[マール最新号]
買収対象会社が有するデータ・情報を活用した定量分析の有用性について 有料記事です

山下 哲生(PwCアドバイザリー合同会社 M&Aトランザクション モデリング&バリューコンサルティング ディレクター)
小川 健二(PwCアドバイザリー合同会社 M&Aトランザクション モデリング&バリューコンサルティング マネージャー)

1.はじめに
企業の成長戦略の重要な手段として企業買収が近年活況を呈しているなかで、当初期待していた買収シナジー効果が実現されず、買収後わずか数年で多額の減損損失を計上する事例も散見されるようになった。そのような事例が現れるなかで買収対象会社(以下「対象会社」)の企業価値向上に資するコーポレートガバナンス体制の在り方への関心の高まりを感じる。
買い手が対象会社に対してコーポレートガバナンスを十分機能させるためには、対象会社の経営状況を可視化できる仕組みを構築することが重要であるが、その第一歩として、買い手は対象会社が保有するあらゆるデータ・情報を買収直後に入手することが必要不可欠であると考える。なぜなら、買収直後の早い段階から対象会社の経営・事業戦略をセグメントレベルで企業価値創造の視点で定量的に可視化できるからである。

マール最新号

特集

M&A関連法制と実務の最新動向[2017年版]
2017年12月号 278号(2017/11/15発売)

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第1回  株式譲渡契約の構造と論点(1)

[M&A基礎講座 「事業承継M&Aの法務」]
第1回 株式譲渡契約の構造と論点(1)

 高橋 聖(ソシアス総合法律事務所 パートナー 弁護士)
はじめに   近畿経済産業局のまとめによれば、後継者不足による中小企業の廃業が進み、関西だけでも2025年頃までに約118万人の雇用と約4兆円の域内総生産が失われる見込みであるとのことであり、ますますの社会の高齢化が進む中、中小企業の円滑な事業承継が喫緊の課題であることが改めて浮き彫りになりました。   本連載では、中小企業が長年にわたって築いてきた事業価値を損なうことなく、その技術・ノウハウや雇用を円滑に承継し、日本経済全体の発展に生かしていくための手法として注目される事業承継M&Aに焦点をあて、M&Aに携わる弁護士の立場から、その法務面でのポイントについてできる限り分かりやすく解説します。   本連載は、全6回の予定ですが、第1回及び第2回は、事業承継M&Aにおいて最も重要となる契約である株式譲渡契約について解説し、第3回はオーナー企業の売却にあたって問題となる法的論点、第4回は事業承継M&Aにおける株式にまつわる論点、第5回では事業承継M&Aの際に実施される法務デューディリジェンス、第6回では中小企業における株主の整理や集約について検討していきたいと思います。 事業承継M&Aの手法   いわゆるM&Aが行われる場合の手法としては様々なものが存在しますが、主な手法とその概要・特徴を以下の表に整理しています。なお、以下、本連載では、買手となる会社を「買手会社」、売却の対象となる会社を「対象会社」、対象会社の株主を「売手」と表記します。また、以下の表では、各手法について、比較対照の便宜上、典型的な例を念頭に各事項を記載しておりますので、実際には、会社や取引の規模・形態等によって必要となる手続等が異なることがある点はご留意ください。   事業承継M&Aは、①対象会社がオーナー企業であるため、株主(売手)の数が少なく、相対取引に適していること、②事業承継が目的であるため、売手であるオーナー株主はM&Aの実施によって対象会社の全株式を売り切って対価を取得することを望んでおり、その後に対象会社の株式を保有し続ける意向がないことが多いこと、③対象会社が非上場会社であることが多いこと等の特性を有しています。このような特性から、事業承継M&Aにおいては、手続的に負担が多い合併・株式交換、売手が対象会社の株主として残存したり、対価の支払先が売手とならない第三者割当増資や事業譲渡等ではなく、買手会社が売手から対象会社の株式を直接に買い取る、いわゆる相対での株式譲渡の手法が用いられることが圧倒的に多いのが実情です。 株式譲渡取引の進められ方   一般的な株式譲渡取引は、以下のチャートに記載するようなステップを踏んで進められることになります。   まず、売手・買手双方において… ■筆者略歴 高橋聖(たかはし・きよし) 1993年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。株式会社リクルート勤務を経て、1999年より弁護士としてTMI総合法律事務所にて、主にM&A、国際取引、一般企業法務等を取り扱う。2015年にソシアス総合法律事務所を開設し、現在は、事業承継案件を中心に、多数の非上場会社売却案件に売手・買手のリーガルアドバイザーとして関与している。 University of Virginia School of LawにてLL.M.(法学修士号)取得。第一東京弁護士会所属弁護士・米国ニューヨーク州弁護士。    

