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(2013/07/17)

ベトナム:経済発展の足枷

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  「生きていくためにはアルバイトをしなければならない。」これは日本の一流と言われる大学で博士号を取得し、現在はハノイの最も入学難易度の高いトップ大学の教員の悲痛な言葉である。

  この博士は幸いにして日本政府からの招聘による奨学金をもらい、日本に留学した。博士の語るところによれば博士号取得に際し、日本の教授から懇切丁寧な指導を受け、その教授法と教育研究の方法論にも感銘し感動したという。そして日本で得たその経験を活かして、ベトナムにおいても学生の指導にあたりたいという強い志を持って帰国した。しかしながらベトナムの現実は厳しい。大学から受け取る給与だけでは家族が生活していけない。子供を育てるためにはアルバイトをして生活費を稼がなければならない。その結果として大学院生への指導時間は少なくなり、学生の作成する修士論文も内容のない簡単なメモ程度のレベルとなってしまっているそうだ。

 また、国費から出る研究費は各大学でそれぞれの順番待ちとなっており、出るとしても一つの研究プロジェクトで僅か千ドルという。研究プロジェクトは通常5人編成で行われているので研究費はまるでないということと同じだ。予算がないだけではない。研究室も実は大学にはなく、また大学教員用の特定の席もないというのが殆どだそうだ。

 つまるところ研究活動がないので研究を教育活動に活かすこともできない。海外で取得した博士号も空しい経歴となってしまっている。

 このようなことはベトナム社会では周知の事実だそうで、そのためベトナムでは国内の大学が社会から評価されることもない、と博士は述べていた。



 
 

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