マール最新号

特集

第4産業革命と大企業・ベンチャー連携によるオープンイノベーション戦略
2018年3月号 281号(2018/02/15発売)

■新シリーズスタート! M&A基礎講座「事業承継M&Aの法務」(ソシアス総合法律事務所 高橋弁護士)

more
アウトバウンドM&Aにおける初期的検討事項

[M&A戦略と法務]
アウトバウンドM&Aにおける初期的検討事項 ~PMIを見据えた買収検討と法律事務所との効率的な協働~ 有料記事です

 後藤 一光(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)
第1. はじめに   日本企業による海外企業の買収(いわゆるアウトバウンドM&A)は、近年増加の一途を辿っている(注1)。近年は、これまでアウトバウンドM&Aの当事者となることが少なかった内需型産業や中小規模の企業が当事者となるケースも増加している。   残念ながら、アウトバウンドM&Aの中には、言語や文化、法制度等の違いから、買収プロセスや買収後の経営が必ずしもうまくいかないケースが珍しくないように見受けられる。しかしこれらの事態は、案件の初期段階での検討を適切に行うことにより避けられる場合が多い。   そこで本稿では、事業会社がアウトバウンドM&Aを実行する際に初期段階から検討すべきポイントを、特に法律事務所との効果的な協働体制と買収後の統合(PMI)の観点から整理することを試みたい。 第2. 効果的な法律事務所の起用法 1. 起用のタイミング   アウトバウンドM&Aの場合、できるだけ案件の検討を始める段階から法律事務所を関与させることが望ましい。日本国内のM&Aであれば、スキームもある程度固まり、デューディリジェンス(DD)を開始する段階から法律事務所を起用する場合も散見されるが、アウトバウンドM&Aではそのようなアレンジは避けた方が良い。アウトバウンドM&Aにおいては、国内のM&Aでは通常考慮する必要がない事項も検討する必要があり、検討が遅れると、後からスケジュールや買収スキームを大幅に変更する必要に迫られ、結果的により時間とコストがかかってしまうことがある。 2. 初期段階で検討すべき事項   案件の初期段階では、特に(1)案件の実現可能性、(2)スケジューリング及び(3)買収スキームについて、リーガルの観点からのアドバイスが必須となるケースが多く、また、(4)その他の国や案件ごとの特殊事情への配慮も必要となる。 (1) 案件の実現可能性   魅力的な買収候補先が見つかったとしても、その案件が思い描いたとおりに実現可能とは限らない。   障害となる例の最たるものが外資規制である。業種によって、そもそも外国資本が株主となることが全面的に禁止される場合、出資割合が制限されている場合、投資金額が制限されている場合、逆に一定金額以上の資本投下が義務付けられる場合等、様々なパターンがある(注2)。   また、見落としがちなものとして、土地の所有制限がある。特に新興国では、株式の取得制限とは別に、外資による土地の所有が制限されている場合が多い(注3)。買収対象会社の株式の取得が問題ない場合であっても、買収の結果、当該買収対象会社による土地所有が禁止又は制限される場合もあるので、留意が必要である。この場合、事前に土地を処分する、適切な使用権に切り替える等の対応が必要となるため、可能な限り検討段階で把握しておく必要がある。土地の所有制限は地方政府・自治体レベルでの制限が課されている場合もあり、自社で調査することは困難である場合が多いと思われる。   さらに、資金決済・外国為替管理に関する法令によって、海外との資金決済が制限されている場合もあるため、この点についても注意を要する。このような制限がある場合、買収後に親会社に対する配当が制約される可能性があるほか、株式取得の対価や支払方法等にも影響が生じる場合がある。例えば、インドでは、非居住者がインド企業の株式を取得する場合、売買価格を会計士が算定した公正価格以上の金額とすることが義務付けられており、逆に非居住者がインド居住者に株式を売却する場合には公正価格以下とする必要がある。このため、対価自体に影響が生じる上、会計士のバリュエーションを経るための時間と費用も余計にかかることになる。さらに、インドでは、非居住者に対する株式譲渡の対価の分割払いが一定の割合を超える場合や、義務違反に基づく補償請求が一定の割合を超える場合、当局の事前承認が必要とされているため、株式譲渡契約の作成においても注意が必要である。   このほか、米国のいわゆるエクソン・フロリオ修正条項に基づくCFIUS(対米外国投資委員会)の審査のように、国家や国土の安全保障を確保するための特別な規制の対象となる業種もあり、この点も留意する必要がある。 (2) スケジューリング   スケジュールに影響を与える大きな要因として、(ア)各国の競争法に基づく企業結合審査と、(イ)株式の取得等に際して必要となる当局への届出等の手続がある。   (ア)各国の競争法に基づく企業結合審査は、買収対象会社の所在国のほか、事業を展開しているその他の国でも届出を行う必要が生じ得る。届出の要否や必要となる国又は地域は、買収対象会社から詳細な売上高等の数字の開示を受けなければ確定できない場合が多いが、スケジュールを検討するに際して、ある程度の当たりを付けておくことは必要である。また、そもそも承認が下りない可能性があるというレベルで問題となる国がないかも初期段階から検討しておく必要がある。   特にインドや東南アジア等では、(イ)の当局への届出についても意識しておく必要がある。株式の取得に際して当局への届出や投資許可の取得又は変更等が必須となる国があり、その手続には意外と時間がかかることも多い。全く同じような内容の届出であっても、当局の担当者によって、指示される内容が全く異なる場合もある。 (3) 買収スキーム   買収スキームについても、買収対象会社の設立地国の法制度に応じて適切な方法を選択する必要がある。   外資規制により単独で100%株主となることができない場合には、共同で事業を運営する現地の合弁パートナーと組む必要がある(注4)。   外資規制が厳しい、又は完全に禁止されている業種については、単純な名義貸しに近いようなスキームや、中国におけるいわゆるVIEスキーム(注5)のように、事実上この規制を回避するためのスキームが広く用いられている場合もあるが、これらのスキームを採用する場合のリスクと対策については、案件の初期段階からよく理解し、検討を行う必要がある。新興国においては規制が突然変更され、それまで行われていたスキームが利用できなくなる可能性も否定できないため、最新の法令事情について、案件の都度確認する必要がある。   このほか、日本では当然に用いられている手法が存在しない国や、日本にはない制度が一般的に利用されている国もあるため、注意を要する。   例えば、英国と英国法の影響を受けた法制度を有する国々の一部では・・・