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CFO待望論~深刻なCFO不足の背景~

[視点]
CFO待望論~深刻なCFO不足の背景~ 有料記事です

 谷口 学(公認会計士 / 立命館大学大学院 経営管理研究科 教授)
  日本版スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの公表によって、日本企業は機関投資家との適切な対話やステークホルダーに対する説明責任の充実が一層高いレベルで求められている。コーポレートガバナンス・コードは、リスクやガバナンスといったいわゆる「守り」の側面が強調されることが多い。しかし同コードの基本原則を読むと、そのような「守り」の情報開示と同列に、経営戦略や経営課題という、言うならば「攻め」の情報開示に積極的に取り組むべきことが盛り込まれている。   いくらCEOが企業の進む方向性を知っているといえども、それを時系列に会計数値化して示さなければ説明責任を十分に果たしたことにはならない。企業経営は不確実性の中を飛び続けることが宿命である。だからこそ将来の経営戦略は合理的な根拠のもとに策定される必要があり、その合理性を高める重要な要素の一つが会計的思考である。言うまでもなく過去の業績、企業のいま、そして企業が描く将来像は一つの時間軸でつながっている。現代のCFOは、CEOの傍で経理・財務機能を統括し、さらに会計数値を駆使して将来の経営戦略を説得的に構築することが重要な職務である。   現代企業において、このような会計と経営戦略をつなぐCFOの役割は、将来の会社の浮沈を左右する。経営環境が著しく変化する中で、自社の状況を客観的に掴み取り、信頼性の高い会計情報を基に経営戦略を立案する。必要とあれば重大なパラダイムシフトも辞さない経営姿勢。それを背面から支える会計データと問題解決のプロセス。その立案と実行を担う強力なCFOの存在は、これからの企業成長に不可欠な経営人材である。

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[座談会] ベンチャー企業のイグジット戦略~現状と課題

[対談・座談会]
[座談会] ベンチャー企業のイグジット戦略~現状と課題 有料記事です

【出席者】(五十音順)
 宇壽山 図南(東京証券取引所 上場推進部課長)
 仮屋薗 聡一(グロービス・キャピタル・パートナーズ マネージング・パートナー、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会会長)
 久保田 朋彦(GCA マーケティングオフィサー、アンプリア 代表取締役)
 渡辺 洋行(B Dash Ventures 代表取締役社長)(司会)

