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[座談会] M&Aにおける第三者委員会の現状と課題

[対談・座談会]
[座談会] M&Aにおける第三者委員会の現状と課題 有料記事です

 岡 俊子(株式会社岡&カンパニー 代表取締役)
 白井 正和(同志社大学法学部 准教授(現教授))
 仁科 秀隆(中村・角田・松本法律事務所 弁護士)(司会)(五十音順)

はじめに 自己紹介 仁科 「今日は『M&Aにおける第三者委員会の現状と今後の課題』と題して、座談会をさせていただきます。2015年6月に、我々3人で共同執筆した『M&Aにおける第三者委員会の理論と実務(商事法務)(以下「本書」という)。』が上梓されてから、約2年が経過しましたが、この間、第三者委員会についての実務が集積され、かつ第三者委員会の在り方や実務に一定の影響を与えるであろう最高裁の決定や社外取締役の定着があったことを踏まえて、議論をアップデートする趣旨でお集まりいただきました。本書は、レコフグループが協賛しているM&Aフォーラム賞の2016年の正賞(RECOF賞)を頂いたのですが、その内容を踏まえながら、今後、M&Aにおける第三者委員会がどうあるべきかに踏み込んで議論ができればと思っています。まず、自己紹介と書籍の執筆部分の概要についてお願いします」 白井 「同志社大学の白井です。商法、中でも会社法の分野を中心に研究・教育に従事しています。本書の最大の特徴は、実際に第三者委員会の委員として活動している実務家と法学研究者との共著という点にあると考えていますが、私の役割は、法理論的な観点から、企業買収の場面における第三者委員会の機能を整理し、提言するということで、第1章『第三者委員会に期待される機能』の執筆を担当しました。   具体的には、まず総論部分として、構造的な利益相反関係のある企業買収の場面においてなぜ第三者委員会の設置が必要となるのか、そうした場面で第三者委員会に期待される役割とは何か、他の利益相反回避措置との違いは何かといった点を、企業買収の場面一般における判断権限の分配構造の観点から考察しました。その後で、各論部分では、MBOや支配株主による少数株主の締出しの場面における現在の法規制および裁判例の内容を紹介し、最後に、第三者委員会の有効性に関する評価基準について、主として米国法からの示唆を得ながら分析・検討しました」 仁科 「弁護士の仁科です。私は企業法務全般、特にM&Aを中心とした弁護士の職務に従事しています。本書では、第2章『第三者委員会に関する実務』で、実際に第三者委員会の委員を努めた経験を踏まえて、第三者委員会がどのように組成され、何をどのように審議し、答申書をどうまとめるのか、といった実務プロセスを時系列でまとめました。第三者委員会の委員を委嘱された人、あるいは第三者委員会を組成する必要が生じた企業の方々の役に立つように意識して執筆したつもりです。ただ、本書全体の特徴という意味では、私と岡さんが第2章・第3章で執筆した実務の部分もさることながら、理論的に第三者委員会はそもそもどう在るべきか、何をやる必要があるのかという、執筆当時は日本ではまだあまり議論されていなかった第三者委員会の行動規範について、第1章で白井先生に執筆頂いた点が非常に大きかったと思います」 岡 「岡&カンパニーの岡です。半年前までは、組織の中でM&Aコンサルティングの仕事をやっていました。具体的には、M&A戦略の立案や、バリュエーションやアドバイザーなどです。今は、個人事務所である岡&カンパニーで、M&Aや経営に関するコンサルティングをやりながら、上場会社4社で社外取締役または社外監査役をやっています。また、大学の非常勤講師として、M&Aを実践的視点から教えています。   私は第3章『取引条件の公正性の検証』を担当しました。取引の公正性が最も問われるのは、取引条件、特に『価格』です。例えば、MBOの場合は、少数株主の利益を図る役割を担うべき取締役が買い手となるため、買い手として安く買いたいという誘惑に晒される。