[M&Aトピックス]

(2023/10/13)

第17回M&Aフォーラム賞が決定―M&Aフォーラム賞『RECOF賞』などに5作品を選定

人材育成と優れた作品の表彰を通じ、わが国M&Aの発展に貢献

落合 誠一 氏
 また、M&Aフォーラムの落合誠一会長(東京大学名誉教授)は、同フォーラムの活動について次のように述べた。

「私ども『M&Aフォーラム』の設立経緯を振り返りますと、内閣府経済社会総合研究所にM&A研究会が置かれ、私もそのメンバーとして参加し、わが国のM&Aの発展について議論がなされました。この結果、2005年にM&Aフォーラムの設立が提唱され民間ベースのフォーラムとして発足した訳ですが、その過程で、M&Aフォーラムの事業の柱となる2つの重要な点が挙げられました。

 1つはM&Aに精通した人材の育成であります。基本的な部分と応用的な部分の大きく2つに分けて、それぞれに応じて人材養成プログラムを進める形で生み出されたのが『M&A人材育成塾』です。M&Aを学べる研修・セミナーを開催し、これまでにご活用いただいた企業数は延べ1,300社を超え、受講された方は延べ1,850名に達しております。当フォーラムは、人材育成を通じてわが国のM&Aの発展に微力ながらも貢献してきたものと自負しております。

 もう一つは、M&Aに対する研究を発展させていくことの必要性です。この考えに基づいて開催されておりますのが『M&Aフォーラム賞』です。わが国のM&Aの普及啓発に資する優れた書籍、研究論文に対して表彰する制度であり、毎年実施して参りましたが、月日の経つのは早いもので17回目を迎えました。また、これまでに61作品の書籍・研究論文が顕彰され、M&Aの研究者の方々の間でも相当に浸透している賞ではないかと思っております。

 受賞作品の選定においては、甲乙つけがたい優れた応募作品が多い中、岩田一政選考委員長の下、選考委員会において、厳正なる審査が行われております。岩田委員長を始め、審査の労を賜りました選考委員の先生方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 なお、M&Aフォーラムが設立された当時と比較しますと、日本でも随分M&Aが普及し、企業経営の有力な手段になっております。日本のM&Aがますます発展し、ひいては日本の経済・産業全般にプラスの影響を与えることを望んでおります。簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます」

受賞者の言葉

 受賞者は、それぞれ次のように喜びの言葉を述べた。
【受賞者の言葉】

■ M&Aフォーラム賞正賞『RECOF賞』
 柴田 堅太郎 氏(柴田・鈴木・中田法律事務所 パートナー弁護士)
 中田 裕人 氏(柴田・鈴木・中田法律事務所 パートナー弁護士) 
柴田 堅太郎 氏中田 裕人 氏
「この度は栄誉あるM&Aフォーラム正賞「RECOF賞」を賜り、誠にありがとうございました。

 事業の切出しを伴う「カーブアウトM&A」は、売り手に残る事業や転籍対象の従業員などの「痛み」を伴うものであるためディールブレイクしやすい難しい取引類型といえます。本書はこのようなカーブアウトM&Aの法務上の問題点について、「生々しい」ストーリーと、そのストーリーに沿った契約例ともに解説したものです。

 コーポレートガバナンス・コードにより資本コストを意識した経営が求められる中、事業ポートフォリオの不断の見直しがこれまで以上に期待されることから、カーブアウトM&Aはより増加するものと予想されますので、本書がお役に立てれば嬉しく思います」

■ M&Aフォーラム賞奨励賞『RECOF奨励賞』 
 上野 善久 氏(ファミリーゲノム研究所 所長・主席研究員)
上野 善久 氏
「伝統と格式ある賞を賜り、誠に光栄に存じます。選考委員の先生方はじめご関係の皆様、版元の中央経済社様に厚く御礼申し上げます。

 本書は、ロールアップ戦略に関する世界初の教科書として執筆致しました。昨今の中小企業のM&Aの中には、理念と戦略を忘れ、案件ありきの技法に傾斜するケースも多いようです。また、合併すれば生産性が向上するといった謬見も流布しています。いまこそ、創業の精神と学術界の理論的蓄積を活かし、ステークホルダー全員の幸せを目指す高潔なM&Aの普及が望まれます。

 我国の成熟産業が再び発展し、古い産業に従事する事業主と従業員が自信と誇りを取り戻す日を願い、さらなる精進を続けて参る所存です」

■ M&Aフォーラム賞奨励賞『RECOF奨励賞』
 中村 謙太 氏(TMI総合法律事務所 弁護士)
 谷口 達哉 氏(TMI総合法律事務所 弁護士)
 十市 崇 氏(TMI総合法律事務所 弁護士)
 後藤 一光 氏(TMI総合法律事務所 弁護士)
中村 謙太 氏
「この度は、大変栄誉ある賞を頂きまして、誠にありがとうございます。共著者一同を代表して、選考委員の皆様、レコフデータ様、執筆にご協力頂いた皆様に厚く御礼を申し上げます。

 本論文は、これまでに日本で行われたMBO及び支配株主による従属会社の買収に関して、各種公正性担保措置がどのように普及してきたかを分析するとともに、構造的な利益相反の程度(強度)や公正性担保措置の実施内容が買収プレミアムに与える影響の有無・程度を計量経済学の手法を用いて分析したものとなります。

 「公正なM&Aの在り方に関する指針」や「企業買収における行動指針」などの影響もあり、M&Aと利益相反を巡る議論と実務は今後さらに進化を遂げることが予想されるところです。本論文がそのような実務の発展の一助となれば幸いです」

■ M&Aフォーラム賞選考委員会特別賞 『RECOF特別賞』
 安齋 寛昭 氏(一橋大学大学院 経営管理研究科金融戦略・経営財務プログラム修了)

「M&Aフォーラム賞選考委員会特別賞を賜り大変光栄です。選考委員、鈴木健嗣先生をはじめお世話になった皆様に心より御礼申し上げます。

 近年MBO等において社外取締役の機能への期待が高まっています。長年M&A実務に携わっていて、社外取締役が期待に応えているか実証分析することに興味を持ちました。データが限られますが、結果は社外取締役が期待に十分に応えるものではないことが示されました。MBO等に関与する社外取締役の独立性の甘さが要因の一つと考えられます。非上場後の開示によるステークホルダーのモニタリング等の施策が必要と思慮します。

 研究を通じて得た知見を実務で活かすと共に、M&Aにおける社外取締役の機能発揮に貢献していきたい」

■ M&Aフォーラム賞選考委員会特別賞 『RECOF特別賞』
 清水 美紗 氏(東京大学経済学部金融学科4年)
清水 美紗 氏
「この度は、M&Aフォーラム賞 選考委員会特別賞を賜り、⼤変光栄に存じます。選考委員の皆様、レコフデータ様、そしてご指導賜りました首藤昭信先生をはじめお世話になった全ての方々に厚く御礼申し上げます。この度は栄誉あるM&Aフォーラム正賞「RECOF賞」を賜り、誠にありがとうございました。

 本研究では、人的資本投資が労働⽣産性を上げるという関連性に対して、敵対的買収防衛策の導入がどのような影響を及ぼすかを分析し、結果として正の関連性をより強める傾向を確認いたしました。また、各年度のデータや複数の人的資本投資の指標を用いることで、年度による違いや効果の経路を分析いたしました。

 本研究で得た知見を実務の中でも生かしていけるよう精進してまいります。この度は誠にありがとうございました」

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