[対談・座談会]

2014年8月号 238号

(2014/07/15)

[対談] 日系企業が新興国M&Aで成功するために

~真のグローバル化への意識改革~

 清水 勝彦(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 教授)
 三橋 優隆(プライスウォーターハウスクーパース サステナビリティ 代表取締役社長)
  • A,B,EXコース

左から三橋 優隆氏、清水 勝彦氏

-- 海外M&Aを活用し、グローバル化に向けてチャレンジする会社が増える一方で、必ずしもその成功確率は高くないのではないかという見方があります。そうした中、本特集でご紹介するPwC(プライスウォーターハウスクーパース)と慶応義塾大学大学院・清水勝彦教授の共同研究に接する機会がありました。その研究報告では、日本企業のグローバル化の現状を採点するとまだまだ合格点には遠く、真のグローバル化にはかなり思い切った意識改革の必要性が指摘されています。この報告は、日本企業のグローバルM&A、特に新興国M&Aを成功に導くためにも、重要な示唆となるのではないかということで、本研究のまとめに携われたお二人に対談をお願いした次第です。なお、この対談のベースとなる「日系企業のグローバル化に関する共同研究」については、PwCの山内利夫氏に別稿「日系企業のグローバル化の現状と課題 ―海外展開で実績を有する大手日系企業21社の海外事業担当役員へのインタビューから―」にてそのご紹介をいただいておりますので、ご参照ください。

はじめに

-- まず、今回の対談の発端となった調査研究の概要や狙いについてご紹介ください。

三橋 優隆(みつはし・まさたか)三橋 「PwCは日本企業のグローバル化に関するお手伝いを重要なコンサルティングの領域としているわけですが、日本企業のグローバル化は実際のところ必ずしも上手くいっていないのではないか。もしそうだとすると、我々のコンサルティングの中身にも関わる話だということで、実際に企業の方々にインタビューをして調べようということになったわけです。上手くいっていない原因やその背景を明らかにしようということです。具体的には、グローバル化に向けて積極的な取り組みをされている大手企業21社を幅広い業種から選定して、匿名を条件に海外事業担当役員にインタビューを行いました。幸いにして慶應義塾大学の清水勝彦先生というベストパートナーに恵まれ、先生との共同研究として公表させて頂いたわけです」

清水 「少し付け加えますと、世の中にはグローバル化には現地化が必要だとか、安直な処方箋を書いた本が溢れていますが、その現地化が上手くいかない中で、なぜ上手くいかないのか、どうしたら良いのかという実践的な処方箋を書いたものはあまり見当たりません。泳げない人に、がんばって泳げと言っているようなイメージです。今回は、実際に苦労されている責任者に直接インタビューするという手法を取り、ずいぶん生の声を聴くことができたと思っています。もちろん、本音と建て前というか、『ほんとにそうですか』と言いたくなる回答もあって、すべてを検証できたとは言えませんが、我々なりの仮説がいくつか出てきたのではないかと思っています」 
 

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