日本では女性エグゼクティブの重要性が強調されつつあるものの、最近、日本企業の社内幹部候補者の人材アセスメントをする際、女性候補者が極めて少ない現実に直面している。私は、性別に関わらず、必要な要件を満たす人材が適切なポジションに就くべきだと考えている。単に女性リーダーの数を増やすだけではなく、要件を満たす人材が等しく登用に向けた機会を得ることが重要である。本稿では、「必要な要件を満たしているにも関わらず、女性リーダーが十分に登用されていないのではないか」という仮説を基に、女性リーダーの登用を促進するための重要な要素を探りたいと思う。
私は、日本企業のM&Aに関連するマネジメントや組織・人事面のコンサルティングを長年行ってきた。その経験から、ポストM&Aにおけるリーダーシップの重要性を痛感しており、女性エグゼクティブが果たす役割は、男性と同等に大きいと感じている。日本企業では、依然として女性役員やCEOの数が少ないが、トップマネジメントに女性が加わることで、多様な視点が経営に採り入れられ、企業業績にも良い影響を与えることがさまざまな研究で示されている。例えば、2023年に発表されたマッキンゼーのレポート(注1)によると、ジェンダー多様性が高い経営チームを持つ企業は、そうでない企業に比べて、財務的に優れた成果を上げる可能性が39%高いことが確認されている。
しかし、日本企業において、なぜ女性役員やCEOがなかなか増えないのだろうか。日本企業の経営幹部や女性リーダーに尋ねると、昇進や登用に関する基準と運用、女性候補者の準備度、組織内外の支援体制といった複合的な要因が浮かび上がる。この中で、昇進・登用に関する基準とその運用は、日本型人材マネジメントの影響を受けた日本企業固有のものであるが、女性候補者側のレディネスや組織内外からのサポート体制については、グローバルで共通の要素があるので、ご紹介したい。
■筆者プロフィール■
島田 圭子(しまだ・けいこ)
ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ・ジャパン・インク マネージングディレクター。CEO/CxOの後継者計画、経営幹部のアセスメント・コーチング、取締役会実効性評価などをリード。ラッセル・レイノルズ入社前は、マーサージャパンにて代表取締役、取締役COO、M&Aコンサルティング部門代表を務める。日本企業のグローバル化やガバナンス体制構築、PE・事業会社の国内外のM&Aに伴うプレからポストディールのガバナンス/経営体制、組織・人事面での支援を一貫してリード。業界は、製造業、ヘルスケア、消費財、テクノロジー、金融と多岐に亘る。青山学院大学国際政治経済学部卒、シカゴ大学経営学修士(MBA)。株式会社ナレルグループ 取締役、監査等委員。