[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2022年12月号 338号

(2022/11/10)

第212回 板ガラス業界 ~ガラスと化学品の事業戦略の違いがM&Aの取り組みを左右

田城 謙一(レコフデータ 編集委員)
  • A,B,EXコース
1.国内市場の動向

 板ガラスは主として建築用や自動車用の窓ガラスなどに広く利用されている。板ガラスメーカーは、溶解窯を持つ生産ラインで板ガラスを製造し、そのまま建築用などに販売するか、あるいは複層ガラスなどの建築用機能ガラスや自動車用ガラスに加工して販売している。

 国内ではAGC、日本板硝子、セントラル硝子の大手3社で9割以上を生産している。

 大手3社の寡占となっている要因としては、ガラス製造は溶解窯などの大規模な設備を必要とし、その新設・維持に多額の資金を要する装置産業であることに加えて、割れやすいというガラスの特性から輸送等が難しく、基本的に地産地消の製品である点が参入障壁となっている。

 一方で、生産量にかかわらず常に溶解窯を高温に保つ必要があるために燃料費がかかる上に、窯工程は一旦稼働すると、機動的に停止や再稼働をすることが難しいことから、需給の変動に応じた柔軟な生産調整が困難であり、製品当たりの固定費負担も重いというコスト構造となっている。また、板ガラスの需要は最終製品の需要動向の影響を受ける。建築用ガラスは、国内経済の成熟化や人口減少に伴う世帯数の減少等の構造的な要因により、国内需要は減少傾向となっている。また、自動車用ガラスも国内の自動車産業に依存する構造であり、国内需要は頭打ちの状況にある。このため、国内板ガラス業界は、3社の寡占状態と言えども競争環境は厳しい。

 実際に日本の板ガラスの生産量の推移をみると、住宅着工や自動車販売の減少を背景に1990年をピークに減少傾向にあり、2021年ではピーク時から4割減少している(図表1参照)。

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