1. はじめに
新型コロナの影響等により厳しさを増した経営環境において、自社の収益や事業の構造の見直しに迫られている企業は少なくない。また、未来の稼げる姿の構築に向けて、テクノロジーの進展に伴うデジタルトランスフォーメーションによる既存ビジネスモデルの再構築や、イノベーションによる新規事業の開発などの事業再構築が求められている企業は多い。日本能率協会の調査によると、5年後の企業経営課題の第1位は「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」(17.3%)、第2位は「新製品・新サービス・新事業の開発」(12.0%)とされている。(図1)
また、同調査において、5年後の企業経営課題の第3位とされているのは、「人材の強化」(10.3%)である。人材に関する懸念については、PwCの第22回世界CEO意識調査では、回答したCEOの79%、日本に限ると95%が、「働く人々の業務上必須スキルの不足・欠如」に対し「非常に強い懸念・不安がある」または「いくばくかの懸念・不安がある」と回答した(図2)。「非常に強い懸念・不安がある」と答えた回答者に、「必須スキルの不足・欠如」が自社の成長にどのような影響を与えているか聞いたところ、「効率的・効果的なイノベーションが創出されない」、「想定を超える人件費増大」、「品質水準および/あるいは顧客体験への悪影響」などの回答が多く寄せられた(図3)。
本稿では、事業再構築を行い、企業価値を高めていく上で、対応が必要な事項の1つとして人材に関する問題を取り上げる。
例えば、事業再構築により企業としてのバリューアップを実現するためには、事業ポートフォリオの再構築に合わせた、人材ポートフォリオ(人材の量的・質的な構成)の再構築が求められる。デジタルトランスフォーメーションを進めるためにはデジタル人材が必要とされるように、それ以外の領域においても、目指す姿を実現するためには、それに適した人材が質・量ともに確保されていなければならない。
事業再構築に向けた人材領域の問題としては、上記の他にもどのようなものがあるか確認した上で、それらに対応するためのアプローチを紹介する。
2. 事業再構築に向けた人材領域の問題