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M&A専門誌マール

2018年02月07日(水)

M&A基礎講座 「事業承継M&Aの法務」

第4回 事業承継M&Aにおける株式に関する法的論点

 高橋 聖(ソシアス総合法律事務所 パートナー 弁護士)

はじめに

  事業承継の対象となるオーナー企業の中には、長年にわたり外部者の関与がなく、実質的にオーナー一族のみによって経営されてきた会社も多く存在します。このような会社においては、株式の管理がオーナーの意向のみによってなされ、株式の発行や譲渡について法令上必要とされる手続が取られていない、又は、法令上作成・保管されなければならない書類が作成又は保管されていないことにより、法律上の株式の帰属先が不明確となっている場合も少なくありません。

  本稿では、事業承継M&Aの際に、上記のような理由から対象会社の株式について問題が生じる代表的なケースをいくつか取り上げ、法的な論点と実務上の対応策について解説したいと思います。

名義株の問題

(1)名義株とは

  多くの事業承継M&Aの対象会社において問題の原因となるのが、いわゆる「名義株」の存在です。名義株とは、一般的には、他人の承諾を得て、その名義を用いて株式の引受又は取得がなされた場合に生じる、形式的な名義上の株主と実質上の株主とが異なる株式のことを指します。

  このような名義株は、その動機の適法性・妥当性はともあれ、実務上、主に以下のような理由から生じることが多いところです。
 

平成2年改正前の商法では、会社設立に際して少なくとも7名の発起人が必要とされていたため、会社設立のために発起人として他人の名義を借用するという実務が行われていた。
真の株主が、何らかの理由で、債権者、税務当局等の第三者との関係において自らが株主であることを秘匿したい場合。
将来発生し得る相続等を見越して、オーナーが、予め自らの後継者候補を名義上の株主とする場合。


  オーナー企業の中には、平成2年の改正商法が施行される前に設立された会社も散見され、また、株主構成も含めた企業統治に外部者が関与していないため、上記②や③を理由とした名義上と実質上の株主との間に齟齬が見られることも少なくなく、一般的な会社と比較して、名義株の存在が問題となる頻度が高いと思われます。

(2)名義株がある場合に生じる問題

  M&Aにおける対象会社の株式に名義株が存在する場合、名義株について他人の名義を借用しているオーナー株主(名義借用者=実質上の株主)が、名義株も含めて自らが保有する対象会社株式を売却しようとする際に、名義株について自己の名義をオーナー株主に貸与した者(名義貸与者=名義上の株主)が、自分が真の株主であることを主張し、売却に異議を唱えたり、売却代金の支払を要求するという事態が生じることがあります。

  特に、事業承継M&Aにおける対象会社の場合には…

 

■筆者略歴
高橋聖(たかはし・きよし)
1993年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。株式会社リクルート勤務を経て、1999年より弁護士としてTMI総合法律事務所にて、主にM&A、国際取引、一般企業法務等を取り扱う。2015年にソシアス総合法律事務所を開設し、現在は、事業承継案件を中心に、多数の非上場会社売却案件に売手・買手のリーガルアドバイザーとして関与している。
University of Virginia School of LawにてLL.M.(法学修士号)取得。第一東京弁護士会所属弁護士・米国ニューヨーク州弁護士。

 

 

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