価格こそが人の欲望への感応度が最も高いところですから、第三者委員会の役割の中でも、価格を中心とした取引条件の公正性の検証が重要になります。本書では、具体的には、第三者委員会が財務アドバイザー(FA)や第三者算定機関によるバリュエーション(企業価値評価)に基づく『株式価値算定書』や『フェアネスオピニオン』を活用して、いかに判断するか。その実務などについて執筆しました」 第三者委員会の委員の選任から答申までの実務上の論点 仁科 「本書の概要は以上ですが、中身を逐一ご紹介するわけにはいきませんので、第三者委員会の組成から答申に至る実務の流れの中で、第三者委員会が具体的にどういう活動をするのか、何が論点かについて、簡単に紹介したいと思います。   そもそも、第三者委員会は、MBOや支配株主とのM&Aといった、利益相反構造にあるM&A取引における利益相反回避措置の1つで、他の回避措置に比べても、より強力で独立性の高い存在として位置づけられるわけですが、これをどういう場合に組成すべきか、組成の望ましいタイミングはいつにすべきか、委員会にどんな役割を期待すべきか、そしてその委員の人選はどう在るべきか、などが実務上の主なポイントです。第三者委員会はどういう場合に組成すべきかについては、平成19年の経済産業省のいわゆる『MBO指針』を受け、MBOによる非上場化案件のような典型的な利益相反構造のあるM&Aに限らず、親子上場解消(親会社による上場子会社の非公開化)などの支配株主によるM&Aも対象にすべきではないかといった議論があり、役割については、第三者委員会に何を諮問するのか、買い手との交渉まで委ねるのかという点には特に議論があるところです。そして委員の人選も大事なトピックです。本書執筆当時に比べると、社外取締役を導入する上場会社の割合が大幅に増えましたので、その変化をとらえ、一歩踏み込んだ議論ができればと思っております。それから、委員会の審議の内容も重要です。当然のことながら、企業価値の向上に質するM&Aでなければ第三者委員会として賛成できないわけですが、企業価値の向上といっても抽象的です。実務として具体的に何を審議・確認すべきなのか。また、企業価値の向上というマクロの視点と共に、ミクロの視点で言えば、各株主にとって公正な対価が支払われる必要があるというのも多言を要しないところですが、そこでいう公正な対価とは何か。これらマクロの視点とミクロの視点を踏まえて、最終的に東証の上場規則が求めている『少数株主にとって不利益でない』旨の意見を第三者委員会が具申するために、委員会として何を確認すればいいかが実務上は重要です。そして最後に、いかに答申書としてまとめるかの実務です。   本書ではこうした実務プロセスを時系列にまとめたわけですが、例えばビジネスの世界で経営をされてきた社外取締役や社外監査役の方が急に委員を頼まれると、何をどうしてよいか分からない。そういう方々のための実務ハンドブックになればと思っています」 意外と大変な人選 岡 「まず、実務家として最近最も感じている点をご紹介したいと思います。その一つは、第三者委員会の委員の人選が難しいという問題です。私自身も、少し前に委員を依頼されましたが、その時はビッグ4のある会計事務所グループに所属していましたので、コンフリクトチェックで引き受けられなかった経験があります。第三者委員会の委員にとって不可欠ともいえる法務や会計・税務・財務の知見・スキルを持っている人は、法律事務所や会計事務所あるいはFAファームに属している場合が多く、事務所として何らか別の案件で関わっていると、利益相反が問われてしまいます。第三者委員の委員候補人材マーケットは意外と小さいように思います。   それから、答申書の作成に関してですが、ちゃんと委員自らの手で答申書を作成しているかについても気になっています。レピュテーションを重視する大企業の場合は、名のある大物の先生に委員になってほしいとおっしゃいます。しかしそういう方の多くは、『手が動かない』。答申書を書く作業は、誰かほかの人にやってもらうことを前提としているのでは?と感じることがあります。