1. 2021年のM&A動向
レコフデータの最新の統計(日本企業のM&A 四半期統計(2021年1-9月))によれば、2021年1-9月期の日本企業のM&A件数は3153件と、対前年比で17.0%の増加となり、1-9月期ではこれまで最多だった2019年の3038件を115件上回り、2021年は2019年の4088件を大きく上回る見通しである(図表1参照)。M&Aの形態別内訳は、合併31件、買収1049件、事業譲渡358件、資本参加1554件、出資拡大161件で、「事業譲渡」を除いた形態で増加しており、合併、買収がそれぞれ40.9%、17.9%増加している点が注目される(マールオンライン「M&Aトピックス(2021/10/5)」参照)。
2021年のM&A市場の活発化は世界的な動向であり、①新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けた、戦略の見直しとテクノロジー導入の加速、②経済の不透明感の後退と経営者の景気回復への確信に基づく企業合併・買収(M&A)への意欲の高まり、③低金利即ち低コストの資本へのアクセス等の要因が、M&A活動をこれまで以上に活発化させていると考えられる(注1)。
2021年1-9月の我が国のM&Aを業種別に見た場合、売り手では非製造業が占める割合が6割を超えているのは、コロナ禍で業績が悪化したサービス産業分野での再編の進展が考えられる(図表3参照)が、非製造業が買い手となる場合として、総合商社、電力・ガス、建設などを中心にとした、「脱炭素社会」に向けたM&Aも進展している(マールオンライン「M&Aトピックス(2021/10/5)」参照)。
2. 株式対価M&A税制の概要
(1) 株式交付制度と税制の特例措置
会社法における
株式交付制度(会社法774の2から774の11)の創設に伴い、自社株式を対価として、対象会社株主から対象会社株式を取得するM&Aが一定の要件を満たす場合に、対象会社株主の譲渡損益課税を繰延べる措置(恒久的措置)が令和3年度税制改正により創設された。
株主(法人株主及び個人株主)の課税繰延制度(以下、「本制度」)は、