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[M&A戦略と会計・税務・財務]

2019年10月号 300号

(2019/09/17)

第148回 研究開発型ベンチャー支援と税制

荒井 優美子(PwC税理士法人 タックス・ディレクター)
1. 成長戦略と研究開発型ベンチャー支援

 研究開発の促進とベンチャー支援は、安倍政権がその発足当時から、成長戦略の要の一つとして掲げてきたものである(日本再興戦略 -JAPAN is BACK‐ 平成 25 年6月 14 日)。デフレ脱却と企業の国際競争力の強化は、我が国の喫緊の課題であると言われ、我が国産業が抱える構造的課題(図表1参照)の解消に向けて、新陳代謝の観点から、①適切な再編・撤退判断、②成⻑分野への新規投資の活発化、③これらの動きを後押しする、「攻め」のコーポレートガバナンスの強化の3つが最も肝要であるとされる(「日本再興戦略」改訂 2014 -未来への挑戦- 平成 26 年6月 24 日)。

生産性の向上:日本企業の生産性は欧米企業に比して低く、大胆な事業再編を通じた選択と集中を断行し、将来性のある新規事業への進出や海外展開を促進することや情報化による経営革新を進めることで、グローバル・スタンダードの収益水準・生産性の達成を図る
産業の新陳代謝とベンチャーの加速化:新陳代謝を促進し、収益性・生産性の高い分野に投資や雇用をシフトさせていくために、既存の企業に変革を迫るだけでは不十分であり、スピンオフやカーブアウト、M&A の形態を含め、ベンチャーが次々と生まれ、成長分野を牽引していく環境を整備する
コーポレートガバナンスの強化:コーポレートガバナンスの強化により、経営者のマインドを変革し、グローバル水準の ROE の達成等を一つの目安に、グローバル競争に打ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みを強化

【図表1 我が国産業が抱える課題とその構造】

 このような政策目標の具体的施策として、産業競争力強化法の立法化(2014年1月施行)、コーポレートガバナンス・コードの策定(2015年6月施行)、日本経済再生本部における「企業関連制度・産業構造改革・イノベーション」会合の設置(2016年9月9日~)を行ってきた。

 研究開発及びベンチャー支援の対策の重点化に拍車をかけたのは、デジタル化による新たな価値創造に基づく第4次産業革命(Society 5.0」)の進展である。世界経済では社会のあらゆる場面でデジタル革命が進み、革新的なデジタル製品・サービス・システムが新たな市場を開拓し、高付加価値を生む、「データ駆動型社会」への変革が求められており、そのためには、「既存の組織や産業の枠を越えて、技術と人材、データと現場の新たなマッチング等を通じたオープンイノベーション、社会変革を飛躍的に進めることが不可欠」であると考えられている(「未来投資戦略2018 ‐「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革‐」 平成30年6月15日)。

 デジタル化・ネットワーク化の進展により世界のビジネスモデルが大きく変革しつつある中、経済にインパクトのある新陳代謝を引き起こすには、ベンチャー企業による新産業の創出が極めて重要となり、特に、グローバルに通用するベンチャー企業の育成が課題となる(「日本再興戦略」改訂2015 -未来への投資・生産性革命-平成27年6月30日閣議決定)。ベンチャー企業は、事業内容によって投資資金の規模や投資リスクが異なるが、独創性、新規性(イノベーション)の高い技術やサービスにより起業したベンチャーは、研究開発型ベンチャーとしてその他のベンチャー企業と区別される。安倍政権の成長戦略が後押しするのは、研究開発型ベンチャーである。


2. 研究開発型ベンチャー支援の必要と環境整備

 研究開発型ベンチャーと既存企業(大企業)は組織体制やそれぞれの特質の違いから、提供する商品や市場によって得手不得手がある。データ駆動型社会では、新たなマーケットの創出や独創的な商品、サービスをいち早く市場に展開することが成功の鍵となる。新規市場や新しい顧客をターゲットとする研究開発型ベンチャーは、新市場を開拓し、迅速かつ効率的な開発で製品の供給を行える(①ターゲット市場を機動的に選択でき、潜在的な(未成熟な)市場をターゲットとした製品開発が可能である、②意思決定者が明確であり、意思決定が極めて迅速である、③リソースに限界があることも多く、他者との連携等を活用した事業展開を行うため、効率的である)という点において、データ駆動型社会ではより既存企業(大企業)よりも優位性を持つと考えられる。

 既存企業(大企業)では、既存市場の

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