会社、そしてFAは、答申書の作成を含めて、どういうバックグラウンドやスキルをもった委員の組み合わせの委員会がいいか、組成段階でよく考えたほうがよいと思います」 仁科 「私も、その点は実感しています。有名な人だと、社内の稟議も通りやすいのでそうなるのかもしれません。まさに組み合わせが大事で、そういう有名人だけで組成してしまうと、後で困ってしまうことがあり得る。これは、M&Aに限らず、不祥事系の第三者委員会でも同じようなことが言えるのですが」 白井 「なるほど。第三者委員会の委員候補の人材マーケットが意外と小さいこともあり、また実働部隊として実際に動いてもらう人が必要でもあり、人選は色々と難しいのですね」 第1 第三者委員会に関連する制度の最近の動向 1.ジェイコム事件最高裁決定のインパクト (1)最高裁決定前の判例の情勢 仁科 「第三者委員会に関連する制度の最近の動向として重要なのは、2016年7月1日に出たジェイコム事件の最高裁決定でして、同決定は、これまでの第三者委員会の実務に大きなインパクトを与える可能性が高いと思われます。そこで、最高裁決定で何が変わったのかを確認する意味で、この最高裁決定までの間に出た最近の判例について、白井先生に簡単にまとめていただきたいと思います」 白井 「本書の執筆が終わった2015年1月以降、ジェイコム事件の最高裁決定までの間に出された裁判例の中で特に言及すべきものとしては、東宝不動産事件の地裁・高裁決定(東京地決平成27年3月25日金融・商事判例1467号34頁・東京高決平成28年3月28日金融・商事判例1491号32頁)と、ジェイコム事件の地裁・高裁決定(東京地決平成27年3月4日金融・商事判例1465号42頁・東京高決平成27年10月14日金融・商事判例1497号17頁)が挙げられます。   これら4つの裁判例に共通する特徴は、公開買付け前置型の構造的な利益相反があるキャッシュ・アウトの事案において、公開買付け(TOB)の時点からキャッシュ・アウトの効力発生時点までの間に株式市場全体が高騰した場合に、裁判所は、株式市場全体の高騰を勘案した補正を行い、たとえ公開買付価格の算定手続において意思決定過程の恣意性を排除するための十分な措置がとられていたとしても、補正を踏まえた公開買付価格よりも高い価格をもって『公正な価格』と決定すべきかどうかが争われたという点です。東宝不動産事件の地裁決定とジェイコム事件の地裁・高裁決定はこのような補正を認めたのに対し、東宝不動産事件の高裁決定はこのような補正を否定していて、下級審裁判例において判断が大きく分かれていました。   学説上は、このような補正を認めると、株主が機会主義的な行動をとる可能性があることなどを理由に、補正に反対する見解が多数だったと思います。すなわち、このような補正を認めてしまうと、とりあえずは少数株主は、キャッシュ・アウトを実施するための株主総会決議、例えば全部取得条項付種類株式の全部取得の決議に反対しておいて、その後、取得価格決定の申立期限までの間に株式市場全体の相場が大きく上昇し、それに伴って、公開買付価格を上回る価格を裁判所が『公正な価格』として決定してくれると期待できるようになった場合には、株式取得価格の決定を申し立てることによって、いわばリスクのない投機をすることが可能になるという問題が指摘されていました」 仁科 「実務的には、一段階目の公開買付け(TOB)に対して対象会社の取締役会が賛同意見や応募推奨意見を表明するに際して、二段階目に行われる非公開化の取引まで包含した1つのM&Aと捉え、これに対して第三者委員会が、当該M&Aが『少数株主に不利益でない』旨の答申をするのが普通です。ところが、この取引に対してその後のマーケットの事情を斟酌して裁判所が価格を補正するようなことが続くと、第三者委員会はそのような傾向を踏まえても『少数株主に不利益でない』旨を答申できるのか。将来価格が裁判所によって補正される前提で価格の妥当性を考えなければならないとすると、第三者委員会は不可能に近いことを強いられることになるので、賛同に躊躇するようなケースもありそうで悩ましいと思っていたところです」

