[特集インタビュー]

2022年1月号 327号

(2021/12/09)

【矢原史朗社長が語る】パイオニアの再成長戦略

―― ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアの支援で新企業ビジョン実現に手応え

矢原 史朗(パイオニア 代表取締役兼社長執行役員)
北見 啓(ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア プリンシパル)
  • A,B,EXコース
矢原史朗・パイオニア 代表取締役兼社長執行役員(左)と北見啓・ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア プリンシパル

矢原史朗・パイオニア 代表取締役兼社長執行役員(左)と北見啓・ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア プリンシパル


2019年4月にスタートした新生パイオニア

 パイオニアとプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)のベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)が、総額約1020億円の「パイオニア再生プラン」に合意したのは2018年12月。BPEAは770億円を出資するとともに、既存株主から約250億円で株式を買い取り、2019年3月パイオニアは完全子会社化された。

 パイオニアは、主力のカーナビやカーオーディオ事業が、スマートフォン等に押されて業績が低迷。2018年3月期連結決算は最終損益が71億円の赤字(前期は50億円の赤字)と2期連続の赤字に陥り、加えて同年9月末に返済期限を迎える130億円強のシンジケートローン(協調融資)の返済が厳しい状況に追い込まれた。2015年に家庭用AV(音響・映像)機器事業とDJ(Disc Jockey)機器事業、2018年にFA(ファクトリー・オートメーション)事業などを相次いで売却して、車載事業に経営資源の特化を図ったが業績悪化を止められず、BPEA傘下で再生を目指すことになった。

 BPEAは、香港の本社のほか、東京、シンガポール、上海、ムンバイ、シドニー、ロサンゼルス等に拠点を持つアジア最大級のPEファンド。日本ではこれまで、食事クーポン券大手のバークレーヴァウチャーズ、精密金属部品メーカーのラドヴィック、給与計算業務代行業のペイロール、宝飾品小売のプリモ・ジャパン、ホームセンターのジョイフル本田、武州製薬、TRYTなどへの投資実績がある。


2025年に向けた新企業ビジョン

 BPEA支援の下、新生パイオニアは2020年12月に、2025年に向けた新企業ビジョン“未来の移動体験を創ります-Creating the Future of Mobility Experiences”を制定し、新成長戦略としてカーエレクトロニクス事業を柱として、最先端のテクノロジーを活かした市販向け、自動車メーカー向けの車載機に加えて、長年収集してきた膨大なデータをクラウドやAIを活用した自動車保険向けの先進運転支援システムや業務車両の高度な運行管理・支援を行えるサービスなどモビリティ領域におけるさまざまな課題を“モノ×コト”で解決するソリューションサービス企業への変革に取り組んでいる。


デジタル地図事業を売却

 新生パイオニアになってからも、2020年3月にはサイクルスポーツ事業資産の一部をシマノに譲渡するなど事業の選択と集中が進められたが、業界で驚きを持って受け止められたのが、2021年6月に行われたデジタル地図事業を展開する完全子会社「インクリメント・ピー」全事業のポラリス・キャピタル・グループが運営するファンドへの売却だった。同社が手掛けるデジタル地図・位置情報は、カーナビやスマートフォン・SNSなどに欠かせないコンテンツであり、パイオニアにとって収益の柱とも言える“虎の子”と見られていた事業だったからだ。

 新型コロナ禍という厳しい経営環境の中で、新生パイオニアはどのように経営改革を進めてきたのか。インクリメント・ピー売却の真意は。そして、2025年に向けた新企業ビジョンで具体的にどのような成長戦略を描いているのか。新生パイオニアを率いる矢原史朗 代表取締役兼社長執行役員とBPEAの北見啓 プリンシパルに聞いた。

<インタビュー>
新生パイオニアが目指す“新しい移動体験”

 矢原 史朗(パイオニア 代表取締役兼社長執行役員)
 北見 啓(ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア プリンシパル)

2014年から関係構築

―― ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)がパイオニアへの投資を実行した経緯についてお聞かせください。

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