[M&A戦略と会計・税務・財務]

2022年12月号 338号

(2022/11/10)

第183回 デジタル経済と国際課税制度の動向

荒井 優美子(PwC税理士法人 タックス・ディレクター)
  • A,B,EXコース
1. はじめに

 経済のデジタル化に対応した、国際的な法人課税の新たなルール(第一の柱:大規模IT企業の所得の市場国への税源配分、第二の柱:最低税率課税)の歴史的合意から15か月後の2022年12月に、第二の柱の最終的なモデル規則がOECDより公表されることが伝えられている。モデル規則は2023年の発効が見込まれており、これを受けて、わが国の令和5年度税制改正で、モデル規則に沿った新たな国際課税制度が導入される模様である。本稿では国際的な法人課税の新たなルールの策定の経緯と概要を解説する。

2. 国際課税の新たなルールについて歴史的な合意

 2021年10月8日、「140カ国・地域が参加する『BEPS包摂的枠組み』会合において、国際課税の新たなルールについて歴史的な合意が実現したことを強く歓迎」し、「日本政府は、2013年のBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの立上げ時から、国際課税改革に関する議論を一貫して主導してきたところであり、100年来続いてきた国際課税原則の見直しが今般、グローバルな枠組みの下で合意されたことを高く評価する。」との財務大臣談話(注1)が公表された。

 この歴史的合意を受けて、マティアス・コーマンOECD事務総長は、「本日の合意により、国際的な課税協定はより公正で機能的なものになる。これは、効果的でバランスのとれた多国間主義にとって大きな勝利である。この合意は、国際的な租税制度をデジタル化されグローバル化した世界経済の中で目的に適ったものにする、広範囲にわたる合意である。この大きな改革を効果的に実施するために、我々は今、迅速かつ真摯に取り組まなければならない」(注2)と述べている。

 BEPS包摂的枠組みとは、


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