more
【第4回】 収益性分析

[円谷先生のM&A基礎講座 [財務分析入門]]
【第4回】 収益性分析

 円谷 昭一(一橋大学大学院商学研究科 准教授)
 本連載では、「財務分析入門」と題して7回にわたって連載します。これまで安全性と効率性の分析方法を解説しました。第4回の今回は収益性の分析方法を紹介します。 3つの収益性指標:ROA、ROS、ROE  「収益率」や「利益率」という言葉はよく耳にしますし、日常会話でも用いられる一般的な用語です。したがってイメージしやすいでしょう。会計学においては、「収益率はその企業が使用した資本とそこから生み出された利益との比率」、「利益率は生産・販売された額に対するマージン(利益)の比率」と区分されることがあります。ただし、実務ではこの2つを区分せずに用いることが多く、本連載でも厳密な使い分けはせずに説明していきましょう。したがって、収益率も利益率も同義とまずは考えてください。  収益性の主要な指標は大きく3つあります。総資産利益率(Rate of Return on Asset: ROA)、売上高利益率(Rate of Return on Sales: ROS)、そして自己資本利益率(Rate of Return on Equity: ROE)です。ROA、ROS、ROEという用語が用いられることが一般的ですので、今回はこの略語をもっぱら用いることとします。 ROA(総資産利益率)  テキストによっては総資本利益率と表記している場合もあります。投下している資本に対する利益率か、または、使用している資産に対する利益率かという見方の違いがあります。ただし貸借対照表の総資産(借方)と総資本(貸方)の金額は一致しますので、ここでは総資産利益率という用語で説明しましょう。使用している総資産に対してどれだけの利益を生み出したかの指標です。企業本来の業務活動での成果を知りたい場合には分子に営業利益を、企業の経常活動による成果を知りたい場合には分子に経常利益をとります。  ところで、「西山先生のM&A基礎講座[決算書の見方]」で学んだように、損益計算書にはいくつかの「利益」が記載されています。売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、当期純利益、包括利益などです。利益率を計算するためにどの利益項目を用いたらよいのか?財務諸表分析では実はここが最近は悩ましいのです。テキストの中には経常利益を用いる例がよく掲載されていますが、米国会計基準や国際会計基準(第6回で詳しく説明します)を使っている会社の損益計算書には経常利益が記載されていません。国際会計基準を採用する会社は増えつつあります。そのような企業では経常利益の代わりに営業利益や税引前利益を使うとよいでしょう(テクニカルになりますが、一部の項目を加減して作成した独自の利益指標を用いて分析してもよいでしょう)。    ではさっそく自動車メーカー3社の総資産利益率を比較します。トヨタは米国会計基準を使っているため経常利益という項目がありません。ここでは3社の営業利益を用いて比較しましょう(税引前利益を用いてもよいでしょう)。    総資産利益率ではトヨタとスズキがほぼ同水準ですが、富士重はその約3倍の高水準です。富士重は北米販売が好調で… ■筆者プロフィール■ 円谷 昭一(つむらや・しょういち) 一橋大学大学院 商学研究科 准教授。2001年一橋大学商学部卒業。06年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了、博士(商学)取得。埼玉大学経済学部准教授を経て、11年より現 職。経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ-企業と投資家の望ましい関係構築を考える-」委員、「企業会計とディスクロージャーの合理化に向 けた調査研究」委員などを歴任。日本IR協議会客員研究員。主な論文に「機関投資家ファンダメンタルズと株主総会投票行動の関連性(月刊資本市場2016 年9月)」、「IFRSの任意適用が経営者業績予想の精度に与える影響(會計2016年6月)」など。 ※詳しい経歴はこちら  

