[M&A戦略と会計・税務・財務]

2023年3月号 341号

(2023/02/09)

第186回 「新しい資本主義」の加速と令和5年度(2023年度)税制改正

荒井 優美子(PwC税理士法人 タックス・ディレクター)
  • A,B,EXコース
1. 「歴史の転換期」における「令和5年度予算案」

 2022年12月23日、過去最大と言われた令和4年度予算(一般会計107兆5964億円)を上回る規模の令和5年度予算案(一般会計114兆3812億円)が閣議決定された。令和5年度予算案は、防衛力の抜本的な強化を目的とした防衛費の増加(対前年比89.4%増)などにより、令和4年度予算より6.3%増の予算を計上し、「歴史の転換期にあって、日本が直面する内外の重要課題の解決に道筋をつけ、未来を切り拓くための予算」と位置付けられている(図表1参照)。具体的には、「新たに策定された国家安全保障戦略等の下での防衛力の抜本的な強化やその裏付けとなる財源の確保、本年4月に新たに設置されるこども家庭庁を司令塔とした、こども・子育て支援の強化、GXの実現に向けた「成長志向型カーボンプライシング」による民間投資を支援する仕組みの創設、デジタル田園都市国家構想の下での地方公共団体のデジタル実装の加速化や地方創生に資する取組への支援など」(注1)が含まれる。

 新たな防衛力整備計画に関する財源確保は、令和5年度に創設予定の財源確保法(仮称)による「防衛力強化資金(仮称)」)の他、決算余剰金の活用、歳出改革、新たな税制措置によるとしている。

【図表1 「令和5年度予算のポイント」】
【図表1 「令和5年度予算のポイント」】

(出所: 財務省ホームぺージ 「令和5年度予算のポイント」)
https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2023/seifuan2023/01.pdf

 第211回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説においても、ロシアによるウクライナ侵略や気候変動問題、感染症対策、不安定で脆弱なサプライチェーン、世界規模でのエネルギー・食料危機、人への投資不足などの、世界が「歴史の転換点」にある今、新たな方向に足を踏み出すことが宣言されている。そして、その第一に防衛力の抜本的強化、次に新しい資本主義の加速、こども・子育て政策、包摂的な経済社会づくり、災害対応・復興支援、新型コロナ対応等が続く。ロシアによるウクライナ侵略は我が国の政策の方向性に大きな転換をもたらし、5年間で43兆円の防衛予算を確保することが目標に設定された。

2. 新しい資本主義の加速に向けた経済政策

 令和5年度税制改正の方向性を定める経済対策は、


■筆者プロフィール■

荒井 優美子

荒井 優美子(あらい・ゆみこ)公認会計士/税理士
コンサルティング会社、監査法人勤務後、米国留学を経てクーパース&ライブランド(現PwC税理士法人)に入所し現在に至る。クロスボーダーの投資案件、組織再編等の分野で税務コンサルティングに従事。2011年よりノレッジセンター業務を行う。日本公認会計士協会 租税調査会(出版部会)、法人税部会委員。一橋大学法学部卒業、コロンビア大学国際公共政策大学院卒業(MIA)、ニューヨーク大学ロースクール卒業(LLM)。

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