[寄稿]

2022年11月号 337号

(2022/10/12)

事業DDでは見えない深層的な優位性を評価する技術・知財DD

【第2回】技術デューデリジェンスの具体的な進め方

武井 一馬(KPMG FAS シニアマネジャー)
  • A,B,EXコース
はじめに

 第1回では、技術・知財DDが求められる背景について、事業DDの軌跡と技術革新の潮流および企業のイノベーション活動を敷衍しながら解説した。第2回は、「技術DDの全体像」を俯瞰した後、技術DDを構成する「技術動向分析」、「技術ポートフォリオ分析」、「技術優位性分析」の手法および各分析で明らかにする事項について解説する。「技術DDの全体像」では、そもそも技術DDとは何か、どのような構成要素で成り立つかという網羅的な論点について述べる。「技術動向分析」では、技術の普及・代替トレンドを把握するための手法と要諦を説明し、「技術ポートフォリオ分析」で技術動向等に基づく保有技術の分類手法を紹介する。最後に「技術優位性分析」では、技術分類に応じた競争優位性の分析手法を事例と共に解説する。

技術DDの全体像

 読者諸氏が技術DDと聞いて、最初に想起するのが「そもそも技術DDとは何か、そしてどのような目的で行われるものか」ということではないだろうか。結論から述べると、技術DDとは、事業DDで詳らかにする事業性・競争優位性の分析からディープダイブし、深層的な優位・劣位性を決める技術資源を特定することで、事業性評価の解像度を高める分析と定義できる。また、技術DDは、出資後の更なる価値創出に向けた研究開発、調達、設計、生産といったエンジニアリングチェーンに関わる付加価値を具体化する上でも活用できる。

 技術DDは、技術軌道(technology trajectory)の普及・代替における変曲点と潮流を捉える「技術動向分析」、保有技術の位置づけと開発候補技術を明らかにする「技術ポートフォリオ分析」、市場ニーズと技術課題における競合比較を技術諸元レベルで行う「技術優位(劣位)性分析」、そして、差別化を実現する社内外リソース・技術資源を特定する「研究開発体制分析」と「技術資源分析」で構成される(図表1)。

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

スキルアップ講座 M&A用語 マールオンライン コンテンツ一覧 MARR Online 活用ガイド

アクセスランキング