[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2023年1月号 339号

(2022/12/05)

第213回 ホテル業界 ~ステイ許されぬ展開とM&Aの展望~

谷口 直也(レコフ)
  • A,B,EXコース
※本記事は、M&A専門誌マール 2023年1月号 通巻339号(2022/12/15発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。

1. 前書き

 いよいよ大詰めを迎えるFIFAワールドカップカタール大会。筆者も大のサッカーファンであり、前回のロシア大会では、フランスの優勝を予想し的中させている。原稿執筆時点では開幕直前だが、今回のカタール大会では、イングランドの優勝を予想しているので、筆者の予想の行く末も見守っていただければ幸いである。

 本大会の結末に加えて、筆者は代表選手団が宿泊するホテルについても関心を寄せている。フランスサッカー連盟(FFF)によると、前回王者のフランス代表が拠点候補として視野に入れているのが、高級リゾート施設の「アルメシラ」であり、滞在費は1人当たり1泊2500ドル(約35万円)以上ともいわれている。このように、ホテルは訪問客をもてなす窓口として極めて重要な役割を果たしている。

 近年、ホテル宿泊を主目的とした「ステイケーション」という新たな旅行の楽しみ方が浸透してきた一方で、新型コロナウイルス流行後、ホテル業界の動向は目まぐるしく変動しており、まさにステイすることが許されない状況にある。中でも、ホテル業界におけるM&Aは、新型コロナの大打撃を受けたホテル業界の打開策である。この業界のM&Aを今一度整理することが、各プレイヤーがいかにしてコロナ禍の荒波を乗り越えようとしたのかを読み取る鍵になるだろう。

2. ホテル業界について

 本稿では、ホテル業界におけるM&Aについて考察する。旅館業法の改正(注1)により、ホテル業界と旅館業界をひとつの業態として捉える見方もあるが、よりグローバルスタンダードな業態としてのホテル業界に焦点を当てる。改正前の旅館業法において、ホテル営業は、「洋式の構造及び設備を主とする施設を設けてする営業」と定義づけられている。そこで、本稿ではホテル業界を、改正前の旅館業法におけるホテル営業の定義を活用し、「洋室を主とする宿泊施設を営業する企業群が属する業界」と位置付けて議論していく。

 ホテル業界に属する企業は、①宿泊施設を専業とする企業群とそれ以外の、②複数事業を兼業する企業群に区分することができる(図表1)。②は、不動産/デベロッパー・鉄道・その他というように、業態により3つに分類することができる。それぞれの分類の中での主要プレイヤーは図表1の右に記した通りである。不動産/デベロッパー系において、三井不動産の主要ホテルは三井ガーデンホテルズ、三菱地所の主要ホテルはロイヤルパークホテルズや丸の内ホテル、森トラストの主要ホテルはマリオットホテルなどが挙げられる。鉄道系において、西武ホールディングスの主要ホテルはプリンスホテル、東急の主要ホテルは東急ホテルズ、近鉄グループの主要ホテルは都ホテルズ&リゾーツが挙げられる。その他に属する企業群において、共立メンテナンスの主要ホテルはドーミーイン、ロイヤルホールディングスの主要ホテルはリッチモンドホテルが挙げられる。

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