[特集インタビュー]
2017年7月号 273号
(2017/06/15)
産業分野、類型、投資サイズのそれぞれで広がりを見せるM&A
-- 最近、日本のプライベート・エクイティ(PE)ファンドで500億円あるいは700億円を超える大型のファンド設立が相次いでいます。また、外資系PEファンドも日本企業への投資を拡大する動きがみられます。日本プライベート・エクイティ協会の会長として、その背景、さらに今後日本におけるPEファンドの役割についてどのように見ておられるのかをうかがっていきたいと思います。まず、背景ですが、これについてはどのように捉えていますか。
「ここ10年間の日本におけるPEファンド投資を振り返って見ますと、投資案件は着実に増えています。その要因としては、PEファンドを使って企業価値を向上させていこうという認識が企業経営者の間に定着してきたことが大きいと思います。もう1つ重要なのが、案件の数だけでなく種類も増えてきているということです。かつては、PEファンドの投資対象というと例えば経営破綻した企業でした。しかし最近は産業分野、類型、投資サイズの3つにおいてそれぞれ広がりを見せてきています。
まず産業分野で言いますと、かつては電機などの製造業が主流でした。ところが今ではさまざまな産業素材、それに食品やヘルスケアなど製造業に限らず幅広い分野からM&A案件が出るようになってきています。2つ目が、カーブアウトや事業承継の案件など類型もさまざまなものが出てくるようになってきたということです。3つ目に、投資サイズについても企業価値で数千億円というラージキャップの案件から、例えば我々ロングリーチグループが力を入れている100~500億円ぐらいのいわゆるミッドキャップと言われるような案件、さらに中小企業の事業承継等に多く見られるスモールキャップと言われる案件まで投資サイズにも広がりが出てきているということが挙げられます」
PEファンドに期待されるグローバル人材、リスクマネー、ガバナンス強化
-- 少子高齢化で国内市場が縮小が避けられないと言われる中で、海外市場を開拓する動きが活発になっています。それに伴って海外M&Aも増えていますね。
「アベノミクスでも期待されている成長戦略の加速を実現するキーワードの1つは、まさに『日本企業のグローバル競争力の強化』です。グローバル競争力というと、海外の成長を求める輸出型の企業の話かと思われますが、そうではありません。世界経済のボーダレス化が急速に進む中で、すべての日本企業にとって、海外市場だけでなく国内市場においてもグローバル企業との競争が不可避となっています。欧米、そしてアジア企業の製品、技術、サービスとの競争が国内外で日々行われているのです。これに勝ち抜くためには、グローバル水準で通用する経営スピード、生産性、そして利益率水準へのコミットメントが必要であり、これらを総称した『企業のグローバル競争力』こそが成長のキーであると考えます。
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