ベンチャー企業へのM&Aが急拡大する中で ―― アベノミクスが打ち出した「第4次産業革命」による成長戦略では、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ロボットという3つの新技術をドライバーとした産業全体の構造変化の促進が打ち出されました。この第4次産業革命ではベンチャー企業も重要な役割を担うものとして期待される中で、弊誌では2016年8月号で「モノづくり」ベンチャー、「大学発」ベンチャーに焦点を当て、「ベンチャービジネスの新潮流」について座談会を開きました。   今回はベンチャーエコサイクル確立の要ともいえるベンチャー企業のイグジットに焦点を当てて、東京証券取引所の上場推進をご担当の宇壽山(うずやま)さん、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)会長の仮屋薗さん、M&AアドバイザーであるGCAの久保田さんに「ベンチャー企業のイグジット戦略」についてお話し合いをいただきます。なお、座談会のモデレーター役を日本ベンチャーキャピタル協会の理事も務めておられるB Dash Ventures(BDV)の渡辺洋行社長にお願いいたします。 渡辺 「最近の日本のベンチャー企業のイグジット動向、つまりIPOとM&Aですけども、その動向を振り返りながら、現状どういう課題があるのか、さらに今後日本のベンチャーエコシステムを確立していくためにどのような戦略が取られるべきなのかを議論したいと思います。   まず、ベンチャー企業に対する投資金額について見ておきたいのですが、一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの『ベンチャー白書2016』によると、米国が群を抜いていまして、特に15年は過去5年間で最高額の7兆円超。米国に次いでベンチャー投資が活発なのは中国で、米国と同様15年は2.5兆円と最高額を記録しています。15年で比較すると、日本のベンチャー投資の金額は約1300億円ですから米国の2%にも及ばない状況となっています。   次に、M&Aについて見ますと、月刊『MARR』を発行しているレコフデータの集計では、16年に日本企業が関連したベンチャー企業へのIN-IN、IN-OUT、OUT-INのM&Aが急拡大していて、446件で前年比145件、48.1%の大幅増加となっています(図表1参照)。12年の88件と比較すると、この5年間で5倍に拡大したことになります。また、金額は全体で5942億円で、15年の4676億円から27.0%増加となって14年の6279億円に次ぐ高水準となっています。(図表2参照)。   このうち、日本のベンチャー企業に対するM&A(IN-IN、OUT-INの合計)を見ると347件で、前年の226件から53.5%増加。金額は1025億円で、前年の1355億円から24.3%減少したものの、2年連続での1000億円台乗せとなっています」 日米ベンチャー企業のイグジットの違い 渡辺 「以上のような数字をふまえて、久保田さんから日本と米国のイグジットの違いについてお話しいただけますか」 久保田 「米国では、VCの投資先であるスタートアップ企業の90%以上がM&Aによるイグジットです。なぜかというと、バリュエーション500億円以下の会社はIPOが難しいということがあると思います。いわゆるドットコムバブルやリーマンショック等を経て、上場審査が厳格化されたことに加えて、上場に関連した管理コスト等を考えると、公開企業になるためには、500億円くらいの規模が必要だということです。また、機関投資家が、規模の大きい上場会社にしか投資をしなくなっているという傾向も影響しています。スタートアップ企業からすると、IPOをしても流動性がなければ、上場する意味がありません。その一方で、プライベート(未上場)のキャピタルマーケットが発展し、大規模な資金調達が可能になってきています。その結果、VCなどから投資を受けた企業が、投資家の期待利回りで規定される期間内に、この上場規模に成長しない場合の選択肢として、M&Aによるイグジットというケースが多くなっているのだと見ています」 渡辺 「宇壽山さん、日本のベンチャー企業のIPO動向について簡単にご説明いただけますか」 宇壽山 「ご存じのとおり、12年後半以降、株価が非常に堅調に推移しているということもあって、15年で国内のIPOが98社、16年も86社ということで80社を超える高水準となっています。それからIPOの規模ですが、14年から16年の3年間にマザーズ市場のIPO企業では、上場初値時価総額を見るとその中央値はおよそ100億円くらい、上場初値時価総額によるPERで80~90倍というところで非常に高い数字になっています」 渡辺 「リーマンショックが起こった08年当時と比較してどうですか?」 宇壽山 「暦年ベースで国内の年間IPO企業数の一番の底がリーマンショックの翌年の09年で、その時点で19社でした。それが最近の3年間を見ましても、年に80社を超えるような水準になっていまして、09年と比べて4~5倍になっています。   それに加えて、ステップアップする企業が非常に増えています。いわゆるマザーズ市場やジャスダック市場から市場第二部(東証二部)、市場第一部(東証一部)へのステップアップです。IPOのピークは15年の98社ですが、同年にステップアップした会社が141社、16年はIPOが86社に対してステッアップが115社とかなり高水準で推移していまして、単にIPOして終わりというところではなくて、さらにその上の市場を目指している企業が増えているというのが特徴と言っていいと思います」…

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[座談会] 敵対的企業買収の到達点と今後の課題

[対談・座談会]
[座談会] 敵対的企業買収の到達点と今後の課題 ― 企業価値報告書、買収防衛策指針から10年、日本が進むべき道 有料記事です

 神田 秀樹(東京大学 教授)
 岩倉 正和(西村あさひ法律事務所 弁護士、一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授)
 石綿 学(森・濱田松本法律事務所 弁護士)
 司会・編集 川端 久雄(編集委員、日本記者クラブ会員)