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【第5回】 成長性分析・総合評価

[円谷先生のM&A基礎講座 [財務分析入門]]
【第5回】 成長性分析・総合評価

 円谷 昭一(一橋大学大学院商学研究科 准教授)
 本連載では、「財務分析入門」と題して7回にわたって連載します。これまで安全性、効率性、収益性の分析方法を解説しました。第5回は成長性の分析に触れた後に、総合評価と財務諸表の入手方法について紹介します。 成長性分析  第1回では財務諸表分析を船の航跡に例えました。船は瞬間で大きく転舵することはできませんので、航跡を見ることでその船が進んでいくであろう未来の道筋をある程度想像することができます。財務諸表分析とは、「すでに起きた未来」の分析だと言えるかもしれません。過去の変化の延長線上に未来があるとすれば、過去の変化の分析こそが将来の分析なのです。  成長性分析でもっともポピュラーなのが趨勢表です。以下はある会社の趨勢表です。10年前の水準を「1」とし、各項目(ここでは売上高、営業利益、総資産、純資産)がどのように変化してきたかを示しています。この会社の場合、資産の伸びに対して売上高や営業利益の伸びが追いついていない状況です。成長ステージにあり、積極的な設備投資を行っているからかもしれません。    このように趨勢表を作ることで企業のこれまでの成長過程を浮き彫りにすることができます。この延長線上にその会社の未来が待っているはずです。これが成長性の基本的な分析方法となります。 総合評価(ウォールの指数法)  これまで安全性、効率性、収益性、成長性と説明をしてきました。最後のステップは総合評価です。結局のところ、その会社の総合評価はどうなのか、ということです。伊藤邦雄『新・現代会計入門 第2版』(日本経済新聞出版社)の終章では、総合評価としてアレキサンダー・ウォールが考案した指数法(以下、ウォール指数法)が紹介されています。ここでは同書に準拠してこのウォール指数法を説明しましょう。  ウォール指数法では総合評価のために取り上げる指標として以下の7つの比率を採用しており、それぞれの項目にウェイト付けをしています。採用されている7つの比率について、まずは標準比率を求めます。標準比率としては業界平均値を用いるのがごく一般的です。たとえばA社の流動比率が200%だったとしましょう。A社の所属する業界の平均的な流動比率が150%だったとすると、A社の相対的な流動比率の(業界内での)優位性は200÷150=1.33と計算されます。流動比率のウェイトは「25」ですので、これに1.33を掛けるとA社の流動比率のスコアは33.33と計算されます。同様に他の6つの比率についてもA社のスコアを計算し、最後にそれらを合計して総合スコアを計算します。この総合スコアが100であれば…   ■筆者プロフィール■ 円谷 昭一(つむらや・しょういち) 一橋大学大学院 商学研究科 准教授。2001年一橋大学商学部卒業。06年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了、博士(商学)取得。埼玉大学経済学部准教授を経て、11年より現 職。経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ-企業と投資家の望ましい関係構築を考える-」委員、「企業会計とディスクロージャーの合理化に向 けた調査研究」委員などを歴任。日本IR協議会客員研究員。主な論文に「機関投資家ファンダメンタルズと株主総会投票行動の関連性(月刊資本市場2016 年9月)」、「IFRSの任意適用が経営者業績予想の精度に与える影響(會計2016年6月)」など。 ※詳しい経歴はこちら    

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プロフェッショナルによる業界・業種特化型の投資会社

[M&Aの現場から]
プロフェッショナルによる業界・業種特化型の投資会社

ACA 社長 東 明浩
ACAは、2005年4月アント・キャピタル・パートナーズ(旧日興アントファクトリー株式会社)の100%子会社として設立された。その後、06年9月メディア・キャピタル・パートナーズが設立され、08年6月第三者割当増資を実施し、住友商事株式会社が資本参加。08年12月メディア・キャピタル・パートナーズを吸収合併。09年8月商号をアント・コーポレートアドバイザリーからACAに変更した。株主構成は、住友商事39%、アント・キャピタル・パートナーズ16%、役職員45%となっている。 「当社は、ケアビジネスやメディア・コンテンツといった特定業種や特定ニーズに特化した投資事業組合の運営、M&Aアドバイザリー、有価証券の流動化支援や経営支援に関するコンサルティング等の事業を展開しています」と語るのは、東(あずま)明浩社長。 東氏は、1961年9月生まれ。東京大学医学部を卒業して86年リクルートに入社。本社及び子会社ファーストファイナンスの財務部、経理部、経営企画部、新事業準備室で、グループの経営戦略及び財務戦略に従事。経営管理部門企画グループマネージャーとして、雑誌媒体やポータルサイトの金融チャネルなどのマルチメディアによる金融機関の営業支援サービスの企画に携わる。2000年1月ウイット・キャピタル証券に入社。マーケティング担当ディレクターを経て、インベストメントバンキング部門にて株式公開支援、M&Aアドバイザリー業務に従事。02年日興アントファクトリーに転じ、主にM&A、プライベート・エクイティ投資に携わり、05年4月より現職。09年10月よりCSKホールディングスの代表取締役会長を兼任している。 同社のスタッフは20人。ヘルスケア・チーム、メディア・チーム、戦略投資チームの3つのチームを組んでおり、投資事業としては上場株式ファンド(ANT Globa lPartners Japan Strategic Fund Ⅰ<アドバイザー>、ACAグロース1号投資事業有限責任組合)、業界特化型ファンド(アント・ケアビジネス1号、2号投資事業有限責任組合、MCP・シナジー1号投資事業有限責任組合)、OEMファンド(アント・DBJ投資事業有限責任組合)の運用等を行っている。

