1.はじめに
JXTGホールディングスの誕生、出光興産と昭和シェル石油との統合により、長く続いた石油元売り業界の集約化は一段落した感がある。一方で、地球温暖化等の環境問題における化石燃料への風当たりは強くなっており、日本の人口減少やEV普及によるガソリン車の減少など、長期的に事業環境は厳しさを増していくとみられる。このような中、足もとでは経営統合によるシナジー効果の追求を最優先にしつつも、長期のビジョンに基づいた事業のかじ取りが必要不可欠となることから、各社の将来ビジョンと方向性並びにM&Aの動向と今後の展望について検討してみる。
2.国内石油需要の動向
経済産業省「資源・エネルギー統計」によると、国内の石油製品の販売量は、1979年の第二次オイルショックの影響により1980年代前半に一時的に減少することとなったが、その後の原油価格の低下に伴い、80年代後半には需要は増加に転じている。しかしながら、エネルギー源の石油以外へのシフトなどによって、90年代半ばには需要のピークを迎え、現在までにピーク時から約3割減少している(図表1)。
また、石油需要の中で大きな割合を占めるガソリンについても、2000年代半ばをピークに減少しており、EV等の次世代自動車の普及の進捗によっては、今後、需要減少が加速化する可能性もある。
3.石油元売り企業の集約化
国内石油需要の減少が鮮明となる中、石油元売り業界の集約化が進み、2017年4月にはJXグループと東燃ゼネラルグループの経営統合によりJXTGホールディングスが誕生した。そして、2019年4月には出光興産と昭和シェル石油との統合により出光興産が誕生した。この結果、以前は17社あった石油元売り企業は、JXTGエネルギー、出光興産、コスモ石油の大手3社にキグナス石油、太陽石油を加えた5社に集約されることとなり、80年代半ばから続いた業界再編の流れは、現在、一段落ついた状況となっている(図表2)。