうことかと言うと、投資期間中に事業で生み出したキャッシュフローは、純有利子負債の削減に向けるのではなく、どんどん成長投資に回していったというのが大きな特徴です。それだけ資さんという会社のポテンシャルに確信を持てていたわけです。

 本件は、事業承継のシチュエーションを背景に、ポテンシャルのある地域企業・ブランドを全国区へとプロデュースした事例ともいえます。主役である従業員、経営チームだけでなく本当に様々な方に関わっていただき、皆で企業を良くしたわけですが、今回は私が代表してお話しできればと思います」

売上高推移

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