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オークション理論とM&A

[寄稿・寄稿フォーラム]
オークション理論とM&A - 日本企業はなぜ高値掴みをしてしまうのか? “勝者の呪い”に陥らないために - 有料記事です

 マール企業価値研究グループ
  総合電機メーカーの東芝は、2016年3月期決算において、10年前に約5400億円で買収した米ウェスチングハウスを含む原子力事業で約2600億円の減損計上を迫られた。持続的な成長を目指し、成熟する日本から世界市場に活路を見出すIn-OutのM&Aは、グローバル化を図る日本企業の成長戦略の一つとして定着してきたが、製薬業界や食品業界など、後に多額の減損を強いられ、M&Aが価値創造に寄与していない例も少なくない。買収後の統合(PMI)がうまくいかなかったり、想定外の事態が発生したりするなど、案件ごとに失敗の理由はさまざまであろうが、そもそも高く買いすぎたことも一因に違いない。特に、売り手主導型のオークションで競り勝った案件ほど、高値掴みの傾向があると思われる。   本稿では、ミクロ経済学のオークション理論を用いて、買い手が高値掴みをしてしまう理論的背景を考察するとともに、M&Aオークションにおいて買い手や売り手がとるべき合理的な行動についても考えてみたい。M&Aの遂行は決して目的ではなく、M&Aを通じた株主価値創造こそが重要であることを忘れてはならず、本稿が“勝者の呪い(Winner’s Curse)”に陥らないための行動指針となれば幸いである。 1. オークション方式の類型   Yahoo!やeBayなどのオンライン型オークションも広く普及し、オークションは個人にとっても身近な存在になってきたが、先ず始めに、オークション方式の代表的な4つの類型について簡単にまとめてみたい。

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[PEファンドのトップに投資戦略を聞く③]カーブアウトと事業承継案件を主な投資ターゲットに

[特集・特別インタビュー]
[PEファンドのトップに投資戦略を聞く③]カーブアウトと事業承継案件を主な投資ターゲットに 有料記事です

 佐々木 康二(東京海上キャピタル 取締役社長・マネージングパートナー)
  500億円のファンドを最終クローズ -- このほど、TMCAP2016ファンドを総額517億円で最終クローズしました。東京海上キャピタルとしては5号目のファンド設立ですね。 「1998年の投資事業有限責任組合法施行後、初めてのファンド設立となった『TMCAP98投資事業有限責任組合(以下TMCAP98)』(組成金額37億円:清算済み)の運営開始以来、『TMCAP2000』(同223億円:清算済み)、『TMCAP2005』(同326億円:清算済み)、『TMCAP2011』(同233億円:投資期間終了、運用中)と順調に投資実績を積み重ねて、今般5号ファンドとなるTMCAP2016をファンド総額517億円で立ち上げました。本ファンドは昨年10月21日に291億円でファーストクローズした後、多様な機関投資家や年金基金等への追加募集を継続してまいりました。この結果、コミットメント累計額が当初のファンド目標額500億円を上回る517億円余となったため、当初想定を半年ほど早めて17年4月5日をもって募集を終了することにしました」 地方銀行との長期的な連携を図る -- これまでのファンド規模を見ますと、前回のTMCAP2011ファンドは、その前のTMCAP2005ファンドと比べても約100億円募集金額が少なくなっていますが、やはりリーマンショックの影響が大きかったということですか。 「リーマンショックは大きな影響がありました。リーマンショックを受けて、米国の金融規制改革法(ドッド・フランク法)の中核となる『銀行の市場取引規制ルール』、いわゆるボルカールールが10年夏に成立しました*。ボルカールールの基本理念は、金融システムの安定を図るために、預金を通じて資金調達を行う商業銀行は、顧客のためになる場合を除き、投機的投資の実施が制限されるべきというものでしたし、成立後も適用範囲や解釈が明確でなかったことから、銀行ばかりでなく保険会社、年金基金もファンドへの出資については慎重にならざるを得なかったのです。   さらに、11年には東日本大震災がありましたし、デフレ脱却の先が見えない経済環境の中でのファンドレイズでしたから大変でした。当社としては、ファンド規模は急激ではなく着実に拡大させたいので、本来であればTMCAP2005の326億円の後のTMCAP2011では当初400億円規模を想定していたのですが、それは望むべくもなかったのです。ただ、逆にファンド規模が小さくなったことを逆手にとって、現場では投資方針や投資戦術も変化させ、従来のカーブアウト主体から比較的中・小型のファミリー企業への投資案件に集中的に取り組み、実績を積み上げることができたので、振り返ってみればTMCAP2011で規模の面でいったんしゃがんだのもよかったと思っています。このように中期的な観点で当社のファンドレイズを見ていただくと、TMCAP2016の規模は、過去のスムーズな拡大の延長線上にあることがご理解いただけると思います」 *オバマ米大統領の呼びかけにより、ポール・ボルカー元米連邦準備理事会(FRB)議長が提唱。15年7月21日より全面適用されている。17年2月米国のトランプ大統領は、俗にいう「ボルカールールの撤廃」という大統領令 にサインした。  -- TMCAP2016はファンド総額517億円ということで、順調に資金が集まったということですが、出資先でこれまでとは違った傾向はありますか。 「LPとしては、年金が投資家数も金額も大きく増えて全体の2割を超えたということ、また従来からメガバンク含む全国型銀行、地方銀行、信託銀行といった金融機関は当社のファンドの主力投資家ですが、今回はとりわけ地方銀行から評価頂き3割を超えた点が新しい傾向です」 -- 地方銀行は、日銀のマイナス金利政策によって預貸金利ざやが縮小し、17年3月期決算で本業のもうけを示す実質業務純益を見ても、地銀20行・グループのうち18行・グループが前期に比べ減益となっています。貸し出し競争が激しさを増している中で、収益構造の転換が急がれていますが、そうした背景もあるのでしょうね。 「当社は地銀とは親密な関係を構築していまして、これまでのファンドでも10行程度は出資いただいていました。それがTMCAP2016では17行に増えていますから、地銀の関心は確かに高くなっているということが言えると思います。   地銀の関心が高まっている理由は2つあると思いま。一つは・・・

