[Webマール]

(2025/02/06)

【連載】第5回 2025年、M&Aの展望―― 保険業界

樫宿 恵生(ボストン コンサルティング グループ マネージング・ディレクター&パートナー)
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日本の保険会社を取り巻く事業環境は、近年厳しさを増している。保険業界の中でも生命保険は環境の変化が特に大きく、それに伴ってM&Aも活発化すると見込まれる業界だ。本稿では、生命保険業界を例に、経営課題と対応策の方向性を整理したうえで、それらの実現に向けて各社がどのようにM&Aを活用するべきか考察する。
1. 日本の生命保険会社の経営課題

 ここでは、日本の生命保険業界の課題を、市場・規制・競争環境の変化、という3つの側面から概観したい。

 まず、日本の生命保険市場は、人口減少の影響を受けて厳しい状況が続いており、今後も大きな成長を期待することは難しい。生命保険ビジネスの市場規模は基本的に人口動態との関係性が強い。人口減少と少子高齢化が進む日本では事業基盤そのものが縮小することは避けられない。

 加えて、国内外の規制環境の変化も業界に大きな影響を与えている。日本国内では、保険商品の販売に関する規制が強化される方向に進んでいる。特に、顧客保護や市場の健全性を確保するための措置として、生命保険商品の中でも保障(プロテクション)型よりも資産運用型の商品に対して厳しい規制が適用される見込みであり、従来のビジネスモデルを維持することが難しくなってきている。また、グローバルで先行して導入されている経済価値ベースの新しい資本規制が日本においても導入されつつあり、これが日本の生命保険事業の競争環境や収益性にさらなる影響を与えると考えられる。

 さらに、第1回で紹介したテーマでもある業界再編の動きや、新たな競争の芽生えも注目されるべきポイントだ。



■ 筆者履歴

樫宿 恵生(かしじゅく・しげお)

樫宿 恵生(かしじゅく・しげお)
BCGトランザクション&インテグレーションチーム、コーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。慶應義塾大学法学部卒業。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院 & 香港科技大学Executive MBA プログラム修了。グローバルコンサルティングファームを経てBCGに入社。約20年にわたり幅広い業界のM&A支援に携わり、近年は、ポートフォリオ戦略・キャピタルアロケーション、カーブアウト、コーポレート・ベンチャリングなども多く手掛ける。海外に長年駐在した経験があり、クロスボーダーM&Aの支援経験も多数有する。

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