はじめに
第5回までは、ビジネスDDにおける分析の観点や留意点について解説してきました。第6回では、それら分析を踏まえた事業計画の策定、DD等のエグゼキューションの先にある
PMIに向けビジネスDDで実施すべきことについて解説していきたいと思います。
(1)ビジネスDDにおける事業計画の位置づけ
まずは、ビジネスDDにおける事業計画の位置づけについて解説したいと思います。ビジネスDDでは、一般的には
EBITDAまでのPLについて事業計画を策定することが多く、それはバリュエーションを行う上でのインプットとなります。言及するまでもなく、その重要性は非常に高いです。そのため、第5回までで解説したような分析内容が漏れなく織り込まれている必要がありますし、策定された事業計画の前提条件を十分に説明できる必要もあります。また、ビジネスDDでは対象会社が策定した事業計画を基に、修正を加えていくアプローチを取るケースが多いですが、対象会社(セルサイド)とのバリュエーションに対する認識の違いを理解するうえでも、重要なインプットとなります。
なお、確かにビジネスDDではPLにフォーカスすることが多いものの、場合によってはFDD(財務DD)チームとも連携しながら、BS・CFについても確認をしておく必要があります。例えば、対象会社がベンチャー企業であり先行投資を未だ続けていくような段階、業績が悪化しており資金繰りに懸念が見られるような場合です。これらのようなケースでは、PLのみならずBS・CFも見ておくことが必要になります。
ビジネスDDにおける事業計画は、(
第1回でも言及がありましたが)
スタンドアローン、シナジーの2つの観点から策定していきます。スタンドアローンでは、ビジネスDDの分析結果を織り込むのは当然ながら、シナジーの想定効果額についても事業計画に織り込むことが重要です。筆者の経験では、事業計画を保守的に策定しようとするあまり、シナジー定量化に十分なリソースを割かないケースが多いように思います。実行しようとしているディールによって得られる果実は何か、そのバリューを定量化することこそが、そのディールを評価する上で最も重要なはずです。
(2)事業計画策定の概要
それでは、策定プロセスを中心に事業計画策定の概要について解説したいと思います。ビジネスDDで策定する事業計画…
■筆者履歴高橋 正幸(たかはし まさゆき)PwCアドバイザリー合同会社ディールズストラテジー&オペレーション、シニアアソシエイト。慶應義塾大学卒業後、大手自動車部品メーカーを経て現職。クロスボーダーを含む多様な業界におけるビジネスデューデリジェンスの経験を有する。他にも、構造改革支援、統合(PMI)支援、事業戦略立案支援、組織設計・ガバナンス設計支援など幅広いコンサルティングを実施。