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【第3回】 いわゆる100日プランとは ―― 投資直後の3~6か月の改革

[「M&A基礎講座」 ~PEファンドの役割と企業価値向上の実際~]
【第3回】 いわゆる100日プランとは ―― 投資直後の3~6か月の改革

 富岡 隆臣(カーライル・ジャパン・エルエルシー マネージング ディレクター)
 渡辺 雄介(カーライル・ジャパン・エルエルシー ディレクター)

 第1回では、PEファンドの役割、第2回では、事業会社のPEファンドの協働意義及びPEファンドの付加価値について述べたが、当第3回においては、PEファンドの企業投資後の最重要な時期ともいえる100日における活動について触れてみたいと思う。 1.100日プランとその重要性  トランプ政権が現在進めているように、米国新政権はすべて100日プランを作成・実施している。同様に、新たな企業オーナーのもとでの最初の100日は、極めて重要である。投資直後は変化の起点である。投資直後には、経営陣・従業員をはじめ、顧客も含めたすべてのステークホルダーが不安と期待でいっぱいの状態で、PEファンドならびに、PEファンドとの第二創業を意思決定した企業トップの一挙手一投足を注目している。彼らは半信半疑で、何がどのように変わるのか、今後の方向性を冷静に見極めようとしている。こうした状況で第二創業の主役となる経営陣・従業員との間で戦略・ビジョンを共有し、具体的なアクションプランに落とし込んでいくのが100日プランである。  100日プランにおいては、第二創業における会社の企業理念(ミッション)を確認し、社員に対して10年後に向かうべき星(ビジョン)と戦略・アクションの大きな方向性を語り掛けることが重要になる。そして、戦略を具体的なアクションプランにし、そのために必要な組織を定義し、不足している人材を補強していくことになる。以下は、一般的な100日プランのメニューである。 ● コーポレート・アイデンティティー再定義     ミッション・ビジョンの確認・再定義と社内コミュニケーション ● 「見える化」=財務会計・管理会計・PDCA(Plan計画 Do実行 Check評価 Action改善)   サイクルの整備     リアルタイムでの財務数値、管理数値(KPI)の把握     KPIの定義、設定、捕捉     見える化を促進するためのITシステムの整備 ● 中期経営計画・予算策定     事業計画の再確認または策定と具体的なアクションプランの策定 ● 具体的なビジネス課題への対応     海外展開強化     営業管理強化     マーケティング強化     生産性改善     コスト削減 ● ガバナンスの整備=経営と執行の分離     取締役会・評価報酬委員会等の整備     経営会議等、会議体の整備     権限規程等の整備 ● 組織強化     戦略に沿った組織変革と組織毎の役割の定義     必要な人材補強・採用 ● 評価・報酬・インセンティブ設計     成果主義の報酬体系の導入     直接出資・持株会・ストックオプションの導入  100日プランのメニューを考えていくうえでいくつか重要なことがある。1つ目は、10年後のミッション・ビジョンから逆算して、戦略やアクションを考え、100日プランのメニューを絞り込んでいくということである。得てして、企業には課題が大小様々に多岐に渡り、その解決の難易度も千差万別である。すべてに取り組んでいては、いくらヒト・モノ・カネ・トキというリソース(資源)があっても足りない。結果的にどの取り組みも中途半端になり、成果も上げられず、経営陣・従業員を疲れさせてしまうだろう。そうなっては第二創業の精神からして、本末転倒である。リソースは常に限定されているので、100日プランにおいては、5年後、10年後を見据えて、課題とアクションの洗い出しと優先順位を付け、そこに注力した取り組みを行っていくことが重要である。「戦略とは何をやらないかを決めること」とよく言われるゆえんである。  2つ目に重要なことは、①何を(WHAT)、②誰が(WHO)、③いつまでに(by WHEN)やるのかを明確にすることである。  ①WHATとは、100日後のアウトプットを具体的に明確にすることである。アウトプットは、主にa)課題を洗い出すもの、b)アクションプランを練り上げるもの、c)最終的な結果を出すもの、の3種類がある。  ②WHOとは、誰が責任者であるのかを明確にすることである。会社主導で進めるプロジェクト、PEファンド主導で進めるプロジェクト、協働で主導するプロジェクトかを規定し、具体的な固有名詞で責任者を決め、WHATのアウトプットに対する責任を明確化することが重要となる。