<はじめに>   2005年は日本のM&Aにとって記念すべき激動の年でした。まず、ライブドアによるニッポン放送への市場買付けによる敵対的買収で幕を開けました。この事件を巡る司法判断があり、その後、経済産業省・企業価値研究会の報告書、同省と法務省の買収防衛策指針、会社法成立といった制度面での進展がありました。さらに、上場企業同士の初の公開買付け(TOB)による敵対的買収も行われました。2015年はそれからちょうど10年の節目の年になります。   この間、日本企業にも米国を参考にした事前警告型の防衛策が浸透する一方、相変わらず高い安定株主比率を維持する企業も見受けられます。TOBによる敵対的買収は王子製紙などが挑戦しましたが、敵対的買収と呼ぶのに相応しい案件はあまり成立していません。上場企業同士では1件だけです。逆に、投資会社などが制度の穴を突いて、敵対的TOBの足を引っ張るような動きもみられます。経営に規律を与えるという敵対的買収の本来の機能が日本では生かされていないようです。   ところで、最近は、日本経済の再興のため日本企業に対して、経営の規律を求める声が一段と高まってきています。会社法改正で社外取締役の強化が図られたほか、コーポレートガバナンス・コードも導入されます。こうした状況を踏まえると、もう一度、経営に規律を与える敵対的買収の意義を考えてみる必要があるように思われます。日本の敵対的買収の状況はどうなっているのか。今の状況は良いのか、良くないのか。良くないとしたら、制度などを改善する必要があるのか。日本の企業買収法制は、2005年の防衛策指針の策定、翌年の公開買付規制の改正で一応、形を整えていますが、どちらも当時、緊急に整備を図ったものと言われていました。その後、英国など欧州法制の研究も進み、防衛策の原則禁止と強制公開買付制度を中心とする英国型を支持する見解も有力に主張されています。   本日は、日本の企業買収法制をリードされてこられた神田秀樹教授、実務で敵対的買収の攻防などを担当された岩倉正和弁護士、石綿学弁護士にお集まりいただきました。この10年を振り返りながら、今後の日本の買収法制のあり方について議論をしていただきます。

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M&Aに潜む不正リスクとデューデリジェンスの限界

[寄稿・寄稿フォーラム]
M&Aに潜む不正リスクとデューデリジェンスの限界 有料記事です

 真木 靖人(デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー フォレンジックサービス ヴァイスプレジデント)
はじめに   M&Aを行う際に、買い手企業は、通常短期間の間にデューデリジェンス(以下、DDという)を通して被買収会社のビジネスや組織等に内在するリスクを把握し、買収するか否かの意思決定を行わなければならない。その結果、基本的に買い手企業側が様々なリスクを負うことが多い。そのため、買い手企業は、買収を検討する初期段階から、想定されるリスクを洗い出し、適切な意思決定が行われるように準備をしておくことが重要である。   DDには、その調査範囲・対象の違いから、ビジネスDD、財務DD、税務DD、法務DD等がある。近年、M&Aにおける被買収会社に潜む不正リスクについて、たびたび報道されたこともあり、日本でもDDにおいて不正リスクを考慮することがより一般化しつつある。特に海外案件の場合、現地国の社会環境、経済環境、商習慣、法規制等が日本と異なることから、より複雑な問題に対応することが求められ、買い手企業のリスクも相対的に高まる傾向にあり、不正DDの必要性は高いと考えられる。

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No.159 『贈与と売買の混在する交換』の著者が語る中小企業M&Aの特徴

