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[M&A戦略と会計・税務・財務]

2018年10月号 288号

(2018/09/18)

第136回 高まる地政学リスクに向けたグループガバナンスの構築と課題

荒井 優美子(PwC税理士法人 タックス・ディレクター)
1. はじめに

 「地政学リスク」とは、特定の地域が抱える政治的・軍事的な緊張の高まりが、特定地域の経済、もしくは世界経済全体の先行きを不透明にするリスクを表す言葉として、2002年のイラク戦争以来、市場や経済動向の説明の中で広く使われるようになった。世界経済フォーラムの分析レポートである「The Global Risks Report 2018」によれば、世界の5つのカテゴリーに分類されるリスク(経済、環境、地政学、社会、技術)のうち、2015年以後は、実際に起こり得る可能性とその影響の大きさにおいて、環境問題と並んで地政学リスクの比重が高まって来たことを示している。

 「The Global Risks Report 2018」では地政学リスクを、国家統治の崩壊(Failure of national governance)、地域・国際的な統治機能の崩壊(Failure of regional or global governance)、国家間の地域紛争(Interstate conflict)、大規模テロ攻撃(Terrorist attacks)、国家の崩壊又は危機(State collapse or crisis)、大量破壊兵器(Weapons of mass destruction)の6項目に分類している。かつては、地政学リスクといえば中東やアフリカの紛争問題、新興・途上国の内政不安に関連して言及されることが多かったが、近年はそれらに加えて、地域・国際的な統治機能の崩壊や大規模テロ攻撃、大量破壊兵器の問題がリスクとして認識されるようになってきた(図表1参照)。主要国間での政治経済摩擦、国家間の軍事紛争、主要国を巻き込んだ地域紛争、多国間の貿易協定の機能低下等は、今後ますますその可能性が高まると認識されており(World Economic Forum Global Risks Perception Survey 2017-2018)(図表2参照)、「The Global Risks Report 2018」における上記の分析はこのような調査結果を踏まえたものである。

 近年の高まる地政学リスクへの企業の対応としては、進出国への税務リスクも含めたグループガバナンスの視点がより重要性を増すことになる。

図表1 世界における潜在的なリスク要因と影響


図表2 2017年から2018年にかけての地政学リスクの変化に対する認識


2. リスクマネジメントの観点から見た地政学リスク

 企業の海外投資においては、我が国ではJETROや金融機関等による各国の情勢分析等を基に投資リスクを測定しながら、投資国の選定と投資のタイミング及び投資規模の計画を策定する。新規投資の場合には、事前の準備の上で投資の決定を行う事が可能だが、より問題となるのは既に投資を行っている現地国で生じる不測のリスクに、どのように対応するかということである。

 2016年6月に英国で行われた国民投票により、英国のEU(欧州連合)離脱が決定されたが、

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