そして、興味深いのは、そうすることで、100日プランに参画している経営陣・従業員の能力がよく見えるようになり、また、次世代経営陣候補の若手の潜在力を引き出すことが可能となることである。弊社の投資先では、この100日プランを通して、それまでは埋もれていたにもかかわらず、頭角を現した次世代リーダーは数多く存在する。  ③by WHENとは、期日とマイルストーンとその時までのアウトプットを定義し、常にPDCAサイクルを回し、状況を確認し、次までのアクションを決めていくことである。こうすることで、実行されずに放置されるプロジェクトがなくなっていき、100日プランの成功確率は高まっていく。  3つ目に重要なことは、小さくてよいので成果をあげていくこと(Small Win)である。人は、成果を出すことで自信をつけ、モチベーションをあげ、さらなる高みに上るべくつぎなるチャレンジをしていく。100日プランには、相当な確率で成功するメニューも潜ませていくことが重要なのである。あるメニューやプロジェクトが結果を出すことで、そのチームは自信をつけ、さらに変革をもたらそうとする。他のチームはそのチームに負けまいと頑張る。頑張るから結果が出る。個人の心の火が伝染し、組織の心に火がつき、モメンタムができる。変革・成功への機運が高まるのである。 2.「見える化」が会社を変える  100日プランにおいては、ミッション・ビジョンから具体的な戦略・アクションプランを練ること、「WHAT」、「WHO」、「by WHEN」が重要であると述べたが、そのためには、一も二にも、「見える化」が必要となる。「見える化」なくして、課題はわからず、どのような解決をしたらよいのか、具体的にどれくらいの成果を目指すべきなのかがわからない。  「見える化」をひとことで言うと、「データ・ファクトベースの経営を行うこと」。100日プランにおいては、「何が重要なデータ・ファクトであるか=Key Performance Index(KPI)」を定義し、KPIの収集とリアルタイムでの共有基盤を整備し、KPIの目標を設定することで、企業価値・財務数値を高めるバリュードライバー(要因・手法)が特定され、アクションプランを明確化していくのである。「見える化」を通して、市場・顧客・競合他社のデータを確認したうえで、自社の戦略・アクションを特定し、KPIと財務数値の目標を設定する。アクションを起こすことで、自社のKPIと財務数値が変化し、市場・顧客・競合他社にも影響を及ぼす。それをもとにさらなる自社の戦略とアクションを練っていく。こうして「見える化」からの示唆、仮説検証、アクション実行という経営サイクルを限りなく高速回転させていくことで、企業の競争力は生まれていくのである。 3.客観性の重要性(PEファンド)  いままで、PEファンド投資後のアクションをのべてきたが、PEファンドの提供価値は如何なるものだろうか。次回に触れる予定であるが、PEファンドは… [ 続きをご覧いただくには、下記よりログインして下さい ] ■カーライル・グループ ■筆者略歴 富岡隆臣(とみおか・たかおみ) 早稲田大学法学部卒。米ニューヨーク大学にてMBA取得。 日本長期信用銀行に13年勤務。うち9年間は東京及びロサンゼルスにおいてシンジゲートローンのアレンジ業務及び事業戦略アドバイザリー等の企業金融業務に従事。1998年にGE Capital Japanに移籍。日本リース等の買収を担当するとともに、GE Equity Japanの立ち上げに参画。GE Equityの日本代表として、主にGEとの事業シナジーを追求した投資を実行し、4社を上場させた。現在は、ヘルスケア及びコンシューマー業界の責任者として、クオリカプス株式会社、株式会社ソラスト(旧株式会社日本医療事務センター)、株式会社おやつカンパニー、及び三生医薬株式会社への投資を主導し、各社の非常勤取締役として企業価値向上に貢献。現在、株式会社ソラスト、株式会社おやつカンパニー、三生医薬株式会社、及び九州ジージーシー株式会社の非常勤取締役。 渡辺雄介(わたなべ・ゆうすけ) 慶應義塾大学経済学部卒。ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA取得。 三菱商事の化学品グループにて、機能性食品素材、ニュートラシューティカルズ、プラスチック、石油化学の事業投資、メーカー経営、ターンアラウンドに従事。2006年にカーライルに参画。コバレントマテリアル株式会社(現クアーズテック株式会社)、AvanStrate株式会社、株式会社ツバキ・ナカシマ、シーバイエス株式会社(旧ディバーシー株式会社)、九州ジージーシー株式会社の投資やモニタリングに関与。現在、シーバイエス株式会社(旧ディバーシー株式会社) 及び 九州ジージーシー株式会社の非常勤取締役。    