more
ベインキャピタルの担当者が明かす「アサツーディ・ケイTOBの経緯と今後」

[マールレポート ~企業ケーススタディ~]
ベインキャピタルの担当者が明かす「アサツーディ・ケイTOBの経緯と今後」 有料記事です

広告業界第3位   2017年12月、米投資ファンド運用会社ベインキャピタル(以下ベイン)は、傘下のビーシーピーイー マディソン ケイマン エルピーがTOB(株式公開買い付け)によりアサツーディ・ケイ(以下ADK)株式の87.05%を取得した。取得総額は約1326億円。今後いわゆる2段階買収によって全株式を取得する方針で、すでに3分の2超の議決権を得ており、ADKは18年2月に臨時株主総会を開催し、3月下旬にも上場廃止となる。   ADKグループは、子会社 49 社、関連会社 11 社等で構成され、主な事業は、雑誌、新聞、テレビ、ラジオ、デジタルメディア、OOHメディア(Out Of Home Media:電車やバスの中吊り等の交通広告、ビル の壁面に設置した看板等の屋外広告、折込広告等)を媒体とする広告業務の企画と取扱い、広告表現及びコンテンツの企画と制作、セールスプロモーション、マーケティング、パブリックリレーションズ等のサービス活動を行っている総合広告会社で、売上高で電通、博報堂に次ぐ業界3位の位置づけとなっている。   同社は、1956年に旭通信社として設立され、東京証券取引所市場2部上場を経て90年6月に第1部銘柄に指定され、その後、99年1月に第一企画と合併して商号を現在のADKに変更した。また98年8月には、持続的な成長及び企業価値 の向上を目的として、世界の広告代理店業界において売上高で第1位の WPP グループとの間で、資本・業務提携契約を締結、これによってWPPはADKの24.96%を保有する筆頭株主となっていた。   同社にTOBを実施したベインは、グローバルで総額約 750 億ドルの運用資産を持つ国際的投資会社。06年に東京拠点を開設し、日本ではジュピターショップチャンネル、すかいらーく、大江戸温泉物語、ドミノピザ・ジャパン、マクロミル、ベルシステム24 など 12 社に対して投資実績を持っており、18年3月に予定されている東芝メモリ買収の「日米韓連合」の中心的な存在としても注目されている。 WPPグループとの資本提携関係解消を図ったADK   ADKがベインによるTOBで非上場化という道を選択した背景には、筆頭株主であるWPPグループとの資本提携関係解消によって成長を加速させたいとの経営陣の思いがあった。   同社を取り巻く事業環境は、デジタルテクノロジーの劇的な進化やソーシャルメディアの急速な浸透もあって、マスメディアを中心とした日本の広告市場が成熟期に入り、 広告を含むコミュニケーションは、単なる商品・サービスの認知を高める手段から、消費者の購買やサービス利用など「消費者を動かす」という課題を解決する手段へと大きく変貌してきている。他方、経済成長ポテンシャルの大きい東南アジア諸国への進出を目指す日本のクライアントからの対応ニーズが、大幅に増加してきている。こうした広告業界を取り巻く急速な経営環境の変化に対応するために、同社は13年、同社の20年までの成長の過程を示した中期経営計画「VISION 2020」を発表し、「コンシューマー・アクティベーション・カンパニー」への変革を宣言した。   この中計では、①短期的には既存ビジネスの収益性改善、②中期的には新業態を開拓するための多様な専門性の強化を2本柱として、16年12 月期までを第1ステップとして 基盤構築・構造改革期と定め、変革に取り組んできた。しかし、目標としていた16年度の営業利益70 億円に対して、実績は 56 億円と、収益性の改善が不十分で、多様な専門性の強化についても、広告業界の市場環境の変化が想定以上に急速に進む中で、より一層の事業革新と組織改革に迫られる状態になっていた。   こうした中で、WPPとの資本・業務提携は開始当初こそコーポレートガバナンス体制の整備や資金の効率運用などの面で一定の成果を生んだものの、その後は、ADKにとって事業上のシナジーを実現するには至らず、むしろ、「子会社でもないADKに対して自らの利益を優先してくるところが大きかった」と、提携解消を決断した理由をADKの植野伸一社長は語っている。