[マールインタビュー]
No.159 『贈与と売買の混在する交換』の著者が語る中小企業M&Aの特徴 有料記事です

 古瀬 公博(武蔵大学 准教授)
「譲渡不可能性」という視点 -- 著書のなかで、中小企業は譲渡不可能性が強い財だと先生は仰っています。譲渡不可能性とはどういうことですか。    「譲渡不可能性とは自分と所有物との間に強い関係があって、自分から切り離せない状態を示す概念です。英語ではinalienabilityと言います。人間から奪うことができない権利(不可譲の権利)という場合もこの言葉を使います。人類学の領域では、所有者とものとの間に密接な関係があって、所有権を他者に完全に譲渡するのが難しい状態を譲渡不可能性と言っています。未開社会では、ものに霊魂が込められていると信じられてきました。こうしたものを他者に譲渡する場合、売買でなく贈与で行われます。所有者にとって重要な存在であるものを売買の対象にすると、自分の尊厳を傷つけますし、ものの価値を貶めることになります。現代においても、個人にとって重要な意味を持つものは売買してはならないという価値観が存在します。家族が残した形見の品や人体の一部である血液や臓器もそうです。これら譲渡不可能な財の交換は贈与の形態で行われ、親族や友人など紐帯が強い相手との間で行われます。したがって、譲渡不可能性という言葉には贈与はできるけれど、売買の対象にはなりにくい、というニュアンスが込められています。しかし、このような譲渡不可能な財であっても市場経済が進展するなかで、売買の対象になる機会が増えてきています。その場合も、通常の市場取引とは異なる形で行われます」 -- 中小企業はどの点で譲渡不可能性が強いのですか。    「中小企業はオーナー経営者が自ら設立し、数十年にわたり手塩にかけて育て上げた会社です。自分の存在そのもの、わが子のようになっていて、自分から切り離せません。この状態を理論的に表現するために、あえて譲渡不可能性という概念を使うことにしました」 -- このような性質が中小企業M&Aを特徴的なものにしているわけですか。    「ええ、そうです。現在、オーナー経営者の方々の多くが後継者が見つからず、苦しんでいます。会社を清算するか、売却するか。清算すると、事業や雇用は維持されません。その点で経済厚生的には、別の会社に売却して事業と雇用を引き継ぐのが望ましいのですが、会社を売ることに対しては社会的なマイナスイメージもありますし、後ろめたさや葛藤が伴います。売ることへの抵抗感というのは、譲渡不可能な財の取引に共通する問題です。この観点から研究し、主にオーナー経営者の視点に立ちながら、取引のプロセスやメカニズムの特徴を解明することで、中小企業M&Aの円滑化に貢献できるのではと考えました」 -- どのような特徴が解明されたのですか。    「中小企業のM&Aには贈与と売買の要素が混在しています。中小企業M&Aは、もちろん市場取引ではあるのですが、そこに贈与の要素を見ることができます。オーナー経営者の方々は『会社を売ること』に抵抗がありますので、より人格的な、より人間的な「贈与」の要素を加えることで、取引が円滑に進んでいきます。仲介会社の方々は『売る』という言葉よりも『譲る』という言葉を使われます。ここには通常の財の売り買いとは異なるものとして、中小企業M&Aを取り扱おうという配慮が見られます。オーナー経営者の方々が抱える『売る』ことへの葛藤に配慮しつつも、市場取引としての公正性を保つことに注意を払いながら、仲介会社の方々は取引を進めていると私は理解しています」

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第3部 「PMI」

[「M&A入門」~M&A戦略立案からPMIまで~]
第3部 「PMI」 第9回「セカンドPMI」

 飯塚 洋平(プライスウォーターハウスクーパース マーバルパートナーズ(現PwCアドバイザリー合同会社) シニアアソシエイト)
はじめに  「5年前に買収した子会社とのシナジー効果が全く出ていない。人材流出を恐れて、これまであまりうるさく言わないようにしてきたが、今や経営の実態すら正確に把握できていない」  「7年前に合併したのだが、未だに旧社意識が抜けない。旧D・旧Sといった、旧社名の頭文字で互いを呼んでいる。何とかならないだろうか・・・」  これらは、M&Aを経験した多くの日本企業におけるPMIの実態です。  M&Aをクロージングさせてから数年経つものの、当初の狙い通りにPMIが進んでいないケースは、残念ながら極めて多いと言わざるを得ません。子会社や相手との間に大きな溝ができているので、今さら良好な関係を築こうとしても、両者の間に横たわる深いわだかまりを何とかしないと、もはや手がつけられない状態になっているのです。  ところが、ここ数年、この状況に大きな変化が起きています。  「ウチは同床異夢」と自嘲気味に語ってきた企業が「今後ますます厳しくなる業界環境の中で、このように社内がゴタゴタしていたのでは・・・   ■ プライスウォーターハウスクーパース マーバルパートナーズ株式会社 ■筆者経歴 飯塚洋平(いいづか ようへい) プライスウォーターハウスクーパース マーバルパートナーズ株式会社、シニアアソシエイト。早稲田大学政治経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパース株式会社に入社し、主に人事・チェンジマネジメントに係るコンサルティングに従事。その後アビームM&Aコンサルティング会社(現プライスウォーターハウスクーパース マーバルパートナーズ株式会社)に参画。現在は事業戦略策定支援、M&A戦略策定支援、M&A後の再成長支援を中心に幅広いコンサルティングを実施。  

