[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2022年8月号 334号

(2022/07/11)

第208回 建設業界~受注競争激化の中、地方の未上場有力建設会社はM&Aによって事業基盤を強化

澤田 英之(レコフ 企画管理部 リサーチ担当)
  • A,B,EXコース
1.はじめに

 一般財団法人建設経済研究所が毎年6月に集計・公表している主要建設会社40社の決算分析によると、2021年度の40社営業利益合計は前年同期比24.8%の減益となった。2021年6月に公表された当初の2021年度予想は14.7%の営業減益であり、結果的にはここから大きく下振れる形で着地した。マールオンライン「M&Aでみる日本の産業新地図」(2022年5月号)の「建設業界 ~受注競争激化、資材価格高騰、人材不足で再編必至」では、建設業界が厳しい事業環境に直面している様子が示されており、40社の営業利益実績はこれを裏付ける結果となった。

 事業環境が厳しさを増すとともに、大手建設会社がこれまで関与してこなかった小規模な建設プロジェクトにも積極的に参加するようになり、地方都市の建設会社などとの受注競争は一層激しくなっていると伝えられている。こうした中、未上場の有力建設会社がM&Aで営業エリアや事業領域を拡大しつつ、持株会社形態に移行するケースが目立つようになってきた。

2.未上場の有力建設会社が持株会社に移行した例

■田名部(たなぶ)ホールディングス(青森県八戸市)

 経済産業省東北経済産業局は2022年3月「リーディング企業の取組事例から学ぶ事業承継;東北発M&A事例集」(以下「事例集」)を公表した。これには、M&Aに積極的な東北地方の有力企業9件の概要が紹介されている。

https://www.tohoku.meti.go.jp/s_sancle/topics/220228.html

 この中で青森県八戸市に本社を置く田名部組という建設会社の例が記載されている。同社は田名部智之現代表取締役の祖父である田名部政次郎氏が1924年に創業し、1947年に株式会社化された。1994年度には完成工事高青森県第1位(73億円)となったが、2006年に田名部智之氏が代表取締役に就任した際は、公共工事削減などによって業績は大幅に悪化していた。その後、田名部代表取締役のリーダーシップのもと、「建設業はサービス業」、「公共事業に依存しない体制作り」を宣言し様々な構造改革を実施。その後業績は回復し、現在では売上高70億円(2021年6月期)、グループ売上高120億円の県内有数の総合建設会社となっている。

 事例集によると、

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

スキルアップ講座 M&A用語 マールオンライン コンテンツ一覧 MARR Online 活用ガイド

アクセスランキング