[企業変革手段としてのM&Aの新潮流]

2021年11月号 325号

(2021/10/11)

第6回 変革を目的としたディール推進・PMI

荒木 毅(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員 マネージングディレクター)
富野 賢治(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ディレクター)
長嶋 規博(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー)
塩見 謙介(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 マネジャー)
  • A,B,C,EXコース
 これまで企業変革のテーマの下で主な関係領域から述べてきた。企業変革を目指すにあたっては、必ずしも自ら有するアセットのみで達成までの道筋を描けるケースは少なく、その過程において、変革に必要なリソースを取り入れていくインオーガニックな取り組みが必然になってくる。各企業のコーポレートにて作成される事業計画には、中長期的視点からそのエッセンスが取り込まれている一方、実際に事業を運営する事業部レベルまで具体的なアクションが落ちているケースは少ない。この断絶を埋めていくことが、変革への動きを加速させる一つの重要な取り組みになると考えられる。今回は変革を実現するために必要な要素をディール推進およびPMIの観点から述べていきたい。


ディール推進を活性化・有効化させる要素

 変革を目指す環境において、多くの企業がM&Aを含むインオーガニック活動をどのように具現化していくかという課題に直面している。コーポレートの事業戦略および計画の実現に繋げていくためには、次のポイントに代表される能動的なM&Aディール検討・推進機能の確立が必要となってくる。

1. インオーガニック戦略の具体化
2. 恒常的なディールに対応できる体制整備
3. M&Aへの能動的な動き
4. 意思決定のフレームワーク
5. ディール検討に備わるべきコンティンジェンシーの思想


インオーガニック戦略の具体化

 変革を目指すにあたり、アクションの起点となる事業部門では、戦略を実行できるレベルまで具体化することが求められる。コーポレートで描かれる中長期の事業戦略(計画)と部門戦略(計画)との間に蓋然性の乖離が見られたり、企画部門がリードするM&A検討と事業部門が描く成長軌道との間に意志の断絶が生じ、効果的なM&Aディール推進の障害になるケースは少なくない。事業部門において「このM&Aをやらなければならない」という関係者の推進力は貴重である一方、変革目標との戦略合致を不明瞭にしたままにディールを推進してしまうと、リソースや時間を無為に消耗してしまうことになりかねない。変革を進める上でのM&Aの必要性という共通認識から一段踏み込み、補完すべき機能や取得する時間軸の観点を踏まえて個々のM&Aディールの目的を定義し、組織横断で意思統一された、コーポレート事業計画への寄与を明確に示すことができる戦略の具体化が、変革へ向けた重要な初動取り組みになると考える。


恒常的なディールに対応できる体制整備

 変革にインオーガニックな取り組みが切り離せないとすれば、

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