[M&A戦略と会計・税務・財務]

2024年9月号 359号

(2024/08/09)

第204回 実践的な視点から見る財務分析におけるデータモデルとAI利用

團野 良(PwCアドバイザリー合同会社 シニアマネージャー)
  • A,B,EXコース
はじめに

 本稿では、昨今の進化が著しいデータアナリティクスやAIを用いた財務分析のデータ処理プロセスやオペレーションを紹介する。

M&Aにおける財務分析

 財務分析とは、財務三表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)を用いて特定の企業の財務状況を対象(自社の過去実績または一時点における市場または自社グループ会社など)と比較し、その傾向や変動要因を把握して何らかの示唆を導き出すことをいう。

 一般的な財務分析として、財務三表を用いた残高推移分析や財務指標分析が挙げられる。アナリストであれば競合他社とのベンチマーキングや将来予測が主な観点となるであろうし、事業会社の経理担当者であれば自社企業の過去の予算実績差異分析(より詳細な管理会計数値での分析を含む)や事業計画のモデル分析(ドライバー分析)が主要なアプローチとなるであろう。一定規模以上の企業では会計システムや基幹システムを導入し、構造化データ(後述)を前提に、これらの分析結果をシステムから自動で出力したり、決まった帳票で出力されることを前提にあらかじめハードコーディングした別のソフトを用いてシステム外で分析を行ったりしているケースもあるが、多くの場合は表計算ソフトを用いてマニュアルで分析を行っている。

 M&Aにおいては、上記財務三表を用いた基本的な推移分析に加えて、例えば財務DDの際に典型的には正常収益力分析、運転資本分析、純有利子負債分析、設備投資分析などが実施されることが多い。また必要に応じて、売上高明細の数量単価分解、営業費用の変動固定分析、月次運転資本分析、資金繰り分析、為替感応度分析など、財務三表より詳細なデータを用いて分析を行う。

表計算ソフトを用いた伝統的な手法



■筆者プロフィール■
團野 良(だんの・りょう)
シニアマネージャー、PwCアドバイザリー合同会社
専門分野・担当領域 財務DD TMTHセクター
あらた監査法人(当時)入所後、一貫してFPIを含むテクノロジー業界大手企業の会計監査及び内部統制構築支援、IFRSコンバージョン支援、連結決算体制構築支援などに従事。PwCアドバイザリー合同会社に入所後はテクノロジー及びヘルスケア領域でのクロスボーダーM&Aにおける財務DD業務及びSPAアドバイス業務(財務関連)に従事。また、PwCアドバイザリー合同会社内のデジタルチームに所属し、財務領域にとらわれない様々な領域やサービスにおけるデータハンドリング・BIツール活用の助言と推進に従事。PwCオーストラリアへの出向を経験。

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事