more
[座談会]日本のガバナンス改革の進展と戦略的企業買収の行方――王子製紙事件から10年、提案型TOBはどうなるのか

[対談・座談会]
[座談会]日本のガバナンス改革の進展と戦略的企業買収の行方――王子製紙事件から10年、提案型TOBはどうなるのか 有料記事です

 田中 亘(東京大学 教授)
 ニコラス・ベネシュ(公益社団法人役員育成機構 代表理事、在日米国商工会議所成長戦略タスクフォース 委員長)
 川村 尚永(経済産業省 経済産業政策局 産業組織課長)
 司会・編集 川端 久雄(編集委員、日本記者クラブ会員)

<はじめに> ―― 日本のコーポレートガバナンス改革はこの1、2年で大きく進展しました。2015年が元年と言われ、今年はその2年目に当たります。ガバナンス改革(企業統治改革)の狙いは、日本企業の稼ぐ力の回復、日本経済の再生にありましたが、一連の改革により企業買収やM&A全般を取り巻く環境も変わっています。   一方、M&Aに目を転じると、2015年は世界的にM&Aがブームとなりました。製薬業界やビール業界で巨大企業が誕生しています。日本も海外M&A(IN-OUT)が過去最高となり、トータルの金額も過去2番目の額になりました。日本も一見、活況を呈しているように見えますが、欧米と比較すると質量ともまだ低調です。敵対的TOBに代表される提案型TOBがもっと活発になれば、日本のM&Aはさらなる飛躍を見せるのではないでしょうか。   折しも、2016年は王子製紙(現王子ホールディングス)が北越製紙(現北越紀州製紙)に対し敵対的TOBを試みたものの、失敗に終わってからちょうど10年目になります。   今だったら、王子のような敵対的TOBは成立するのか。ガバナンス改革により、日本の企業買収はどのような影響を受けるのか。さらに提案型TOBを促進するため、日本の買収法制などを見直す必要があるのか。   本日は、第1部で企業買収の観点からガバナンス改革の経緯、狙い、到達点を整理するとともに、今後のガバナンス改革の方向性についてもお話をしていただきます。続いて第2部で日本のM&Aの現状、敵対的TOBの意義、王子・北越事件とその後、提案型TOBの可能性、買収法制について日本が進むべき道などについてご議論をしていただきます。   田中亘東京大学教授は会社法と企業買収法制についての第一人者です。ニコラス・ベネシュ公益社団法人役員育成機構代表理事は、日本のコーポレートガバナンス・コード策定の影の功労者と言われています。川村尚永課長は日本の産業組織の改善などの担当課長で、金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」のメンバーなども務めておられます。

more
[座談会] M&Aの成否を分けるビジネス・デューデリジェンスの実務

[対談・座談会]
[座談会] M&Aの成否を分けるビジネス・デューデリジェンスの実務 有料記事です

【出席者】(五十音順)
 岡 俊子(岡&カンパニー 代表取締役)(司会)
 加藤 雅也(日本板硝子 執行役員 社長付戦略特命事項)
 金田 欧奈(ベーシック・キャピタル・マネジメント マネージング・ディレクター)

