[M&Aトピックス]

(2022/12/28)

「パーシャルスピンオフ」制度が実現、制度恒久化に向けた重要な1年に

~事業カーブアウト、大企業発スタートアップへの活用に向けた期待

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税制改正大綱で正式決定

 政府与党が12月16日に取りまとめた税制改正大綱に、スピンオフ税制の拡充が盛り込まれた。具体的には、元親会社に一部の株式持分(20%未満)を残すスピンオフ(パーシャルスピンオフ)において、一定の要件を満たせば株主等に対する課税を繰り延べる特例措置を2023年4月1日から2024年3月31日までの1年間の期限付きの措置として認めた。経済産業省は2023年8月に提出する税制改正要望に、同措置の本則化を要望することを決めており、恒久的な措置として認められるかが今後は注目される。経産省は過去2度にわたりパーシャルスピンオフ制度の創設を税制改正において要望してきたが、まずは1年間の限定措置としてスタートする。

 このほど創設されるパーシャルスピンオフ税制とは何か。元親会社がスピンオフを実施する場合、株主に対する現物配当や、スピンオフ元親会社の譲渡損益に対して課税が生じる。2017年度の税制改正によって実現したスピンオフ税制により、配当や譲渡損益に対する課税を対象外とする措置が講じられた。しかし、スピンオフを行う元親会社に子会社株式を一部残す「パーシャルスピンオフ」の場合は、この税制措置の適用を受けることができない。この制約がスピンオフを行いたい企業のハードルになっている、との指摘があった。

 経産省の調べによれば、大企業が部門を独立させ分社化するにあたっては、一定の資本関係を残したいとのニーズも少なくない。実際には、スピンオフをする子会社は、元親会社との一定の資本関係を維持し、ブランドやシステムを引き続き使う事例が多いためだ。また、対取引先という面でも、メーカーなどでは、顧客からの信頼・取引の維持が重要となるため、「段階的に資本を減らす中で移行するほうが、事業の分離を進めやすい」との意見も聞かれるという。さらに、事業を売却する親会社側の事情としても、スピンオフ後の持分の利益を得たい、という思惑を持つ企業も少なくないため、税制のメリットを得られれば、事業売却をするに当たって好都合となる。

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