日本製鉄のUSスチール買収計画を米大統領が阻止するという意外なニュースで始まった2025年だが、企業業績が伸び悩むなか、株式相場がM&A相場の色彩を濃くしていくことは間違いない。ただ、個別案件では最終合意前の破談、買い付け価格の引き下げ、
PMIの失敗といったリスクがあり、一筋縄ではいかないことに注意が必要だ。
「与党株主」減少が後押し
2024年の日本企業のM&A件数が過去最高になったが、背景には投資ファンドの積極的な行動があるとされる。投資ファンドが上場企業の株式を取得するのは、遅かれ早かれ転売して利益を確保するためで、そのためには適切な価格でまとまった株式を入手できることが不可欠だ。
株式持ち合いなど政策投資の解消に合わせて、企業は自社株買いを進めているが、それでも吸収できない分は流通株式となり、投資ファンドが取得しやすくなっている。図表1は現在の東証プライム上場企業について、外国人投資家の株式保有比率別に企業の割合がどう変化してきたかを1998年度末までさかのぼって示している。
■ 筆者履歴

前田 昌孝(まえだ・まさたか)
1957年生まれ。79年東京大学教養学部教養学科卒、日本経済新聞社入社。産業部、神戸支社を経て84年に証券部に配属。97年から証券市場を担当する編集委員。この間、米国ワシントン支局記者(91~94年)、日本経済研究センター主任研究員(2010~13年)なども務めた。日経編集委員時代には日経電子版のコラム「マーケット反射鏡」を毎週執筆したほか、日経ヴェリタスにも定期コラムを掲載。22年1月退職後、合同会社マーケットエッセンシャルを設立し、週刊のニュースレター「今週のマーケットエッセンシャル」や月刊の電子書籍「月刊マーケットエッセンシャル」を発行している。ほかに、『企業会計』(中央経済社)や『月刊資本市場』(資本市場研究会)に定期寄稿。