自己紹介 岡 「企業価値の向上を実現させるために、昨今、M&Aは、経営戦略上、極めて重要な経営ツールの一つになってきています。   そのM&A取引の中で実施されるビジネス・デューデリジェンス(DD)は、対象会社(ターゲット企業)の事業上のオポチュニティとリスクを見極めることを目的としていますから、このビジネスDDがしっかりとなされているかが、当該M&Aの成否を分けることになります。   そこで今回は、事業会社、プライベート・エクイティ(PE)ファンドで数多くのM&Aを経験してこられたお2人にお越しいただいて、『M&Aの成否を分けるビジネス・デューデリジェンスの実務』について議論をさせていただきます。まず、加藤さんから自己紹介をお願いします」 加藤 「日本板硝子の加藤です。私はどちらかというと工場勤務とか子会社出向など現場の方が長くて、M&Aに関連した業務に携わるようになったのは1999年頃からです。2006年には英国のガラスメーカーでグローバル展開していたピルキントン社買収(調達総額6160億円)のディールも担当しました。これまでに大小合わせて買収、売却を含めてM&Aは15件以上経験しておりますが、私はMBAでもなくM&Aの専門講義を受けたこともありません。実戦の中で起用したFA(フィナンシャルアドバイザー)とか各種コンサルタントの方々に教えていただきながら、現実のM&Aで起きる様々な問題を体験して自分なりに考え方を纏めてきました。その過程で色々な専門家の方とお知り合いになって、気が付いたらこんな座談会の場に呼んでいただいて、こんな偉そうなことをいう立場になったということです。今日はPEファンドの金田さんと、いつもお世話になっている岡さんとの議論を楽しみにしています」 金田 「ベーシック・キャピタル・マネジメントの金田と申します。今の仕事に就く前は、本日ご一緒させていただいています岡さんのもとでM&Aのコンサルタント業務に従事していました。その後、今から11年前にベーシック・キャピタル・マネジメントに参画し、PE業務をやらせていただいています。投資案件の発掘・提案から投資後の経営支援、その後の資本政策、出口戦略まで、いわゆるハンズオン型の投資を行っております。現在は投資先4社の取締役を兼務し、投資先企業を支援させていただいております」 岡 「改めまして、岡&カンパニーの岡です。1990年代後半からコンサルティングファームの中でM&A戦略の立案や、バリュエーションやビジネスDD、ポストM&Aのコンサルティング、これらを総称してM&Aコンサルティングと呼んでいますが、そういう仕事をやってきました。   今は、上場会社の社外取締役または社外監査役を務めるかたわら、個人事務所である岡&カンパニーで、M&Aや経営に関するコンサルティングを提供しています。また、大学の非常勤講師として、M&Aを実践的視点から教えています」 1.ビジネスDDの目的と準備 ビジネスDDの究極の4つの目的 岡 「さて、今回の座談会では、ビジネスDDに関して、大きく5つのポイントでお話をうかがっていきたいと考えています。   まず1つ目が、ビジネスDDを実施する目的をどのように設定しているか、その目的を達成するためにどういう準備が必要であると考えているか。2つ目が、ビジネスDDの建付け、つまり案件によってビジネスDDを行う、行わないの違いがあるのか、また外部のアドバイザーをどう起用しているか。3つ目が、トランザクションにおけるビジネスDDの進め方について。4番目が、ビジネスDDの結果をどう活用するか。そして最後に、ビジネスDD実施上の課題について、お話を頂戴できればと思います。   本題に入る前に、まず、ビジネスDDとは何かということをお話させていただいて、議論をスタートさせたいと思います。   一般にM&Aを行う際には、財務DD、法務DDについては、誰に言われるまでもなく、やるべきものと捉えられていて、買い手は、会計士、弁護士という、いわゆる“サムライ(士)業”の方たちに依頼していると思います。   他方、ビジネスDDというのはそれとは少し色合いが異なります。買い手は、まず対象会社を買収した後、どういう形で今後の成長につなげていくのかというストーリーを持つことが必要です。そのうえで、対象会社は一体どれぐらいこちらのニーズを満たしてくれるのか。満たさない部分があるとしたらどのような点なのか。その満たさない部分も抱き合わせで買収することに、合理性があるのかどうか、リスクはどこにあるのか、その大きさはどれくらいかといったことについて、事前に仮説をたてます。そして、それらを検証する場がビジネスDDということです。ですから、ビジネスDDは本来買い手が自分自身の手でやるべきだと、私は、外部の専門家としてビジネスDDのアドバイザーという立場であるにもかかわらず、そういう思いを持っています。我々の役割は、買い手自身が主体となって実施するビジネスDDを、第三者の立場でサポートするということです。   それでは、事業会社でM&Aに携わっていらっしゃる加藤さんから、ビジネスDDに当たって一番重要なポイントであるビジネスDDの目的をどのように設定しておられるのか、その目的を達成するためにビジネスDDの実施前にどこまでの準備をするのかという観点で、お話しいただけますか」 加藤 「岡さんがおっしゃるように、M&Aにおいては、買収目的を買い手自身が明確に自己認識しておくこと、そして十分に準備して買収プロセスに取り掛かることが極めて重要だと思います。DDの体系を説明するならば、ビジネスDDだけが独立して存在するわけではなく、財務、会計、税務、人事、労務、法務、あるいは環境というようなあらゆる角度からチェックを行うことが必要ですが、それらは全て買収目的に沿った戦略の実現性やリスクの想定、買収後の経営構想を準備するための情報として収集・分析されるわけです。その意味でDDを行う意義の中心に“ビジネスとしての関心”が位置するのは当然です。   ではビジネスDDの目的は何かということですが、今からお話しすることは私が全部できましたということではなくて、あの時こうしたらよかったとか、今やろうとしてもなかなか難しいけれどこうやるべきだという反省も含めて申し上げます。   私なりに考えてみまして、ビジネスDDの中心的な目的は4つあると思っています。1番目がバリュエーション、2番目はポストクロージング・マネージメント。これはシナジーとPMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセス)という意味です。3番目がディール・ブレーカーとなるようなリスクの認識。4番目が買収ファイナンスを組成する目的で、デットもしくはエクイティのプロバイダーへの情報提供です。   まず1番目のバリュエーションとは、買収価格の適正なレベルを見積もるという本来目的に加えて、これ以上高くなったらそのディールから撤退するというマックスラインを自分自身で覚悟するために行います・・・

