[産業構造の変化に対応するM&Aの実務]
2013年6月号 224号
(2013/05/15)
リース、クレジットカード、ファイナンスなどの金融関連事業は、銀行の再編に伴って、M&Aによる統合・再編の歴史を辿ってきました。その過程の中で銀行系、商社系、独立系などの企業グループに集約されつつあります。金融関連市場は、リーマンショックや規制の改正を境として大きく変化しました。金融関連企業は産業構造の変化の中で、M&Aの課題にどのように対応していくべきでしょうか、また、アドバイザーとしての役割は何でしょうか。
1. はじめに
金融関連事業は、ここ数年で大きな産業構造の変化に直面してきました。M&Aによる統合・再編を経て、グループの系列化や企業の集約を進めてきた歴史があります。その背景には市場規模の縮小、リーマンショック、当局による規制の強化など、厳しい環境の変化がありました。
ノンバンクと言われるリース、事業者金融、消費者金融に加えて、信販、クレジットカードなど、金融関連事業の領域は幅広いのですが、多くの領域で市場は低迷しています。その一方で、インターネット、ATM、携帯電話を利用した資金決済サービスは市場を拡大しています。
金融の周辺領域において、新しく生まれた事業はどのようなものがあるでしょうか、規制や市場の変化で衰退した事業は何でしょうか、情報通信の発達は金融関連事業にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
産業再編が進む中、金融関連事業の一部は、成長のシナリオを描くのが難しい事業もあります。このような状況下で、事業経営の方向性をどのように描いていくのでしょうか。
まず、リース事業のM&Aによる外部成長の流れとして、海外の新しい市場や事業の獲得、M&Aによる統合・再編を通じた規模の拡大について検討してみましょう。また、M&Aの実務の課題及びアドバイザーの役割についても考えてみます。
2. リース業界のM&Aによる外部成長
(1) 海外の新しい市場や事業を獲得
<背景>
ここ数年、最も話題になったM&Aは、メガバンク・グループによる欧米の航空機リース事業の大型買収案件です。欧米の有力金融機関から、数千億円規模のリース事業を買収し、既存顧客や海外市場を獲得することで、ビジネスの成長を目指すM&Aの取り組みです。
これらの案件は、投資金額も大きく、賃貸事業やリース資産を購入するため、グループ連結での収益や資産構成に影響を及ぼします。航空機リースの仕組みは多様で賃貸期間も長く、航空機の国籍や利用場所が複数の国に渡ることから、各国の税制やリース会計の取り扱いが異なるため、十分な検討が必要となります。
<M&Aの課題>
金融庁の定めるグループ経営管理態勢の中で、グループガバナンスや内部統制は、日本の本社主導で子会社の管理を行うことが求められています。そのため、従来の企業買収では、あまり焦点が当たっていなかったガバナンス体制や金融庁のグループ管理態勢の枠組みを理解した上で、M&Aに取り組む必要があります。
日本と海外の金融機関では、リスク管理態勢、顧客保護や情報管理に関する考え方が異なるため、これらの課題を十分に事前に検討しておく必要があります。銀行系の企業グループにとって、海外リース事業を取り込むことは、為替変動やリスクアセットなど、グループ経営に新たなリスクを取り込むことになります。
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