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ワールドホールディングス

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ワールドホールディングス 時代の波を捉え事業領域を拡大し、総合力の向上を目指す ~M&Aも活用し、安定した事業成長へ~

1.はじめに  福岡市に本社を置き「人材・教育ビジネス」、「不動産ビジネス」、「情報通信ビジネス」の3事業をコアビジネスとしているワールドホールディングス(以下、ワールドHD。東証1部上場)の業績が好調だ(図表1、図表2参照)。2016年12月期まで7期連続の増収、6期連続の増益を達成。2011年12月期に378億9200万円だった売上高は5年後の2016年12月期には2.5倍の943億3400万円となっている。 (図表1)ワールドHDの事業別概要 (図表2)ワールドHDの業績推移  ワールドHDの前身である旧ワールドインテックは、1993年に人材ビジネス事業会社として設立された。2005年にジャスダック証券取引所に上場し、その後、M&Aにより情報通信ビジネスに参入。2010年には不動産ビジネスに進出し、事業の多角化を進めてきた。M&Aを活用して人材とノウハウの「種」を買い、育てることで、グループ全体の成長スピードを加速させてきたワールドHDは、2014年には持株会社体制に移行し、3つのコアビジネスのさらなる成長と新たな事業領域の確立を掲げる。その一環として、2017年2月には農業公園の運営管理を手がけるファーム(愛媛県西条市)を買収し、同社を中心に新しいセグメントの確立に挑戦している。  最近では2016年3月に東証2部に市場変更、そのわずか3カ月後の6月には東証1部に指定替えとなり注目を集めた。ジャスダック上場を契機にM&Aも活用しつつ周辺事業への進出や営業エリア獲得により事業規模を拡大させてきた同社のこれまでの歩みを追う(図表3)。 (図表3)ワールドHDの主なM&A 2.沿革~M&Aにより事業領域を拡大 (1)人材ビジネス会社としてのワールドインテック設立  ワールドHDの前身であるワールドインテックは、伊井田栄吉会長兼社長が1993年に福岡県北九州市で設立した。  もともと、伊井田会長兼社長は1981年にみくに産業(現・ミクニ。ワールドHD子会社)という不動産会社を設立し経営していたが・・・  

2017年1-9月のM&A件数と金額

2017.09.30現在 集計

  IN-IN IN-OUT OUT-IN 合計
件数 (件) 1,511 489 142 2,142
増加率 13.6% 7.2% -2.7% 10.9%
金額 (億円) 15,242

58,923

32,276 106,441
増加率 -46.0%

-14.7%

75.5% -8.0%

 *2016年1-12月の日本企業のM&A動向は、こちら

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