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ダイドードリンコ

[データファイル [注目企業のM&A戦略を追う]]
ダイドードリンコ 業界再編が進む中、独自のビジネスモデルで事業拡大を目指す

1.寡占化する清涼飲料市場  清涼飲料は成熟市場と言われているものの、国内出荷額はここ数年微増で推移している(図表1)。近年猛暑が続いていることに加えて、食品メーカーによる商品ラインアップの拡充、スーパー、ドラッグストア等による価格の引き下げ、また、コンビニエンスストアなどでのPB商品取り扱いといった企業努力が一定の成果を生んできたと考えられる。  スーパー、コンビニ等に並ぶもう一つの主要な販売チャネルは自動販売機(以下、自販機。)である。チャネルとしては約3割を占めているが、スーパー、コンビニの飲料販売拡大やコンビニ店頭での出来立てコーヒーなどの普及もありその割合は低下傾向。2000年代、国内自販機普及台数はほぼ横ばいの約250万台(文末注1参照)で推移してきたと伝えられている。  しかし、メーカー側からみれば小売りからの値下げ圧力を受けにくく、無人で営業でき、設置に広いスペースは不要である。消費者の目線でいえば24時間、ワンタッチで商品を購入でき利便性が高い。最近では、災害支援型自販機やAED(自動体外式除細動器)付帯・搭載の自販機などといった社会貢献の側面を持つものも現れた。チャネルとしての割合が低下したとはいえ、自販機の特徴を考えれば飲料メーカーにとって依然として重要な販路であろう。  これまで、清涼飲料業界では代表的な大型M&Aとして、2012年のアサヒグループホールディングスによる味の素子会社のカルピス買収、2015年のサントリー食品インターナショナルによるジャパンビバレッジホールディングス等JT子会社の買収があった。アサヒは2001年に子会社のアサヒ飲料がカルピスと清涼飲料を扱う自販機での相互販売契約を締結しており、2008年には自販機事業を統合していた。サントリー食品インターナショナルが買収したジャパンビバレッジホールディングスは、自販機事業を主要事業としていた。買収の目的の一つは自販機がチャネルとして重要である反面、飽和状態と言われていることに鑑み、一層の効率化、規模拡大による投資資金の確保などを図ることであった。  これにより、国内清涼飲料市場は2強と言われるコカ・コーラグループとサントリー食品インターナショナルで約5割のシェア(販売数量ベース)を占め、これにアサヒ飲料、キリンビバレッジ、伊藤園までを含めると計5社で約85%と伝えられており、寡占状態になっている。残りの約15%にはポッカサッポロフード&ビバレッジ、大塚製薬、ダイドードリンコなどが含まれる。 2.再編から距離を置くダイドードリンコ~事業概要と今後の経営方針~  大手メーカーと比べて売り上げ規模は小さいものの、経営統合やこれを前提とした資本・業務提携から距離を置いているのがダイドードリンコである。同社の祖業は配置薬業であった。1956年に設立された大同薬品工業として事業をスタートし、その後、ドリンク剤の販売などを手がけるようになった。そして、1973年に、当時運転手に眠気覚ましとして人気を集めた缶コーヒー事業に参入した。この清涼飲料販売事業が収益の第2の柱となり始めたことを機に、1975年には同事業を分社化してダイドー(現ダイドードリンコ)を設立。現在では同社の主力事業となっている。さらに、HOTとCOLDが同時販売できる自販機の登場を機に、自販機事業に参入した。2012年に入るとフルーツデザートゼリー市場シェアNo.1のたらみ(長崎市)を買収してグループの第3の柱とし、現在に至っている。  ダイドードリンコの2016年1月期の売上高は1499億円、当期純利益は23億円だった。現在、売上高構成を「飲料販売」、「飲料受託製造」「食品製造販売」の3部門に分類している(図表2)。  中核事業である「飲料販売」の売上高は1242億円と、全体の83%を占める。うち、売上の約85%は自販機によるもので、商品別ではコーヒー飲料が57%を占める。自社工場を持たないファブレス体制で、生産を外部の協力工場に全て委託しており、物流もアウトソーシングしている。  「飲料受託製造」は売上高85億円。全額出資子会社の大同薬品工業(奈良県葛城市)がドリンク剤の研究、開発、製造に取り組み…  

2017年1-11月のM&A件数と金額

2017.11.30現在 集計

  IN-IN IN-OUT OUT-IN 合計
件数 (件) 1,920 608 180 2,708
増加率 16.8% 6.9% -2.2% 13.0%
金額 (億円) 20,134

63,090

36,347 119,572
増加率 -37.3%

-24.9%

42.9% -15.5%

 *2016年1-12月の日本企業のM&A動向は、こちら

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