more
第4回 事業承継M&Aにおける株式に関する法的論点

[M&A基礎講座 「事業承継M&Aの法務」]
第4回 事業承継M&Aにおける株式に関する法的論点

 高橋 聖(ソシアス総合法律事務所 パートナー 弁護士)
はじめに   事業承継の対象となるオーナー企業の中には、長年にわたり外部者の関与がなく、実質的にオーナー一族のみによって経営されてきた会社も多く存在します。このような会社においては、株式の管理がオーナーの意向のみによってなされ、株式の発行や譲渡について法令上必要とされる手続が取られていない、又は、法令上作成・保管されなければならない書類が作成又は保管されていないことにより、法律上の株式の帰属先が不明確となっている場合も少なくありません。   本稿では、事業承継M&Aの際に、上記のような理由から対象会社の株式について問題が生じる代表的なケースをいくつか取り上げ、法的な論点と実務上の対応策について解説したいと思います。 名義株の問題 (1)名義株とは   多くの事業承継M&Aの対象会社において問題の原因となるのが、いわゆる「名義株」の存在です。名義株とは、一般的には、他人の承諾を得て、その名義を用いて株式の引受又は取得がなされた場合に生じる、形式的な名義上の株主と実質上の株主とが異なる株式のことを指します。   このような名義株は、その動機の適法性・妥当性はともあれ、実務上、主に以下のような理由から生じることが多いところです。   ① 平成2年改正前の商法では、会社設立に際して少なくとも7名の発起人が必要とされていたため、会社設立のために発起人として他人の名義を借用するという実務が行われていた。 ② 真の株主が、何らかの理由で、債権者、税務当局等の第三者との関係において自らが株主であることを秘匿したい場合。 ③ 将来発生し得る相続等を見越して、オーナーが、予め自らの後継者候補を名義上の株主とする場合。   オーナー企業の中には、平成2年の改正商法が施行される前に設立された会社も散見され、また、株主構成も含めた企業統治に外部者が関与していないため、上記②や③を理由とした名義上と実質上の株主との間に齟齬が見られることも少なくなく、一般的な会社と比較して、名義株の存在が問題となる頻度が高いと思われます。 (2)名義株がある場合に生じる問題   M&Aにおける対象会社の株式に名義株が存在する場合、名義株について他人の名義を借用しているオーナー株主(名義借用者=実質上の株主)が、名義株も含めて自らが保有する対象会社株式を売却しようとする際に、名義株について自己の名義をオーナー株主に貸与した者(名義貸与者=名義上の株主)が、自分が真の株主であることを主張し、売却に異議を唱えたり、売却代金の支払を要求するという事態が生じることがあります。   特に、事業承継M&Aにおける対象会社の場合には…   ■筆者略歴 高橋聖(たかはし・きよし) 1993年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。株式会社リクルート勤務を経て、1999年より弁護士としてTMI総合法律事務所にて、主にM&A、国際取引、一般企業法務等を取り扱う。2015年にソシアス総合法律事務所を開設し、現在は、事業承継案件を中心に、多数の非上場会社売却案件に売手・買手のリーガルアドバイザーとして関与している。 University of Virginia School of LawにてLL.M.(法学修士号)取得。第一東京弁護士会所属弁護士・米国ニューヨーク州弁護士。    

