[対談・座談会]

2022年7月号 333号

(2022/06/01)

「企業変革手段としてのM&Aの新潮流 Season2」第1回 [特別対談] パナソニックの企業変革とM&A ~ブルーヨンダー買収後のビジネスモデル変革の要諦

樋口 泰行(パナソニック コネクト 代表取締役 執行役員 社長・CEO) 
松江 英夫(デロイトグループ 執行役 / デロイトトーマツコンサルティング 執行役員 パートナー)
  • A,B,EXコース
※本記事は、M&A専門誌マール 2022年7月号 通巻333号(2022/6/15発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。 
(左から)松江英夫氏、樋口泰行氏

(左から)松江英夫氏、樋口泰行氏

<目次>
  1. はじめに
  2. なぜ、パナソニックに戻ることを決めたのか
    日本企業の変革の現状と課題
    当事者の内からくる変革パワーがないと変わらない
    自己変革できる組織になるには
    経営者のモチベーションをどうやって上げるか
    松下幸之助がつくった会社をつぶしたらあかんぞ
    パナソニックに戻ってくるまでの経緯
    初日の驚き、まったく変わっていなかった
    変革についてくることができない人は人事で示す
    経営戦略を正すのはもっと勇気がいる
    踏み切るよりどころは創業者のいう『素直な心』
  1. 企業変革手段としてのM&Aの活用
    ブルーヨンダーの買収で目指すもの
    長期的にサステナブルなプロフィットが出る事業体に変えて次世代に引き継ぐ
    シナジーは簡単には出ない
    まず、ブルーヨンダーのスタンドアローンとしての価値向上に力を入れる
    ブルーヨンダーを核にしたグロースストラテジー
    ブルーヨンダーへの注力が、パナソニックの企業価値向上に得策
    なぜ、ブルーヨンダーを買収できたのか
  2. ブルーヨンダー買収後のビジネスモデル変革の要諦
    ローカル・ケイパビリティを起点にビジネスをつくる
    日本は差別化できる部分に集中する
    ハードウェアでシェアがあるからこそ現場データが集まる
    海外はM&Aでクオリティの高い足場をつくる
    逆算の方法で成功確率を高める
    組織の融合はしない
    社員に学んでほしいこと
―― デロイトトーマツコンサルティングによる新連載「企業変革手段としてのM&Aの新潮流 Season2」が始まります。前連載「企業変革手段としてのM&Aの新潮流」では、急激な事業環境変化に対し企業がDX、PX、GXといったトランスフォーメーションを「待ったなし」に迫られる中、伝統的なM&Aとは異なる新しいM&A・アライアンスによる変革のポイント・事例を紹介していただきました。新連載では、特に昨今経営者の課題認識が色濃いDX/GXに焦点を当て、ケーススタディを軸に、変革実現に向けてどのようにM&A・アライアンスを活用できるのかを深堀りしていただく予定です。これに先立ち、第1回目は、パナソニック コネクト株式会社 代表取締役 執行役員 社長・CEOの樋口泰行さんをお迎えし、デロイトトーマツグループ 執行役の松江英夫さんと、樋口さんが実践されている企業変革の要諦やそれに基づく日本企業への示唆などについて議論していただきます。

1. はじめに 

松江 「本日は、樋口さんに『パナソニックの企業変革とM&A』というテーマでお話を伺えることを大変楽しみにしています。というのも、樋口さんは、1980年に松下電器産業(現パナソニックグループ)に入社され、その後、日本ヒューレット・パッカード(HP)、ダイエー、日本マイクロソフトのマネジメントを経験されたあと、2017年4月に25年ぶりにパナソニックに戻られ、代表取締役 専務執行役員に就任し、企業変革を進めてこられました。2021年には、総額でおよそ8600億円を投じて、米サプライチェーン領域のソフトウェア企業のブルーヨンダーの買収を成し遂げられています。

 パナソニック本体の構造改革も進んでいます。2022年4月1日に持株会社制に移行され、パナソニック ホールディングス株式会社を含め、9つの株式会社が生まれました。樋口さんはその1つであるパナソニック コネクト株式会社の代表取締役に就任されています」

図表1



2. なぜ、パナソニックに戻ることを決めたのか

日本企業の変革の現状と課題

松江 「『企業変革』はずっと樋口さんの中で軸となるテーマだと思っています。また、企業変革の1つの手段としてのM&Aがあり、それを実践されています。本日はその両面のアングルからお話をお聞きしたいと思っています。

 まず、企業変革についてです。樋口さんは日本企業、外資系企業の両方でマネジメントを経験されてきました。しかも、幅広い業種を経験されながら、古巣のパナソニックに戻られるという非常に稀有な経験をされています。そういうお立場から、日本企業の変革に関する現状・課題をどう捉えておられますか」

樋口 「企業に限らず、どんな組織でも、その組織の構成員が画一的で、それが固定的になったときに不健全化するリスクが高いと思います。チェック・アンド・バランスが効かなければ不健全になるリスクを秘めているということです。日本企業はその画一性が高度成長期にはうまく機能したのですが、その後も意思決定のクオリティというか、組織としての健全性という意味では遅れをとっている状態で、まだ出口が見えない、いい方向に向かう兆しもない、そんな印象をもっています。

 それに似ていますが、

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