オリンパスの祖業、科学事業部門「エビデント」を約4276億円で取得 2023年4月、Bain Capital Private Equity, LP(そのグループを含み、以下「ベインキャピタル」)は、オリンパスの科学事業部門として位置づけられていた「エビデント」の全株式を約4276億円で取得した。
オリンパスの科学事業は、創業者である山下長氏によって1919年顕微鏡の国産化を目指して設立された高千穂製作所が源で、オリンパスにとっては祖業と言える。代々受け継がれてきた顕微鏡レンズの研磨技術は高く、この技術からデジタルカメラなどの光学事業が派生した。産業用の顕微鏡や工業用内視鏡、非破壊検査装置が、科学事業の主な事業アイテムだ。
オリンパスは、企業変⾰プラン「Transform Olympus」を発表、収益性の高い医療事業に特化して、医療技術でグローバル市場において高い競争力を持つ高収益企業になることを宣言。23年3月期までに営業利益率20%の達成を目指して、消化器科、泌尿器科と呼吸器科などの内視鏡、治療機器に資源を集中するという方針を打ち出し、積極的なM&Aを実行してきている。
事業の選択と集中を進めるうえでデジタルカメラを中心とする映像事業は2021年1月、
プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の日本産業パートナーズに売却された。
次に売却が検討されたのが科学事業だった。2021年12月、科学事業を「エビデント」として分社化。22年4月から新会社としてスタートさせたが、エビデントの全株式を第三者に譲渡する検討を進めていることは、21年12月時点で明らかにされていた。
こうした改革によってオリンパスの2023年3月期の売上高は8819億円と、2022年3月期比で18%増。営業利益は1866億円と同約28%増となり、過去最高を記録。営業利益率も21.2%、調整後営業利益率(その他の収益と費用を除いた営業利益率)も目標の20%を達成した。
エビデントの売却資金によってオリンパスのM&Aを活用した成長戦略はさらに加速することが予想される。
このエビデントを買収したのがベインキャピタルだ。ベインキャピタルは、米国・マサチューセッツ州ボストンに本社を置く独立系PEファンド。2006年に東京オフィスを設立して以来、
日立金属(現プロテリアル)、
Works Human Intelligence、
ニチイ学館、昭和飛行機工業、
東芝メモリ(現キオクシアホールディングス)、
ベルシステム24、
すかいらーくホールディングス、ジュピターショップチャンネル、日本風力開発等約30社の投資実績を持っている。
2022年10月にはベインキャピタルを軸に日本産業パートナーズ(JIP)、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)によって構成された企業コンソーシアム(BCJ-52)で日立化成、日立電線と並ぶ日立グループの「御三家」の一角を占める存在だった日立金属を総額8000億円を超える金額で買収して注目された。
今回のエビデント買収に関して、その経緯と今後の成長戦略を、本件を担当した末包昌司 ベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパン・LLC パートナーに聞いた。
<インタビュー>
経営改善と投資、グローバルな市場開拓による収益向上の余地は大きい
末包 昌司 (ベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパン・LLC パートナー)
提案の確実性と事業価値の向上の実現性を評価
―― 2023年4月、Bain Capital Private Equity, LP(そのグループを含み、以下「ベインキャピタル」)は、オリンパスの科学事業部門として位置づけられていた「エビデント」の全株式を約4276億円で取得しました。今回の買収に至った経緯からお聞かせください。