more
第3部 ITへの対応

[「M&A基礎講座」 未上場企業買収後のPMIの実務 ~CFOの視点から~]
第3部 ITへの対応 第6回 ITへの対応

 熊谷 知範(株式会社エスネットワークス 経営支援第1事業本部 経営支援第2部長)
1.IT投資の重要性   買収を検討する会社やPEは、シナジー効果の発現やバリューアップのために経営権取得後、種々の投資を行うことを想定しているケースも多いことでしょう。   その中でもIT投資は近年、重要性が増している投資といえます。IT投資が重要な理由は企業の取引量が増加し、エクセルを含む手作業での情報の集計・加工では事務負担がかかり過ぎて社内のリソースでの対応に限界があることが理由のひとつとして挙げられます。また、ITを駆使することで複雑化した現代の企業経営における情報のロジスティクスを有機的にかつ効率的に連携させることが可能となります。 2.PMIフェーズにおけるIT投資の特徴   PMIフェーズにおいて実施されるIT投資の主な目的は「経営情報の入手」にあります。  CFOを含む経営陣が様々な意思決定を行うためには現場の経営情報を「適時・適切」な形で入手する必要があります。一般に、M&Aの成功の可否はPMIの初動で決まるといっても過言ではないことから、これらの情報の入手プロセスが初期の段階で整備・確立されている必要があります。   経営情報の代表例は売上(販売)情報です。アパレル業を例にして考えてみましょう。販売担当責任者は「日々」、CFOをはじめとする経営陣は「定期的」に下記情報を入手し、最新の営業の状況を都度把握する必要があります。  ・日別の売上金額  ・販売した商品の点数  ・販売した商品の内容(単価や値引きの情報を含む)  ・販売した時間帯  ・購入者の情報   ちなみにこれらの情報の入手、整理の方法についてはITの導入状況によって以下の3つのレベルがあります。 (1)エクセル   店長がエクセルで販売情報を整理し、本社に報告し、本社の営業管理部門がエクセルで集計の上、経営陣に報告します。人的リソースでの加工が発生することから日次であっても最速で翌日の午後くらいに報告があがるスピード感です。店舗の状況によっては報告が一部漏れるケースもありえるでしょう。また、売上の多い店舗ほど集計に時間がかかってしまうというジレンマを抱えるうえ、データの精度に限界があるといえます。 (2)キャッシュレジスターでのデータ蓄積   キャッシュレジスターに販売商品のマスタデータが登録されており、毎日の販売情報がUSBに蓄積されます。これらの販売情報を定期的にパソコン等に移管することで販売情報を電子データとして入手することができます。これらの電子データを本社の営業管理部門がエクセルで集計し経営陣に報告します。   このパターンでは①と比較してUSB経由とはいえ、店長の手を介さず正確なデータを入手することができます。また、エクセルで情報を加工する手間が生じないため、店長が費やす必要のある事務作業時間を削減することができることになります。その意味ではスピード感が少し上がった程度といえるでしょう。 (3)POSレジ、販売管理システム   店舗がPOS(Point of sales)レジを導入している場合は販売情報が自動集計され、クラウド上の販売管理システムに集約されます。さらに、それらの情報はリアルタイムで更新されます。1日の売上を確定する処理自体を営業管理部門が行うだけで販売情報が適切にデータ化されます。あとはそのデータをほぼそのまま経営陣に報告するだけ、ということになります。このレベルはほかのレベルと違い、正確かつ効率的に、そして最速で経営陣に情報が提供されることになります。   いうまでもなく、(3)が最も高いレベルのIT環境を構築しています。一方、(1)はそもそもIT投資を行っていない状態といえるでしょう。後述しますが、IT投資を成功させるためには後述のとおり、資金、人的リソース、時間を要します。(3)のレベルのIT環境を目指すことはもちろん大事ですが、全体としてはその他PMIで検出されたITで対応すべき課題の全てを俯瞰し優先順位をつけたうえで、投資意思決定を行うのが肝要といえるでしょう。 3.IT投資の類型   以下は主に管理系を中心としたIT投資を想定して展開していきます(ただ、この類型はおおむねどの分野のIT投資にもあてはまります)。CFOがIT投資の可否について検討する上ではそのIT投資の内容がどのようなものであるかをまず把握しておく必要があります。主にはカスタマイズ(加工)のレベルによって以下の3類型を理解しておくとよいでしょう。    (1)パッケージ商品   このパターンは市販されているソフトを購入し業務に「そのまま」利用するパターンです。投資実行前に投資対象会社がオーナー企業で管理部門に積極的に経営資源を投入していなかった会社の場合、まずはこのパターンによるIT投資を想定することが多いと考えられます。   このパターンを採用するメリットは… [ 続きをご覧いただくには、下記よりログインして下さい ] ■株式会社エスネットワークス ■筆者略歴 熊谷知範(くまがい・とものり) 慶應義塾大学卒業。公認会計士試験合格後、株式会社エスネットワークスに入社。未上場会社での経理実務支援、未上場会社での経理BPR業務、上場企業でのIFRS導入支援、ファンド投資先での管理部長代行業務に従事。その他、バリエーション業務、デューデリジェンス業務、フィナンシャル・アドバイザー業務を多数経験。直近ではファンド投資先のPMI支援を主に担当。 [関連記事] 【エスネットワークス】 M&A後に必要な現場力を常駐支援で提供して戦略実行を実現する(マール 2015年12月号)    

