[対談・座談会]
2015年9月号 251号
(2015/08/17)
-- ダイキン工業によるOYLインダストリーズの買収は、同じ2006年に公表されたJTによるガラハーの買収、東芝によるウエスチングハウスの買収などと並んで、日本企業が本格的な攻めの海外M&Aに乗り出したことを象徴するような案件でした。しかし、このOYL買収は、ダイキン工業の井上礼之会長が1994年に社長に就任されて以来掲げる「空調グローバル・ナンバーワン」を目指すという中長期の大きな戦略の下で行なってきた、中国への合弁による進出、ヨーロッパの販売体制強化のためのM&Aを経て実現したものであり、中長期にわたる成長戦略を実行し続けた賜物と言えます。そして、さらに12年にはグッドマン買収を実現するなど、着々と手を打っています。
本日は、ダイキン工業のグローバル人材グループ長の中川雅之様にご参加頂き、デロイト トーマツ コンサルティング パートナーの松江英夫様との対談をお願いしました。ダイキン工業のPMIの実際について語っていただきながら、海外M&AにおけるPMI成功のポイントについて議論をお願いします。それではご挨拶と自己紹介から・・・・・・。
自己紹介
松江 「デロイト トーマツ コンサルティングの松江です。本日は、わたくしの著書『クロスボーダーM&A成功戦略』でもPMIの成功事例として取り上げさせて頂いた、ダイキン工業のPMIの実際のところのお話をお伺いできるということで、大変楽しみにしております」
中川 「ダイキン工業(以下、ダイキン)の中川です。80年の入社ですが、初めの半年弱の研修期間を除いて、約35年間、ずっと人事の仕事をしています。初めの約10年間は、労務担当として労働組合の窓口をしていました。それ以降も、主に労務政策や制度を担当し、特に、人事処遇制度・報酬制度には今も全般的に関わっています。いわゆる春闘の交渉には33回、第一線で関わりました。海外M&Aに関わったのは06年のOYLインダストリーズ(以下、OYL)の案件からで、それから約10年になります。英語も中国語も十分にはできませんので、負け惜しみのように聞こえるかもしれませんが、人事は文化や人の感情を相手にする仕事ですので、本来は母国語レベルの語学力が必要で、生半可な語学力で無理をすると、誤解などから大きなリスクになる可能性があります。そういう無理をするよりは、ダイキンの人事の考え方を尺度にして、買収先の制度や幹部報酬を評価し、会社としてのメッセージをきちっと伝えていくことの方が大事だと思っています。
なお、本日は、全世界に拠点を持つグローバル企業であり、ダイキンのグローバル戦略の要となったOYLの買収とそのPMIを中心に、人事に長年携わってきた視点からお話したいと思います。 それから、取締役会長の井上礼之は、社長時代の1999年と2000年に関西経済同友会の代表幹事を務めましたが、その際、私は事務局スタッフの仕事をしました。その頃の関西財界は安全保障や沖縄問題に取り組み、いろいろと発信していましたので、人事の仕事をしながら、例えば、元米国務副長官のリチャード・アーミテイジ氏にヒアリングしたり、米国際政治学者のジョゼフ・ナイ氏や『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者のエズラ・ヴォーゲル氏とのディスカッションに同席するなど、超一流の方々のグローバルな思考に触れることができました。人事とは全くの異分野の物差しでグローバルにものを考えることを体験したことも、今、非常に役に立っています。少し変わった人事屋です(笑)」
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