more
[対談]コニカミノルタの持続的成長戦略とM&A ~攻めのガバナンスで真のグローバル企業へ

[対談・座談会]
[対談]コニカミノルタの持続的成長戦略とM&A ~攻めのガバナンスで真のグローバル企業へ 有料記事です

 松﨑 正年(コニカミノルタ 取締役会議長)
 松江 英夫(デロイト トーマツ コンサルティング パートナー)

-- コーポレートガバナンス改革の流れの中で、「攻めのガバナンス」ということが言われますが、M&Aは、企業の成長戦略の実現に向けた重要な意思決定となる場合が多く、また、その成功・失敗が企業の命運を左右するようなこともあり得るという意味で、攻めのガバナンスが実現できているかどうかの試金石とも言えます。本日は、コニカミノルタ株式会社取締役会議長の松﨑正年様とデロイト トーマツ コンサルティング合同会社パートナーの松江英夫様に、コニカミノルタのM&Aによる成長戦略を支える独自のガバナンス体制とその実際についてご紹介いただきながら、M&Aにおけるガバナンスの在り方などについて議論いただきます。なお、松江さんには、進行役も含めてお願いしております。よろしくお願いします。 はじめに ~コニカミノルタのM&A戦略 松江 「本日は、松﨑さんと『攻めのガバナンスとM&A』というテーマで、お話をお伺いできるということで、大変楽しみにしております。と言いますのも、コニカミノルタは、2003年のコニカとミノルタの経営統合に始まり、創業事業である写真フィルム・カメラ事業やHDD用ガラス基板事業から撤退する一方で、新しいビジネスモデルを目指す事業転換のための国内外のM&Aを数多く実践するなど、戦略的にM&Aを活用されてきました。主なM&A案件は別表の通りですが、2008年以降、『カラー複合機でジャンルトップ』という戦略のもと海外の事務機販売会社を次々と買収することで世界1~2位の地位を確立。2012年以降は、米国のITサービス企業オールカバードを買収するなど、カラー複合機とITサービスを組み合わせた新しいハイブリッド型のビジネスモデルを開拓するためのM&Aにより成長を遂げました。さらに、オフィスコンビニ事業国内最大手のフェデックスキンコーズ・ジャパンの買収、独のLED光源測定等のインスツルメントシステムズの買収や、プリントマネジメントサービス大手の英チャーターハウスの買収、パナソニックヘルスケアの超音波診断機器関連事業の譲り受け、2015年の米大手ディスプレイ検査システムメーカーのラディアント・ヴィジョン・システムズの買収など、『事業転換』による新たな成長エンジンの開拓に注力されています。

2018年1月のM&A件数と金額

2018.1.31現在 集計

  IN-IN IN-OUT OUT-IN 合計
件数 (件) 189 47 10 246
増加率 61.5% 0.0% 66.7% 44.7%
金額 (億円) 2,585

13,119

925 16,631
増加率 244.3%

83.3%

-37.4% 77.2%

 *2017年1-12月の日本企業のM&A動向は、こちら

<速報>公表アドバイザー情報

■M&A用語集

  • M&A専門誌マール 最新号
  • M&A専門誌マールのお申し込み
  • 商品のFAXお申込書
アクセスランキング

キャンペーン情報|M&A専門誌マールを無料でお試しいただけます

次号予告と編集後記|M&A専門誌マール

皆様からのご意見・ご要望をお待ちしております。

レコフM&Aデータベース

LOGIN

  • 特徴と機能についてをムービーでご紹介。
  • MOVIE
  • トライアルはこちら

 

M&A専門誌マール
  • M&A専門誌マール
  • お申込みはこちら

具体的なM&Aのご相談はこちらへ

企業戦略に沿ったM&A実現をサポート 株式会社レコフ

レコフ クロスボーダーセミナー

M&Aアンケート

「MARR2017」(M&Aレポート2017)の「第4部 アンケート調査」から抜粋。Aコース会員・EXコース会員向けの限定コンテンツです。

worlding
日経バリューサーチ
NIKKEI TELECOM日経テレコン

日経テレコンの「レコフM&A情報」では、M&A、グループ内M&A、分社・分割、持株会社などの関連データのほかに、防衛策データも提供しています。

 

SPEEDA
M&Aフォーラム
pagetop